Catch Ball

修業の時計を止めない教師でありたいです。

追究の鬼を育てる 2

2007-12-31 01:16:35 | 社会
 子どもの知的好奇心を刺激すれば,「はてな?」の発見につながっていきます。
 それにはどのようなものがあるのでしょうか。

 長谷川氏は,次の11のタイプを挙げています。

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 ①“サプライズ(驚き)”から思わずその理由を考える
 ②矛盾から問題を意識する
 ③困惑の状況に陥り考え出す
 ④混乱すると調べたり確かめたりしたくなる
 ⑤不適切なことを正したくなる
 ⑥概念的不一致に気づき疑問をもつ
 ⑦新奇なものの実体や理由を知りたくなる
 ⑧特色から共通項を見つけたくなる
 ⑨違いや変化を推測したくなる
 ⑩次を予測したくなる
 ⑪体験や活動から問題や目当てを見つける
   長谷川康男著『子どもが社会科で問題意識をもつ10のポイント』(学事出版)P.21
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 どれもたしかに合点がいきます。自分も何か調べ物をするときは,この11のタイプのどれかに当てはまります。
 
 長谷川氏はこのようにも述べています。

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 この学習のきっかけとなる問題は,はたから見て,つまらぬように見えてもかまわない。
 単元の中心的な問題ではなく,はしっこの取るに足らない問題であってもかまわない。
 いずれ,単元の本質につながればよいのである。(中略) 
 いやむしろ,最初の問題は,単元のはしっこの問題の方が,子どもたちの関心を引きやすい。
 前掲書P.22
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 これを読んで,6年生に文明開化の授業をしたときのことを思い出しました。
 私は最初に明治天皇の肖像画を提示しました。
 そして,「明治天皇は,もともとはこんな髪型ではありませんでした。どんな髪型だったのでしょうか」と問題を投げ掛けました。
 この問題で子どもたちの関心を引くことができました。
 これは単元の中心的な問題ではありません。まさにはしっこの問題です。
 明治天皇の髪型という問題から切り込み,文明開化について子どもたちは追究していきました。

追究の鬼を育てる 1

2007-12-31 01:10:18 | 社会
 私が社会科の授業でモデルにしているのは有田和正氏の授業です。
 「追究の鬼」を育てる授業,学習技能を鍛える授業です。
 
 追究させるためには,追究する価値のあるものに出会わせなくてはなりません。そして,「はてな?」を発見させなければなりません。
 
 「はてな?」発見技能を鍛えることが,追究の鬼に育てる第一歩だと考えられます。
 そのためには,子どもの興味・関心を喚起するものとの出会いが必要です。
 
 有田和正氏も次のように述べています。
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 「はてな?」発見の根源は,「知的好奇心」である。
         有田和正著『総合的学習に必須の学習技能』(明治図書)P.14
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 面白いものでなければ,「はてな?」も見つかりません。面白いものでなければ,調べようとは思いません。
 
 筑波大学附属小学校の長谷川康男氏は,子どもの興味・関心を引く資料・教材として,次の6つを挙げています。
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 ①食べたり,飲んだりできるもの
 ②動くもの,動きのあるもの
 ③大きなもの,強いもの,迫力のあるもの
 ④子どもたちの知っているもの~遊び,クイズ,ゲームetc~
 ⑤恐いもの,気味の悪いもの
 ⑥奇異に感じるもの,得体の知れないもの
   長谷川康男著『子どもが社会科で問題意識をもつ10のポイント』(学事出版)P.8
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 導入の段階で,このような子どもの興味・関心をひきつけるようなものを提示していきます。
 
 有田氏の実践でもこのようなものを提示することが多いです。
 例えば,戦国武将の授業では一寸法師のレコードをかける,沖縄の気候の授業では本物のさとうきびを提示する,地図の見方の授業では新潟県の地図を提示する,わたしが生まれてからの授業では赤ちゃんの帽子をかぶるなどです。有田氏自身がバスを運転して運動場をぐるぐる回ったこともあったそうです。

 長谷川氏の挙げる6つのものを導入で提示することは,追究の鬼を育てるために有効だと思います。

おたよりノート 2

2007-12-30 00:01:51 | 特別活動
 おたよりノートは,昨年度,1年生が入学して2日目から始めました。
 入学したばかりで文字を書けるのかという不安は当初ありましたが,意外と書けることが分かりました。
 1年生は文字を読めない・書けないという前提で指導していかなければならないとよく言われます。
 しかし,実際はそんなことはありません。
 1年生を赤ちゃん扱いしてはいけないと思います。
 ほとんどの子はひらがなを覚えて入学してきます。

 次のようなステップで書かせました。
(1) 私が黒板に書いたのを写すだけ。(夏休み前)
(2) 前半は視写,後半は自由記述。(夏休み後)
(3) 前半は聴写,後半は自由記述。(冬休み後)

 結果的に,書くことを全く苦にしない子供たちが育ちました。
 自由記述の部分で,自分の思いを教師に伝えられるということで,喜んで書いている子が大半だったように感じました。

 子どもがどんなことを考えているのか,子ども理解にも役立ちます。
 普段あまり発言しない子も,ノートにはしっかりと書いてきます。これも子どもの発言のひとつです。

 子どもといっしょに遊んだり,給食を食べたり,話をしたりと,さまざまな機会を通して子どもを捉えようと努力しています。
 しかし,一人残らず全員と一緒に遊んだり,給食を食べたりできるわけではありません。
 おたよりノートは全員が書きます。休み時間に何をしていたか,今日一番楽しかったことは何か,今日の勉強がよく分かったかなど,子どもウォッチングに大変役立っています。

 私はおたよりノートを子ども理解の核のひとつとしています。この実践を今後も続けていきたいです。

おたよりノート 1

2007-12-29 23:27:42 | 特別活動
 学級懇談会の中で,保護者から次のような発言がありました。
「連絡帳が毎日書かれていて,その日にあったできごとや学校での様子がよく分かります」
 
 私は連絡帳(おたよりノート)を毎日書かせています。
 連絡帳というと,次の日の持ち物や宿題などをメモするような使わせ方が一般的だと思います。
 私の場合は,ミニ日記のような使わせ方をしています。
 
 その日のできごとを私が板書します。
 例えば,「今日は,体育で○○をしました。」と書きます。
 板書せず,口で言うだけのときもあります。

 そして,「この続きは自分で書いておいで」と投げ掛けています。
 子供たちは経験したことや感じたことなどを思い思いに書いてきます。

 書いた後,私がチェックして印を押します。
 
 持ち物や宿題を書かせることもあります。しかし,メモではありません。文で書かせるようにしています。

 おたよりノートの効果として,次のようなことを考えています。

(1) 視写力・聴写力がつく
(2) 速く書く力がつく
(3) 作文力がつく
(4) 子ども理解に役立つ
(5) 学級通信的な役割

 おたよりノートは,有田和正氏の追試です。
 有田氏の場合は,ユーモア力をつけるということにも力を入れています。
 「~でR」「~でありんす」などの文末表現が特徴的です。

ボールの準備・片付け

2007-12-28 08:23:56 | 体育
 先日,体育館の倉庫の整理整頓をしました。
 定期的に体育委員会で行っているほか,月に1回ほど私が行っています。

 本校の体育館には,ボール整理かごが4つあります。バスケットボール,ポートボール,ドッジボール,バレーボールと分けて入れています。

 しかし,整理に行くたびにぐちゃぐちゃに混ざってしまっています。
 どうしてこんなふうになってしまうのか考えてみました。
 おそらくこんな授業が展開されているのではないかと思います。かつての私がこうでした。

●準備のとき
 先生:「1人1個ボールを取ってきなさい」
 子ども:我先にと,走って体育倉庫に取りに行く。
 このとき,先生は体育倉庫まで行かずにその場にいる。体育倉庫の中は見えない。

●片付けのとき  
 先生:「ボールを片付けてきなさい」
 子ども:我先にと,走って体育倉庫に向かい,ボールをいい加減に投げ入れる。
 このとき,先生は体育倉庫まで行かずにその場にいる。体育倉庫の中は見えない。

 いまの私はこのようにはしていません。
 ドッジボールを使うときなら,ドッジボールの整理かごごと体育倉庫から出しておきます。
 そして,ボールを取りに行かせます。
 かごが出ているので,ドッジボールと指示しているのに,間違ってバスケットボールを持ってくるというようなこともありません。
 片付けのときも,そのままかごに入れさせます。ほかのボールと混ざるということはありません。
 最後に整理かごを体育倉庫に片付けます。

 先生がかごを出すという手間が掛かりますが,わずか数秒でできることです。

日本のスポーツについて考える 2

2007-12-26 23:55:00 | 教師修業
 学校や企業が土台となっている現在の体制では,日本のスポーツ振興を考える上で限界があります。
 
 スポーツは地域社会の接着剤としての働きをします。地域社会の一体感をつくることができるのです。スポーツという文化を共有することができます。

 そのために必要なのはクラブチームの存在です。
 住民が実際にプレイするにしろ,応援するにしろスポーツに参加することによって,クラブチームが地域社会のシンボルとしての存在となる環境整備が必要です。

 これはJリーグのチームを考えると分かりやすいです。
 Jリーグのチーム組織には,トップのプロチームから小学生のチームまで存在しています。
 Jリーグの理念は,学校と企業スポーツからの脱却です。地域密着型のスポーツクラブをつくり,サッカーだけでなく,あらゆるスポーツを地域の誰もが楽しめる環境を整備することを理念としています。

 そういったクラブチームを地方公共団体,企業がバックアップしています。資金援助,施設の充実,指導者の育成などの環境の土台づくりを行っていきます。

 25日の教育再生会議第3次報告では,スポーツ庁の設置が提言されました。今まで日本では,スポーツは文部科学省の管轄だったのです。
 これがきっかけとなって,学校や企業の宣伝目的ではなく,純粋にスポーツを楽しめる環境が整備されていけば,日本のスポーツも変わっていくのではないかと思います。
 

日本のスポーツについて考える 1

2007-12-24 22:54:35 | 教師修業
 全国高校駅伝大会で仙台育英高等学校が優勝しました。
 地元宮城のチームが優勝したということで,それは素晴らしいことだとは思いますが,私は空しさも覚えます。
 
 メンバーの出身地を見てみると,北海道,福島,ケニア……。
 これで宮城のチームだといえるのでしょうか。
 
 なぜこのようなことが生じているのでしょうか。
 それは,部活動が学校の宣伝活動に利用されているからにほかなりません。
 学校の名を売るためには,いい成績を上げなくてはなりません。そのため,素晴らしい選手,素晴らしい指導者を全国からスカウトしてくるのです。
 
 果たしてこれでいいのでしょうか。

 日本のスポーツは,本来のスポーツのあるべき姿ではありません。
 日本のスポーツは,長いこと学校と企業によって「私物化」されてきました。
 Jリーグの誕生以来,地域とともにあるスポーツ,地域によって支えられるスポーツという姿もだいぶ定着はしてきた部分はありますが,まだ学校,企業による私物化は根強いものがあります。

 学校,企業による私物化の弊害として,誰もがスポーツを楽しめないということが挙げられます。

 例えば今回の駅伝に出場した選手は,高校を卒業したあと,実業団や大学に進んで競技を続けることができます。
 しかし,そこそこの実力しかない選手の受け皿はありません。

 野球でも同じです。
 一流の選手ならば,大学野球,社会人野球,プロ野球などに進めます。
 進めなかった選手はどうなるのでしょう。草野球ぐらいしか道は残されていません。
 社会人野球の場合なども,もし廃部でもなれば競技を続ける道が閉ざされてしまいます。
 
 誰もがスポーツを楽しむためには,学校や企業の部活動が土台となっている今の体制では駄目なのです。

新幹線の座席 3

2007-12-21 01:12:10 | 算数
 計算で考えるとはどういうことか,ピンと来ない様子である。
 そこで,Aを指しながら,次のように発問した。
 
「これは17人を何人と何人に分けたのでしょうか」

 2人と15人である。
 
「2人掛けの席に1組,3人掛けの席に5組だね」

 子どもからこのような考えが出ることが難しいと判断し,私が説明した。
 この考えをもとにして,BやCのときに分かればよいと割り切った。
 
 そして,次のように板書した。

【A】
    2……2×1=2
 17   
    15……3×5=15

 何となく分かったような分からないような表情の子どもたち。

 次にBを指して「これは17人を何人と何人に分けたのか」と問う。
 「14人と3人」と子どもたちは答える。
 
 「あっ,そうか。分かった」とつぶやきが聞こえた。
 その子に「これをさっきのように式にするとどうなるかな」と発問した。

【B】
    14……2×7=14
 17
    3……3×1= 3

 「おお,そういうことか」とさらに反応が大きくなってきた。

 「ではCの場合はどうなるだろう」と問うと多くの手が挙がった。

【C】
    8……2×4=8
 17
    9……3×3=9
 
 分からなかったことが分かるようになったのである。
 向上的変容である。
 
 最後に類似問題として,「今度は19人のグループが乗ってきました。どのように座ればよいでしょうか」と問題を出した。
 図にかかせ,式をノートに書かせた。
 
 面白いネタによって,子どもをひきつけ,かけ算九九の利用について理解を深めることができたと思う。
 
 この実践は田中博史氏の実践の追試である。(NHK教育「かんじるさんすう1・2・3!」)

新幹線の座席 2

2007-12-20 04:49:31 | 算数
 書いては消し,書いては消し,格闘しながら問題に取り組んでいる。
 しばらくして「できた」という子がいた。見ると,次のように書いてある。

【A】


●●●●●
●●●●●
●●●●●

 「なるほど。これなら1人ぼっちの子もいないし,知らない人も隣に座らない」と丸をつける。
 その後,「でも,何だか2人だけのところは寂しいね」と投げ掛けた。その子は別の座り方をまた考え始めた。
 
 できた子からノートを持ってこさせ,できた子には別の座り方はないか考えさせた。
 
 15分ほど考えさせ,黒板に発表させた。
 まず,先ほどの考え方を板書させた。
 次に,次のような考えを板書させた。

【B】
●●●●●●●
●●●●●●●




 「これもいいけど,ちょっと寂しいねえ」と投げ掛けた。
 
 これらは誰がどのような図を書いたかを把握し,意図的に指名したのである。
 何の意図もなしにいい加減に指名したのでは指名したのでは,面白みのない授業になってしまう。

 「もう一つないかな」と問いかけ,板書させた。

【C】
●●●●
●●●●
●●●
●●●
●●●

 どれも正解である。
 この3つのパターンしかないのである。

 「これを計算で考えられないだろうか」と子どもたちに投げ掛けた。
 新たな問題提示である。
 しかし,よく分からないようであった。

新幹線の座席 1

2007-12-20 04:26:46 | 算数
 12月18日,算数の時間に行った実践である。
 教科書の内容は終了したので,発展的ネタを扱った。
 
 黒板にいきなり「新幹線」と書き,「新幹線に乗ったことがある人?」と聞くと,7割ぐらいが挙手した。なかなかすごい経験率だと思う。
 
 次に,通路をはさんで2人がけブロックと3人がけブロックに分かれている座席表を書いた。

「新幹線の座席は,このように片方が2人掛け,もう片方が3人掛けになっていることが多いです」

 「そうだよ」などと口々に言い出す子どもたち。
 そんなことは普通あまり気にとめないと思うが,本当に知っていたのだろうか。
 本当に知っていたのなら,なかなか鋭い目の持ち主である。

「17人のグループが旅行にきました。どういうふうに座ったらいいでしょうか」

 「そんなの簡単だ」という。
 そこで1人を指名して,黒板に書かせた。ここでのポイントはいきなりエース級の子どもに指名しないことである。

 2人がけの席にどんどん丸印を書き入れていく。
 すると1人余ってしまった。
 私のねらいどおりである。
 
「1人余ってしまったなあ。この人,かわいそうだなあ」

 子どもたちは別の座り方があるという。
 そこでもう1人を指名し,書かせる。
 
 今度の子は3人がけの席にどんどん丸印を書き入れていく。
 すると,3人がけの席のうち1つが余ってしまった。
 ねらいどおりである。

「これだと,隣に知らない人が乗ってきてしまって,ちょっと居心地が悪いかもしれないね。お話していると隣の人に迷惑かもしれないし…」

 これで子どもは本気になって考え始め,ノートに向かった。
 いったいどうやったら17人を半端な席が出ないように座らせることができるのだろうか。