天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

自転車を降りたがらぬ子颱風裡

2021-08-16 05:46:36 | 身辺雑記

最近の天竜川



ノラの方舟はあったのではないかと思わせるような雨続き。故郷天竜川の映像が災害危機でテレビに出る異常な気候。
雨好きの結だが冷えるのでおとといは自転車に乗せなかった。きのうも家の中で積木をさせていたが正午近く急に「おんも」と言うではないか。雨が好きで雨樋から水が流れ出るのを20分も見続ける子である。雨中の散歩を狙い、家のわきに止めてある自転車に目が行かぬよう戸口から彼を抱いて脱兎のごとく路上を走り家から離れたところで下した。さあ歩こうと思ったとたん、「じてんしゃ」と言う。悪魔のささやきである。
「じてんしゃ」と言ったらもう乗せるしかない。手を引いて歩かせたら雨の中にへたり込んで泣く。身を沈めて自分をめいっぱい重くするコツも会得していて始末が悪い。
自転車から見えるものを単語で言う。すなわち時計でありバスであり電車である。「さん」は数字の3でどこかの看板にあるのをしかと見ている。「ぶらんこ」とふいに言うのでヤッタと思い、それがある公園をめざす。ここで自転車から下そうと思うが公園へちかづくと「じてんしゃ」である。自転車を停めようものなら「じてんしゃ、じてんしゃ」と連発し、応じないようだと顔が曇って雨になる。ああ、天気も孫も許してくれない。
結局、1時間雨の中を走り回った。結の顔は雨で濡れていた。2歳4ヵ月のとき俺はこんなに強情であったかな。

夕方5時半ころからまた結の運動時間。また抱いて家から連れ出すが「じてんしゃ」と言う。ああ、またか。自転車に乗るとご機嫌でく雨合羽のフードが頭からはずれて雨がかかっても平気。きのうは10分ほどして頭がカクンと落ちたので見ると寝入っていた。先日も土砂降りの中で寝てしまった。
窮屈な体勢がかわいそう。野菜直売所のバラックの屋根の下に自転車を停め、タオルをはさんで頭を立てるようにして20分ほど睡眠をとらせる。それ以上眠らせるとこの時間だと夜眠らないのでころあいを見てゆっくり自転車を漕ぎだす。
家へ着いて下ろそうとするとまた「じてんしゃ」である。奴は20分寝ていたからその間自転車に乗っていた感覚はない。また辺りを走ってきて下そうとするが「じてんしゃ」である。
いま「じてんしゃ」と静かに言う声が怖い。

雨が上がれば谷保天に鳩が出てきてくれる。それを追いかけたくて自転車から下りる。太陽を待っている。
コメント
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