天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

オリンピックのインターセックス問題

2024-08-10 05:25:59 | スポーツ

イマネ・ヘリフ選手


きのう立秋を迎えたがそれと関係なく暑い。パリのオリンピックは毎日おもしろいが、今回もまた女性選手の性の問題が取りざたされた。
女子ボクシング競技に出場した2選手、66キロ級のイマネ・ヘリフ(アルジェリア)と57キロ級の林郁婷(台湾)である。
2人は国際ボクシング協会(IBA)が主催した昨年の世界選手権では性別適格検査で不合格となった。しかし組織運営などを問題視して統括団体としての国際オリンピック委員会の承認を取り消した国際オリンピック委員会(IOC)は、2人を女性選手として認め参加を許可した。国際ボクシング協会と国際オリンピック委員会との間には政治も介入した確執があり、面妖な事態となっている。
女性選手として認められたとはいえイマネ・ヘリフは一般女性選手より明らかに強い。2回戦で圧倒的な強さで相手のアンジェラ・カリニ(イタリア)を攻め開始46秒で棄権させた。負けた選手は鼻がつぶれて「もう戦いたくない」と降参した。
今やオリンピックは勝利至上主義の権化である。誰もがメダルを取ることを目的にしてここへ来ている。ここで一般女子選手が科学的に自分たちと異なったデータを持つ選手を同類として戦う不利に不満を述べるのはしごくもっともである。
国際ボクシング協会の性別の厳格なチェックはしかるべきことである。薬物チェック同様に。これに対して国際オリンピック委員会が当該選手の女性としての生い立ちを考慮した受け入れも理解できる。
性別チェックの科学的妥当性も決定的なものではないという報告もある。けれど、テストステロン値の異常な高さとか、性染色体のペアがXXであるかXYであるかなどの所見は女性性を問題視する有力なデータであることは間違いないだろう。

女性性が疑われる選手でもオリンピックへ出場しようとする選手はずば抜けたアスリートである。彼らの活躍の場を担保してやってもいいのではないか。今、国際オリンピック委員会がやっているように。
けれどこれには一般女子選手の「あの人、半分は男じゃないの」といった根強い不満がついて回る。それも解消する必要があるのではないか。
二律相反のむつかしさである。
国際ボクシング協会も国際オリンピック委員会も事の白黒をはっきりつけ過ぎていないか。観念的であり現場を考慮していないうらみがある。当該選手は白黒がはっきりしないグレーである。ならば解決方法も多様であっていい。人間は知恵があるのだからインターセックスの女性をもっとスムーズに取り込む仕組みを考えていいのではないか。「受け入れます」「受け入れません」の単純な物言いではなくて、具体的に当該選手も一般女性選手も折り合える手だてを講じるべきである。
つまり、当該選手は自分のクラスより一つ上の階級の選手と対戦してはどうか。66キロ級のイマネ・ヘリフは75キロ級の選手と、57キロ級の林郁婷は60キロ級の選手と対戦する。女子選手の数が少ないなら男子選手と戦ってもいい。その場合、下の階級の男子と戦う。ハンディキャップマッチである。
こういうとき当該選手は「女性の尊厳」など言わぬこと。天の配剤で自分の性がインターセックス(間性)なのである。それは自分のせいでも誰のせいでもないが戦えば身の上が人に影響を及ぼす。

もう陸上競技を引退したが、キャスター・セメンヤ(南ア)も物議をかもした選手である。
オリンピックで金メダル2個、世界陸上で金メダル3個を取った猛者である。彼女の場合、医学的検査の結果子宮と卵巣が無く体内に精巣があり、通常の女性の3倍以上のテストステロン(男性ホルモンの一種)を分泌していることが判明し、性分化疾患と報じられた。
彼女と一緒に走った女性選手の不満が聞こえてくるようである。これだけの男性性を科学的照明された選手は、男子のレースに出てもいい。その際、800mの場合男性選手との間に7秒のハンディキャップをつける、といった方策を考えてもいい。男性と女性の世界記録の差がおよそ14秒。その半分をハンディキャップにする発想である。これは一つのプランである。役員はいろいろ頭をひねって事態を改善してほしい。
女性性を疑われる選手が出場することができ、一方、一般女性選手が不満を持たないような方策を講じることを役員諸氏は考えるべきであろう。
人間の英知の発揮を発揮してあらゆるアスリートが活躍できる場にしてほしい。


コメント
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