木守柿は「きもりがき・こもりがき」という。柿抜きで木守「きまもり」ともいう。
来年もよく実るようにとのまじないで、木の先端に一つ二つ取り残しておく柿の実のことと歳時記に出ている。タラの芽を全部摘まないで残すのはタラの体力を考えてのことだが柿を残すのは現実的な意味ではなさそう。
きのうプールへ行く途中の人の家。えらく柿の木がきれいになっているので見ると枝が剪定されて柿が二つあるだけであった。この家の人に明らかに木守柿の考えがあったと思われる。
歳時記で残しておく柿のことは知っていたが実際に見たのははじめて。こんな都会でこれを知っていて実践している人がいて感動したのであった。
もしかしたら俳句をしている人かもしれない。今度声をかけてみよう。
柿右衛門十三代の木守柿 稲荷島人
人の死の一部始終を木守柿 安斉君子
木守柿世の褒貶に振り向かず 木村筧水
木守熟柿は赤彦のふぐりかな 平畑静塔
木守柿風の重さを聞く日かな 二村典子
夕迫る海が真下ぞ木守柿 飯田龍太
木守柿は書いたことがない。諸先輩にならって一句書く気になった。高野山近辺の民家を思った。
鐘の音の糸ひいて消ゆ木守柿 わたる