Catch Ball

修業の時計を止めない教師でありたいです。

雄勝硯 3

2009-02-28 00:55:06 | 社会
 2月25日,伝統工芸雄勝硯の2時間目の授業を行った。

 「5つの硯・文鎮の中に,1つだけ違う石でできたものがあります」と投げ掛け,違う石はどれなのかを鑑定させていった。

 最初に鑑定のポイントを整理した。どこに目をつけて調べていったらよいのかということである。
 次のようにまとめられた。

・色
・手触り
・光り具合
・重さ
・におい
・音
 
 その後,前回同様,グループごとに鑑定に入った。 

 違う石でできているのはどれか,子どもたちの鑑定結果は次のように分かれた。

 硯Aが違う……… 5名
 硯Bが違う……… 7名
 硯Cが違う……… 6名
 文鎮Aが違う…… 12名
 文鎮Bが違う…… 1名
 
 正解は,箱に書いてある。
 まずは文鎮Bの箱を取り出す。すると,「雄勝石」と書いてある。「雄勝町で採れた石です」と説明すると,すばやく教科書で雄勝町の場所を確認していた。
 箱から,硯B,文鎮Aにも同様に「雄勝石」と書いてあることが分かる。

 ところが,「雄勝石」と書いていないものが2つある。
 硯Aには「宮城県特産 玄昌石」,硯Cには「羅紋硯」と記してある。
 しかし,玄昌石と雄勝石は同じものだということが,教科書を調べて分かり,結論が出た。
 羅紋硯はどこの石か,教科書や資料には出ていないので,中国産であるということを教えた。
 石の種類の鑑定については決着した。

 しかし,「同じ石で作ってあるものなのに,なぜ値段が違うのか」「同じ石なのに,なぜ光り具合や手触りが違うのか」「中国の石が安いのはなぜか」という新しい「はてな?」が生まれた。

雄勝硯 2

2009-02-25 00:47:04 | 社会
 「ここにあるものは,全部値段が違います。予想して高い順番にノートに書いてもらいます」と説明した。
 「『開運!なんでも鑑定団』です」と言うと,大いに盛り上がった。

 「とても高価なものかもしれない。だから汚い手で触るなどというのは,駄目だ。手をしっかりと洗ってきなさい」と指示した。これは一種の演出である。

 32名がいっせいに集まってきては落ち着いて鑑定できないので,8名ずつのグループごとに鑑定させた。

 最初のグループで扱いが雑な子がいた。そこで指導を入れた。「これは何十万円もするものかもしれないのだ。もし割れたらあなたは弁償できるのですか」一瞬緊張の走る教室。これも演出の一種である。
 
 1グループ3分ほどしか時間が取れないが,鑑定は真剣に行っていた。
 手触り,重さ,形,大きさなどをもとに鑑定を進める子どもたち。裏側を見てみたり,匂いをかいでみたりと,さまざまな方法で調べていく。

 予想が出そろったところで,ついに本当の値段の発表「オープン・ザ・プライス!」である。
 私が黒板に1の位の数字から値段を書いていくと,「いち,じゅう,ひゃく…」と掛け声が飛び交う。

 硯Aは5000円,Bは3000円,Cは600円,文鎮Aは1200円,Bは1000円である。予想が外れたり当たったりと一喜一憂の子どもたち。
 600円の硯Cが一番高いと予想していた子も,10名いたのである。

 最後に「いったいどうしてこんなにも値段が違うのでしょうか」と軽く問い掛けた。
 すると,「作った人が違うのではないか」「石の種類が違うのではないか」と本質的なところを突いてきた。
 これから追究が始まる。

雄勝硯 1

2009-02-24 02:42:07 | 社会
 社会科で「伝統的工芸品」の学習を始めた。

 今日の授業は,1月10日のTOSS体育サークル杜の都第39回例会で模擬授業した部分である。

 袋を取り出し,「この中にはあるものが入っています。宮城県の地図の中にあるものなのですが, 何だと思いますか」と発問した。
 何が入っているのかと期待を持たせることで授業に引き込んでいく。いきなりモノを提示することはしない。

 最初に指名した子が「硯」と答えた。当てずっぽうではあるが,いきなり正解の登場である。しかし,何食わぬ顔をして授業を続け,雄勝町の場所などを確認する。
 
 「ほかには何だと思いますか」とさらに聞いていくと,漆器,竹細工,仙台御筆,堤焼など,多数の意見が出された。

 「こういうものをいったい何というでしょうか」と問うと,「分からない」という子がいた。「分からないならどうすればよいのか」と追及すると,教科書ですぐに調べ始めた。
 こうして「伝統的工芸品」という用語を押さえた。

 いよいよ袋の中身を取り出す。
 もったいぶりながら最初に取り出したのはきかんしゃトーマスの描いてあるエプロン。硯がぶつかって割れてしまうことを防ぐために入れておいたものだ。
 エプロンを着用し,「このエプロンは伝統的工芸品ですか」と問うと,違うという。
 どうして違うか問うと,「昔ながらの技法で作っているとは思えない」と答えた子がいた。
 「伝統的工芸品」の意味をしっかりと押さえていることが分かる。

 次に取り出したのは,またしてもエプロンである。じらすことで授業を盛り上げる目的だったが,さすがに2度目は余計だった。

 散々じらした上で,ついにモノの登場である。
 3種類の硯と2種類の文鎮を取り出す。いずれも石でできたものである。
 ひとつ取り出すごとに「おーー」と反応する子どもたち。なかなかよい反応である。完全に乗ってきている。

 写真の下から硯A,硯B,硯C,文鎮A,文鎮Bと名付けた。

パイナップルの授業 12

2009-02-23 00:31:48 | 社会
 橋氏からのコメントは次のとおりである。

(1)裁き方がよい。
(2)もっと検定にふさわしい教材で取り組んでほしい。
(3)教卓の周りに集めて類型化するのではなく,板書させたほうがよかった。他の教科や場面でも使える方法だからである。


 (3)の類型化の場面は迷ったところであった。
 当初の構想では,画用紙を配布し,それを黒板に貼って類型化していく予定であった。
 しかし,子役が5名であったことから,黒板に貼らなくても,教卓の周りに集めてノートを見せ合うことで十分であろうと,その場で判断したのである。
 教卓の周りに集まっていれば,その後のパイナップルを実際に切る場面にもスムーズに移行できると考えてのことであった。

 しかしながら,子どもが5名というような場面は,小規模校でもない限り,実際にはあまりないだろう。
 実際の場面を想定して行うのが模擬授業である。

 採点の結果は次のとおりである。

授業の始まりのつかみ 7
子どもへの目線    7
あたたかな表情,対応 8
明確な発問,指示   7
心地よいリズム    7
合計        36
認定級       25
 
 現在22級であるから,本来の級より3級ダウンの評定であった。
 厳しい結果であったが,この結果を受け止めて精進していく。

パイナップルの授業 11

2009-02-22 16:07:50 | 社会
 2月14日,TOSS体育サークル杜の都第41回例会を行った。
 橋薫氏,西野一葉氏を講師にTOSS授業技量検定を実施する予定であった。しかし,西野氏の体調不良により正式な検定を行えず,模擬検定として実施した。

 私の授業は,「パイナップルからから沖縄が見える」である。有田和正氏,向山洋一氏の実践の追試である。

 初めに,袋に隠してあった葉のついたパイナップルを提示した。袋に隠すことによって参加者の期待感を煽った。反応はまずますであった。モノを持ち込むことの効果は大きい。

 次が主発問である。
「パイナップルをスバッと輪切りにします。切り口はどうなっているでしょうか。ノートに絵を描きなさい。」

 手刀で切るパフォーマンスを入れながら発問した。

 参加者の描く絵を見ると,様々であった。ねらいどおりである。全員同じものを描いたのでは授業にならない。
 
 参加者5名を教卓の周りに集合させ,絵を分類していった。
 次のように分類できた。
①中に芯
②中に種
③中に繊維質
④空洞
 
 様々な意見が出たから,本当はどうなのかを知りたくなる。
 しかし,「これはもったいないから,今度切ります」とじらす。

 教卓の下に隠していた包丁を取り出し,ついに包丁を入れた。
 包丁を入れたまま,次のように発問した。
 
「ところで,3つに切ったらどこがおいしいでしょうか。上か,真ん中か,下か。」

 包丁を入れたまま発問したのは意図的であった。しかし,参加者からは授業の流れを忘れていたので,慌ててその場で発問したように取られたかもしれない。

 さらにじらし,切り口の結果をなかなか参加者に見せなかった。
 切り口を参加者に見せたあたりで制限時間になった。

 その後は,おまけとして参加者みんなでパイナップルを切り分けて食べた。

 模擬授業をしていて,大変楽しかった。しかし,このようにリラックスしすぎているあたりが私の課題なのかもしれない。

パイナップルの授業 10

2009-02-13 19:13:53 | 社会
 向山洋一氏,有田和正氏の2人の授業に共通しているのに,次の技術がある。
●授業導入の技術
●学び方を身につけさせる技術
●多様な考えを出させる技術
●授業を盛り上げる技術


●授業導入の技術
 ■向山氏
  箱からパイナップルを取り出す。モノを提示することにより,子どもの意識を授業に引き込む。

 ■有田氏
  袋からパイナップルを取り出す。モノを提示することにより,子どもの意識を授業に引き込む。


●学び方を身につけさせる技術
 ■向山氏
  前時に行った「椰子の実」の授業と同じ発問を子どもたちに考えさせることで,同じ方法で学んでいくことを示す。 実のなり方を調べてくるように促す。

 ■有田氏
  実のなり方や切り口など,子どもが分かっていると思っていることに,発問によって揺さぶりをかけ,自分で調べてくるように仕向ける。「既知」→「未知」。


●多様な考えを出させる技術
 ■向山氏
  拡散的な発問する。ノートに実のなり方や,切り口の絵を描かせ,板書させる。16種類,7種類に類型化する。

 ■有田氏
  拡散的な発問をする。画用紙に実のなり方や,切り口の絵を描かせる。14種類,3種類に類型化する。


●授業を盛り上げる技術
 ■向山氏
  リズム・テンポよく分類作業を行う。パイナップルをすぐに切らずにじらす。すぐに正解にたどり着かせない。

 ■有田氏
  どれが正解であるかを明らかにせず,子どもたちに「はてな?」を持たせることにより,追究活動が始まり,次時との間が生かされる。

パイナップルの授業 9

2009-02-12 00:23:49 | 社会
 「パイナップルの実を真横に切ると,切り口はどんな形になっているでしょう。切り口の絵を描きなさい。」

 これを2枚目の画用紙に描かせている。

・穴が開いている…5名
・芯で詰まっている…32名
・種が詰まっている…1名

 穴が開いているとした子どもたちのイメージは,パイナップルの缶詰なのである。
 クラスによっては3分の2が穴のあいた絵を描くという。こういうクラスの子ほど,本物のパイナップルを切ってみたときの驚きは大きいし,パイナップルを実際に買って切ってみる確率が高いという。

 この授業でも,有田氏はパイナップルを切った形跡はない。
 結論は子どもが自分で出すように仕向けているのである。

「パイナップルの実を3等分すると,A,B,Cのどこが一番おいしいでしょう。」

 黒板に絵を描いて発問している。非言語伝達の技術である。
 A,B,Cが13,13,12人だったのが,話し合っているうちに0,13,25人へと変化している。はっきりと分からないから,子どもたちの考えが揺らぐのである。

 この授業でも,向山氏と違い,有田氏はパイナップルを切って食べさせてはいない。子どもたちの追究活動に任せている。

 次の時間に尋ねたところ,19人が実際に食べて調べてきたという。38人中19人であるから半数である。
 食べてもいない,切り口も見ていない,身のつき方も調べていないという,何も調べていない子は9名であったという。

 十分に意欲を高めた上で,ここから沖縄県の本質的な学習に入っていく。

「このパイナップルの実は,日本の何県でできますか。」
「どうして沖縄県だけでしかできないのですか。」
「沖縄県でも,本当の南半分や宮古島では,パイナップルはできません。これは,どうしてでしょう。」
「パイナップルのできない土地では,何を作っているでしょう。」
「さとうきびとパイナップル作りは,どちらが収入を上げられるでしょう。」

パイナップルの授業 8

2009-02-11 00:20:19 | 社会
 有田氏によるパイナップルの授業の別バージョンは,次のようである。
 向山氏が追試した授業はこちらに近い。

「これは何だか知っていますか。食べたことがありますか。」

 袋の中から取り出している。子どもたちの期待感を煽っている。
 授業に引き込む技術である。
 
 その後,画用紙を2枚配布し,氏名を書かせた後,次の発問である。

「パイナップルの実は,どんな格好でなっていますか。その絵を描きなさい。」

 これは子どもに揺さぶりをかける発問である。パイナップルなんて知っているという子どもの自信が揺らぐ。

「自分はこうなっていると思うことを描けばいいのです。」
と勇気づけ,フォローを入れている。
 そして,描いたものを分類し,黒板に提示している。全部で14通りに分類している。

 おそらくここでネーミングしているはずである。
①大根型
②半分地上で半分地中
③キャベツ型
④イモ型
⑤ひまわり型
⑥木の根からつるが伸びてパイナップル
⑦木に実がついているA
……
⑬椰子の実型(葉が下向き)
⑭椰子の実型(葉が上向き)
※画像は『4年生に育てたい学習技能』(明治図書)より

 子どもたちは討論になっている。しかし,結論は出ない。
 結論が出ないからいいのである。結論が出ないからこそ子どもたちは調べようとするのである。
 教師のねらいどおりである。

パイナップルの授業 7

2009-02-10 23:24:46 | 社会
 ここでは,どれが正解であるかを明らかにしていない。
 そうすることで,子どもたちが自分で調べ始めることを期待している。
 子どもたちがここで「はてな?」を持つ。「はてな?」発見技能が鍛えられるのである。
 
「真横に切ると,切り口はどんな形になっていますか。絵を描きなさい。」

 穴のあいた絵を描いた子が6名いたという。
 また,沖縄の宮古島で授業した際は,3分の2は穴のあいた絵を描いたという。
 沖縄の子でさえ知らないのである。つまりこの発問は,子どもの常識に揺さぶりを掛ける発問である。
 
 「早速,丸いままのパイナップルを買ってきて,切ってみる子が出てきた」と記してある。
 つまり,有田氏は授業の中で実際にパイナップルを切って見せてはいないということが分かる。
 教師が直接教えるのではなく,子どもたちに調べさせるように仕向けているのである。
 
 有田学級の場合は,子どもたちにとって調べることが勉強ではなく,遊びと同化している。このパイナップルの例などはまさにその典型である。
 
「このパイナップルは400円でした。高いと思いますか。安いと思いますか。」

 多くの子どもは「安い」と言ったという。
 教科書や参考書を素早く見て,「パイナップルではあまり儲からないので,さとうきびの方をたくさん作っているのではないか」という意見も出ている。

 疑問を持ったらすぐに調べる。子どもたちの学習技能がしっかりと鍛えられている。

「どうして,さとうきびの方が儲かるのでしょうか。」

 米と同じで政府が値段を決め,買い取ってくれるからであるという。安くても安定している。
 5年生での米の学習への布石ともなっている。

パイナップルの授業 6

2009-02-09 23:21:24 | 社会
有田和正氏の原実践を分析してみる。
有田氏の授業は,少なくとも3回は行われている。

沖縄の授業をするのに,有田氏は「さとうきび」の教材開発を行った。しかし,費用がかかりすぎ,入手が難しいことから新たに開発に取り組んだネタが「パイナップル」であった。
 
「パイナップルの実は,どんな格好でついていますか。絵を描きなさい。」
という発問・指示は,徳山市の藤本浩行氏の作ったものである。
有田氏は,藤本氏の発問をヒントにして授業づくりをしていったようである。

 有田氏の授業の流れは次のようになっている。
 最初に葉のついたパイナップルを提示する。授業のつかみである。

「これは日本のどこ(何県)でとれたものでしょう。」

 沖縄県だということがすぐに分かる。

「どうして沖縄県しかできないのですか。」

 年平均気温22.4℃,年間降水量2128mm,20℃以上の月が8ヶ月,台風がよく来るので台風に強い作物であるということを押さえている。

「パイナップルの実は,どんな格好でついていますか。絵を描きなさい。」
 
 子どもたちの描いた絵は,8種類である。
 おそらく多様な意見が出たものを,8種類に集約したのであろう。

 『4年生に育てたい学習技能』にイラストが紹介されている。特に⑧が8名であったという。
 ネーミングをどのようにしたらよいだろうか。①は大根型。②③はキャベツ型だろうか。④はスイカ型。⑤⑥⑦は木になっている。⑤は柿の実型だろうか。⑥はぶどう型。⑦は椰子の実型。⑧は何であろうか。