けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

「脱原発」と、その裏側の経済政策との整合性について

2012-11-26 23:36:02 | 政治
今日のトップニュースは、概ね嘉田滋賀県知事が「脱原発」で第3極の集結を図るというところが衆目の一致するところだろう。今日はこの話題を中心に、様々な論点のひとつひとつの政策が、全体で見たときに整合性が得られているのかどうかについて議論してみたい。

ではまず嘉田知事の話題だが、明日に記者会見するそうだからそれを待ってからコメントすべきかも知れないが、現時点で漏れ伝わってくる情報によれば自らは出馬するわけでもなく、滋賀県知事を続けながら「脱原発」を軸とする部分で地方から国政を遠隔操作するということのようだ。ある意味、橋下市長と類似の政治手法だが、これまでの橋下市長のアプローチとは少々意味が異なる。

橋下市長のやり方は、既に選挙で与野党の勢力図が確定した状態で、その枠組みを維持しながら「大阪都構想」という非常にローカルな政策実現に協力をしてくれる集団を寄せ集め、その実現に必要な法整備を図ってきた。嘉田知事が現在行っていることは、彼女が何もしなければ落選する可能性の高い人を当選させ、「脱原発」という点では自らの主義主張に沿わせながらも、その他の点に関しては半ば「白紙委任」で自由な活動を容認している様にも見える。しかし、政権与党の責任とは、ありとあらゆる政策の整合性を担保しながら最良の選択肢を示すことであり、ひとつの政策を思った方向に導こうとすると、他の政策において意に反する副作用が伴うならば、その副作用を理解した上でトータルで国民が幸福になれる道を選ばなければならない。一時期、インフルエンザの特効薬のタミフルの副作用が問題となったが、統計的に因果関係のはっきりしないごく少数の不自然な行動を取った患者を引き合いに出して、「タミフル絶対禁止!」というのは合理的ではない。現在であればリレンザとか別の選択肢もあるが、数年前の時点では当然ながら、タミフルを服用するリスクと共に、タミフルを服用せずに40度以上の高熱に至り、脳症で死亡したり重度の後遺症に見舞われるリスクも考慮しなければならない。私も小さな子供を持つ親として、体温計で40度にも及ぶ高熱を見たときに、このまま熱が下がらずに脳症になってしまうのではないかと怯えた記憶がある。だから、自分で選択できるのであれば、当然ながらタミフルの服用を希望していたはずである。だから、副作用に対する責任の所在を明らかにせずに、ひとつの視点だけで国の命運を悪戯にいじっているようで、私には好感は持てない。

ところで、このタイミングに前後して、関西電力が電気料金の値上げ申請を申請することになった。一般家庭は11%、企業向けは20%弱だという。今回の値上げは、原発依存度が非常に高い関西電力の全ての原発が停止し、LNGをはじめとする化石燃料の高騰が発電コストを押し上げたことを織り込んだものであり、太陽光発電の高値買取などの影響までは殆ど含まれていない。ここ最近の選挙報道では、経済問題も選挙の争点として細かく議論されるようになったところであるが、私の認識では国民が選挙後に最も期待する最重要課題は景気の回復だと信じている。だから、脱原発を主張する政党においても、少なくとも経済政策との整合性はとれていてもらわないと困るのである。しかし、この点に関してはどうしても不安が払拭できない。

少々議論がそれるかもしれないが、例えばシャープやソニー、パナソニックなどの家電製品の売れ行きが落ち込み、格付け会社から投機的と評価されるに至った理由の中には、技術革新、魅力的な商品開発で負けたことが原因のひとつであることは間違いないが、しかし、常識を遥かに超える急激な円高の影響は飛車・角落ち並みのハンディを背負わされたのに等しい。例えば、5年前の2007年6月時点で為替レートは1ドル120円であったが、昨年夏以降は80円を長いこと割り込んでいる。言ってみれば、円の価値が50%も上昇した状態である。つまり、5年前なら日本国内で12万円のものを米国では1000ドルで販売できたが、単純に為替レートだけで比較すれば現在は1500ドルで販売せざるを得ない状況である。最近注目を集めるスマートフォンで見れば、韓国の製品と日本の製品を見比べると、個人的な感想としては日本の製品は見劣りすると感じる。しかし、売れ線の価格帯があるとすれば、ここまで為替レート上のハンディがあれば、そこに投入する商品のグレードを落とさなければ価格競争では負けてしまう。しかし、グレードを落とせば商品として見劣りがするので商売では韓国に負け、これで負のスパイラルに陥る。この為替が短期で是正されると見込めれば良いのだが、未来永劫、このままの状態が継続しそうな勢いであれば打つ手はない。

その為替レートを適正なレベルに是正するために自民党はなり振り構わず政策を繰り出すが、そこで為替レートが円安にシフト出来たとしても、輸入に頼るLNGなどの価格が逆に割高になり、逆の意味で生産コストが高騰することになる。結局、これでは無理してまで行った政策が有効に機能しないから、円安誘導と共に電気料金の高騰を回避する手立てを打たなければならない。確かに総括原価方式での電気料金の算出に問題があるのは事実であるが、電力の自由化などの競争原理を導入した上での自主的な値下げを経ずに、これまでの経緯を無視して国家が強制的に社員の給料を一律2割カットさせるような介入を行うことは好ましくはない。電力の自由化や発送電分離などは、判断の責任の所在を明確にした上で数年の年月をかけて議論しなければならないほど論点が細部までに及び、一部で言われているほど短絡的なものではないらしい。であれば、その結論が出るまでの数年間の間は、脱原発を維持したままであれば電気料金が高騰することを前提に経済政策を組み立てなければならない。ただでさえ、自民党も民主党もこうなってまで手を打てないのであるから、更に条件が悪くなりながら今までの路線の延長線上に答えが見つかる可能性は皆無に等しい。

確かに中期的に見れば、自民党の政権公約の中にもメタンハイドレートの生産体制確立なども含まれているので5年後であれば発送電分離や電力の自由化も含めて事態が大きく変わっているかも知れないが、しかしここ1、2年での短期的な改善には間に合わない。であれば、安全性とのバランスを取りながら、リスクの小さなところで原発の再稼動を見込まないとバランスが崩れることになる。仮に為替レートが1、2割程度円安になっても、企業側の電気料金が1割ほど値上がりしたら円安の効果は薄くなる。結局、海外に工場が移転され、産業の空洞化につながることは避けられない。経営者がどの様な考え方をするか分からないが、個人的には「日本のためを思えば、次の選挙後を見極めた上で、工場を海外移転するかどうかを考えよう」と考える人は多いだろうから、今回の選挙はある意味で崖っぷちに立たされた日本の命運を左右する選挙なのである。

だから「原発は危ない!」と叫ぶ気持ちは分かるが、それ以外にも危ないものはあるのである。今直面している「原発のリスク(副作用)」は確かに深刻ではあるが、この崖っぷちの状態を「原発のリスク」と同様ないしはそれ以上に「危ない状態」と見なすのか、それとも相対的に「取るに足らない」(すなわち原発のリスクの方が圧倒的)と見なすのかで、ものの考え方は分かれてくる。しかし、「試しに民主党にやらせてみよう!幾らなんでも、そんなに酷くはならないだろう!」と思った結果が今の状態である。だから、「試しに脱原発をやってみよう!そんなに酷いことにはならないだろう!」と、これをもう一度繰り返せば、もう二度と立ち直れないほど日本は致命的な打撃を食らうだろう。

だから、脱原発で結集しようとしている人々には、是非とも脱原発の裏側の経済政策との整合性について語って頂きたい。嘉田知事は厳密には「卒原発」と言っているが、長期的な視点での「脱原発依存」というのであれば、自民党ですら概ね方向性は一致している。ラディカルな「即時脱原発」とソフトランディング的な「脱原発依存」の中間に位置づけられるのかも知れないが、だから短期的な経済政策の中で一部の原発再稼働を容認するのならば現時点でそれを明言して欲しい。逆に再稼働は絶対認めないというのであれば、その場合の経済政策との整合性を明らかにして欲しい。仮に嘉田知事が総大将となるのであれば、その整合性を国会議員団に白紙委任するのではなく、大将自らの言葉で語って欲しい。それができなければ、単なるポピュリズム以外の何者でもない。

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