シューベルトを描いた絵を見ると、仲間たちと楽しそうに音楽会を開いたり遊んだりしている場面があります。その音楽会のことを、シューベルティアーデと読んでいました。今でも、時々この言葉がシューベルトのコンサートに使われたりしているようです。このような絵を見ると、シューベルトとという作曲家は、市井の人というイメージを持ちます。そこに集まったのは、官吏や画家や詩人たちといった芸術愛好のディレッタントたちでした。シューベルトが産み出す音楽はこのような周囲の人たちを幸福にするためにあるような気がします。だから私たちも今シューベルトの音楽を気軽に聴いてこちらがその中に気に入った旋律を見つけられればそれだけ、気持ちが楽しく幸せな気分になれるのだと思います。しかしそういったシューベルトの音楽も、人生上の深みを見せる曲が晩年には多く作曲されました。亡くなったのが31歳ですから、普通の人にとってはまだ青年期を過ぎ、壮年期に入ったころというわけで、なぜこのような曲が作られたのかはいつも不思議このうえないことと思っています。そのような作品群は、前にも書いたが、シューベルトの作品をほぼ年代順に並べてつけたD番号で、900番台のものである。といっても、966番以降は、成立年代不明のものを並べたので、ここで言うのは、D.900からD.965番ということになる。様々なジャンルの作品があるが、お気に入りのものを記すと、以下のようになります。
D.911 歌曲集「冬の旅」
D.929 ピアノ三重奏曲 変ホ長調
D.934 ピアノとバイオリンのための幻想曲 ハ長調
D.940 ピアノ連弾曲 ヘ短調「幻想曲」
D.944 交響曲 ハ長調《グレート》
D.950 ミサ曲 変ホ長調
D.951 ピアノ連弾曲 イ長調「ロンド」
D.956 弦楽五重奏曲 ハ長調
D.957 歌曲集「白鳥の歌」
D.958 ピアノ・ソナタ ハ短調
D.959 ピアノ・ソナタ イ長調
D.960 ピアノ・ソナタ 変ロ長調
D.965 歌曲「岩上の牧人」
まだ、他にもあるだろうが、これらは一つ一つがその与える作品のイメージが異なる傑作である。
シューベルトというと、「歌曲の王」と言われて、それはもちろん正しいですが、他の分野でも数多くの傑作があることを忘れてはいけないでしょう。
