Catch Ball

修業の時計を止めない教師でありたいです。

パイナップルの授業 5

2009-02-08 16:53:12 | 社会
 向山氏は包丁を入れた状態で,次の問題を出す。

「問題。3つに切ったならば,上の方と,真ん中と,下の方と,どれが一番おいしいということを,ちょっと聞いてみます。」

 子どもたちはパイナップルを注視している状態である。全員の注目が集まっている中の発問である。集中力が高まったまさにそのタイミングで,発問を入れている。
 この発問はパイナップルを切る前に出しては効果半減である。包丁が入っている状態だからこそ,効果的である。

「はい,上だと思う人。真ん中だと思う人。じゃあ,下多いのね。」

 挙手による確認である。
 いよいよパイナップルを切る。

①お,おっ…。
②ザクッといっちゃったよ。
③じゃあ,見ます。先生が見ます。
④おおーっ。
⑤さあ,いきます。
 
 ③ではまず教師だけが見ている。
 ④の「おおーっ」は向山氏が結果を確認し,驚いてみせたのであろう。
 散々じらした上で⑤で子どもたちに見せているのだと思われる。
 この場面で一貫しているのは,授業を盛り上げる技術である。
 
 「中がどうなっているか」の答えを確認し,その上で切り分けて食べる。

「ひとつずつね。女の子からね。どうぞ,持っていって。はい,いいよ。食べていい。」

「感想を一言書きなさい。」

 ここまでは活動が大変多い。動的な授業である。
 しかし,最後は思考場面が入る。授業にメリハリがあるのである。

 最終発問はこうである。

「東京・那覇の間は,片方が飛ぶのに飛行機で2時間半かかって,片方は1時間50分です。東京から向こうに行くのがはやいんでしょうか。那覇からこちらに来るのがはやいんでしょうか。」

 この発問は,有田和正氏の原実践にはない発問である。

 これは,多様な考えを出させ,討論になる発問である。また,追究を促す発問である。
 子どもたちがどのような意見を出せるか,どのような資料を探してくるか,どのように論を展開するかということが大切である。
 
 この向山氏の授業記録から,根本正雄氏は4つの技術を抽出している。

(1)授業導入の技術
(2)学び方を身につけさせる技術
(3)多様な考えを出させる技術
(4)授業を盛り上げる技術