天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

アル・パチーノの凄み

2023-01-25 15:51:40 | 映画
        

ゆうべ、「ザ・シネマHD」で『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(原題: Scent of a Woman)を見た。主演アル・パチーノとのみ表示された映画で、その男優にそう興味がなかったので内容も知らずに見た。

【ストーリー】ボストンにある全寮制名門高校に奨学金で入学した苦学生チャーリー(クリス・オドネル)は、裕福な家庭の子息ばかりの級友たちとの齟齬を感じつつも無難に学校生活を過ごしていた。感謝祭の週末、クリスマスに故郷オレゴンへ帰るための旅費を稼ぐためチャーリーはアルバイトに出ることになっていた。そのアルバイトとは姪一家の休暇旅行への同伴を拒否する盲目の退役軍人フランク・スレード中佐(アル・パチーノ)の世話をすること。とてつもなく気難しく、周囲の誰をも拒絶し、離れで一人生活する毒舌家でエキセントリックなフランクにチャーリーは困惑するが、報酬の割の良さと中佐の姪カレンの熱心な懇願もあり、引き受けることにする。……

これでアカデミー主演男優賞を受賞したアル・パチーノと、彼をあたたかく世話する好青年役のクリス・オドネルとのやり取りで7割がた構成された映画である。さらに筋書きを言ってしまい、ネタバレになったとしてもどうということのない作品である。以下に最後までストーリーを紹介する。


アル・パチーノ(左)とクリス・オドネル

【ストーリーつづき】感謝祭の前日、チャーリーは同級生のハヴァマイヤーたちによる校長の愛車ジャガー・XJSに対するイタズラの準備に遭遇。生徒たちのイタズラに激怒した校長から犯人たちの名前を明かすなら超一流大学(ハーバード)への推薦、断れば退学の二者択一を迫られ、感謝祭休暇後の回答を要求される。チャーリーは同級生を売りハーバードへ進学するか、黙秘して退学するかで苦悩しながら休暇に入ることになった。
中佐はそんなチャーリーをニューヨークに強引に連れ出し、ウォルドルフ・アストリアホテルに泊まり、“計画”の手助けをしろ、という。チャーリーはニューヨークで、中佐の突拍子もない豪遊に付き合わされるはめになる。高級レストランで食事をし、スーツも新調し、美しい女性とティーラウンジで見事にタンゴのステップを披露したかと思うと、夜は高級娼婦を抱く。だがチャーリーは、共に過ごすうちに中佐の人間的な魅力とその裏にある孤独を知り、徐々に信頼と友情を育んでいく。
旅行の終りが迫ったころ、中佐は絶望に突き動かされて、“計画”―拳銃での自殺を実行しようとするが、チャーリーは必死に中佐を引き止め、思いとどまらせる。ふたりは心通わせた実感を胸に帰途につくことができた。
しかし、休暇開けのチャーリーには、校長の諮問による公開懲戒委員会の試練が待っていた。チャーリーは、全校生徒の前で校長の追及によって窮地に立たされるが、そこに中佐が現れ、チャーリーの「保護者」として彼の高潔さを主張する大演説を打ち、見事にチャーリーを救うのだった。満場の拍手の中、中佐はチャーリーを引き連れ会場を後にする。
再び人生に希望を見いだした中佐と、これから人生に踏み出すチャーリーのふたりは、また新しい日常を歩み始めるのだった。

このストーリーはとてもよくまとめられているので紹介したが、全部さらしてしまっても本作品を見るうえでほとんど差しさわりがないと思うほど。
それほどアル・パチーノとクリス・オドネルの演技が光っている。映画というのは筋書きではなく一瞬一瞬を演じる俳優の表現力にかかっているのだと認識させられる。盲目の印象を出すためパチーノは目玉を動かして対象を追うということを一切封じたという迫真の演技。もはや神業である。

ダンスシーンの素晴らしさ、フェラーリを運転するときもスリル、ピストルを持って自殺しようとする怖さ……
この一作だけでアル・パチーノの凄みが身にしみる。アル・パチーノは破天荒な役者である。たまたまテレビをつけて僥倖と思った夜であった。



浮き浮きさせるアル・パチーノとガブリエル・アンフォーのタンゴ
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