⑰若大将 対 青大将 / 若大将 NY追放作戦 /
加山雄三
それとなく「若大将シリーズ」は子ども
の時から好きだった。
小学校低学年の時から映画館に観に行って
た(笑)。
この『若大将対青大将』は1971年1月公開。
撮影は1970年だ。あたしゃ小4の時すね。
酒井和歌子さんがすごく可愛い。
小学生のガキながら惚れた(笑)。
この後、76年頃のテレビドラマで石立鉄男
の女上司役で酒井和歌子さんはドゥカティ
乗って通勤しているシーンがあり、これまた
しびれた。
若大将シリーズは、毎回物語の中身は
同じなのだが、それでも観ていて飽き
ない不思議な映画だ。
まるで加山雄三さんの曲のコード進行
のように、同じコード進行で別曲を作る
というような映画。
酒井和歌子さんもマドンナ役の常連だっ
た。
高度経済成長当時の青春ドラマ映画に
出演する女優さんの役どころはほぼ
定式があった。
それは、しっかり者ながらけなげな心
を持つ女性で、ある意味、往年のハリ
ウッド西部劇に出て来る女性のキャラ
クタに通じるものがあった。
田中邦衛さんはこの加山雄三さん主演
の若大将シリーズで固定的な性格俳優
の位置を固めたが、その後は何を演じ
てもどうしても青大将のようになって
しまうきらいがあった。
それは、高倉健さんがどの役を演じて
も「高倉健」という役名を演じたかの
ようなものになった。
それでも、田中さんの演技は抜群で、
時代劇等においてもその個性が映える。
田中邦衛さんと加山雄三さんのコンビ
は、二枚目と三枚目の組み合わせを
日本映画で確立した定番コンビだと
思える。
21才の酒井和歌子さんがとにかく可愛い。
加山さんは学生時代の若大将の役柄と
キャラ変わらず。絵に描いたような
朗らかで爽やかな好青年を演じている。
酒井和歌子さんが劇中で着ている服は、
もろに1970年万博の年に流行していた
服だ。髪型もそうだ。
この傾向は1972年頃まで継続した。
1972年に大人気だった歌手の天地真理
さんもこのような髪型と服装が定番だっ
た。
ブラボー若大将(1970年1月1日公開)
1970年撮影時19才の酒井和歌子さんが
これまたとても可愛い。短大生か、
もしくは女優専念のために大学を辞め
た頃。
子役モデルの時から可憐で可愛かった。
毎回同じストーリーの独立パラレル
ワールドを描く別物語なのだが、
観て楽しい不思議な加山雄三若大将
シリーズという映画。役名はどれも
毎作同じだ。パラレル世界の不思議
な魅力に当時の観客は魅了されていた
のかも知れない。
これも19才にしてはしっかりしている。
『ニュージーランドの若大将』(1969)
1969年7月公開。4月生まれなので、
撮影が4月以前だとしたら18才だ。
1960年代70年代の女性は10代にして
しっかりとオトナである。
酒井和歌子さんが若大将シリーズに
初出演したのは1967年1月公開の
『レッツゴー!若大将』だ。スチュワー
デス役で登場した。その撮影時には
17才で成人女子の役を演じていた。
当時の酒井和歌子さんの雰囲気は、
なんだか夏帆ちゃんに似てる気がする。
ただ、酒井和歌子さんは表情がくるくる
変わる事で演技ができる実力派女優さん
だった。そうした顔の表情で演技ができ
る女優さんはあまりおらず、いうならば
吉永小百合さんが代表格か。
酒井和歌子さんは、相手が台詞を言う
のに対応して無言ながら表情がいろいろ
変わる。そこが彼女の持ち味かと。
名女優だが、彼女はなぜか主役ではなく
女優の路線はバイプレーヤーに徹して
いた。
ニュージーランドの若大将 / 節子との出会い
(映画『赤い河』から)
昔のハリウッド西部劇が凄いところ
は、牛を移動させるロングドライブ
などでは、本当に数千頭の牛を移動
させてそれを撮影している点だ。
現代ならばすべてCGであるが、昔は
実際に牛を動かした。
この『赤い河』(1948年)では1万頭
の牛を数千キロにおよぶ長旅で移動
させて売却するロングドライブを描い
ているが、実際に数千頭の牛を移動
させて撮影している。
移動させるのは機械ではない。生身
の本物の当時の現代カウボーイが
数十人かけて実際の西部開拓時代の
カウボーイのように移動させている。
この作品の舞台は1865年設定だ。
劇中、やたらと1875年以降に民間
に発売されたコルトSAAが登場する
のは、ハリウッド特有の時代考証
無視のご愛敬だ。しかも、1896年
以降に発売された実銃を使って
いる。黒色火薬モデルでもパーカッ
ションモデルでもない、1865年時
にはこの世にまだ存在しない拳銃
を『赤い河』では使用している。
ただし、キャトルドライブのシーン
は実際に本物の牛を追って移動させ
ているのだ。これは圧巻。
こうした本物のドライブを古い西部劇
はたっぷりと見せてくれる。そこは
他では真似できない映像描写であり、
西部劇の醍醐味ここにありの感がある。
さて、今でも治安のよくないアビリーン
の田舎町に3ヶ月ぶりに到着した
ロングドライブのカウボーイは、町
の実業家から待っていたと歓待され、
商談に入る。
その際、屋内に入って天井を見上げる。
天井を見たのは3ヶ月ぶりだったから
だ。つまりそれまではずっと牛を
追って野宿のキャンプだ。
食料弾薬と水を積んだ幌馬車隊と共
に数千キロを1万頭の牛を移動させて
旅をしてきたのだ。
このロングドライブのきっかけは、
牧場主のジョン・ウェインが1頭3セント
にしかならない相場に悲観し、牧場の
すべての牛を数千キロ離れた鉄道が
敷設されたミズーリに移動させよう
としたことに始まる。
途中、過酷な労働から脱走したチーム
のメンバーを縛り首にしようとして
ボスは仲間から見放される。
孤児を育てて息子のように思っていた
若者のカウボーイガンマンからも
見放され、牛すべてをミズーリでは
なくアビリーンへと目的地変更して
移動することになった。
牧場主のジョン・ウェインは、その
元の従業員たち数十名と旧友と息子の
ように育てて14年経ち青年となった
若者を追って殺す旅に出る。
ロングドライブの一行は、ようやく
新しい町アビリーンに到着する。
そこでの商談の金額は1頭につき
20ドルで買ってくれるという。
さらに色をつけて21ドルで売買の
商談が成立した。
頭数は9,000頭を移動させて途中で
700頭ほど死んだから8,300頭。
計算では全部で174,300ドルとなる。
ここで、1865年の1ドルが2020年
現在のドル価値でどれ位かという
計算ソフトがある。
それによると、当時の1ドルは2020
年の17.7倍の貨幣価値だ。
ということは、牛の売買金額は
現代貨幣価値で換算すると、およそ
3,085,110ドルとなる。
そして日本円に換算すると1ドル
110円計算だと339,362,100円となる。
1頭約40万円で購入してくれたので、
売り上げはそれなりに出ている。
現在日本円で3億4千万円あれば、
牧童の給料と経費支払いもまか
なえるだろう。
そして、牧場主と幹部はそれなりの
高額の富の蓄えもできたはずだ。
1865年当時の1ドルは2020年の約
17.7ドル分。つまり日本円では
1ドルが今の約2,000と見れば遠く
ない。
その後インフレで貨幣価値は下が
るので、1ドルが今の日本円の1万円
ほどになる時代も来る。
「荒野の1ドル銀貨」という映画も
あるが、1ドル銀貨の価値は大体今の
1万円程度と思えばいいだろう。
牧童を雇って月に15ドルとか20ドル
というのは、大体月給15万円~20
万円といったところだろう。
カウボーイは薄給である。
江戸期の大工が大体現在価格で日に
1万円から2万円ほど稼いだのだから、
いかに牛追いが安月給であるかという
ことだ。
江戸市民の職人は日銭の実入りが
けっこうあったので、パッと使う
悪い癖がついていた。給料は良いの
で、蓄財せずに派手にその日のうち
に使ってしまう。どうせまたあした
働けばおまんま食ってさらに遊べる
金が稼げたからだ。宵越しの金は
持たないとして一晩で使ってしまう。
そのあたりの経済事情から、江戸
東京人の金離れの良さの気風(きっぷ)
が誕生したのだろう。
これは江戸東京限定であり、現在でも
東京人にはその気質があるが、この
気質は地方人には全く100%理解され
ない。東京人の金銭感覚のほうが異常
なのだが、日本人の10人に1人は東京人
であるので、なんとも微妙だ。
西部開拓時代の牛追い=カウボーイ
たちも、金が入ったらパッと酒場や
博打で使ってオケラになったりして
いたようだ。
ただ、江戸っ子の職人と違い、牛追い
はロングドライブなどの時は、給料
支払いは取引後の据え置きなので、
なかなか厳しかったのではなかろう
か。行程はほぼ荒野だが、途中、町に
寄ったりしたら、すかんぴんになった
りしていたことだろう。
刹那的。
だからこそ、西部劇での人間ドラマが
生まれたのだろう。
ありきたりの平凡な市民生活だった
としたら、壮大なドラマなどは生まれ
もしない。
ただし、慎ましくも朗らかな物語
は各戸にあるだろう。
『大草原の小さな家』などは、一家庭
のドラマを描いた典型的な「西部劇」
だ。
一昨日行った広島県福山市の鰻屋の通り。
『リオ・ブラボー』(1959年)
<監督>
ハワード・ホークス
<出演>
ジョン・ウェイン、リッキー・ネルソン、
ディーン・マーティン、ウォルター・
ブレナン
殊の外、面白い。
『真昼の決闘』の作風にカチンと来た
監督とジョン・ウェインが対抗作として
製作した映画。
町の悪者と正義の保安官の物語。
この映画は、保安官助手たちのキャラが
とても個性的で良い。
歌手のディーン・マーティンとリッキー・
ネルソンが歌を歌うシーンがある。
それが、対決の前の保安官事務所での
ひと時の安らぎを感じさせる。
また、この映画のテーマ曲としては、
アラモ砦でテキサス人を皆殺しにした
メキシコ軍が演奏していた「皆殺しの歌」
を悪者が酒場のバンドに一日中演奏させる。
その曲も作品にスパイスとして作用して
いる。
ハンサムボーイのリッキーと、アル中
から立ち直るディーンがカッコいい。
そして、『赤い河』(1948年)でも
ジョン・ウェインと共演したウォルター・
ブレナン老人役でとてもいい味を出し
ている。
ブレナンは1890年代の生まれなので、
子どもの頃にはまだ本物のワイルド・
ウエストの気風が残っていた時代を
知っている筈だ。
ジョン・ウェインは1907年生まれだが、
本物のワイアット・アープが映画製作
アドバイザーだった頃にワイアットに
「君は俳優になれ」と言われている。
ハリウッド・ウエスタンは流行り廃り
とは関係のない作り=史劇であるので、
いつの時代でも映画作品として鑑賞し
て楽しめる。
この『リオ・ブラボー』は21世紀の
現在観ても痛快で面白い。
そして、ハリウッド・ウェスタンは
マカロニ・ウエスタンのように殺伐
とはしておらず、絶対に「いい女」
が出て来る。
それが主人公とロマンスの絡みを
必ず見せるのだ。
大抵、それらの女性は、気が強く、
主人公と反発し合うが、やがて互い
に強く惹かれ合い、恋に落ちる。
これ、日本の青春ラブコメの食パン
ダッシュ女子高生と同じくらいに
西部劇の定番。
『リオ・ブラボー』と『荒野の決闘』
を観ずに西部劇は語れない。あと
『シェーン』と『大いなる西部』ね。
『リオ・ブラボー』はジョン・ウェイン
主役だが、他の役どころの保安官助手
3名と女ギャンブラーのキャラが立って
いて楽しめる。
ジョンの旧友は加勢しようとして悪者
に闇討ちされた。旧友の牧童だった
若きリッキーは保安官助手となる。
この時19才の人気ロカビリー歌手の
リッキー・ネルソン。
彼は1981年12月31日、チャーターした
ダコタが墜落し、彼と婚約者、マネー
ジャーとバンドマン4名全員が死亡した。
死後の1987年にロックの殿堂入り。
私は『リオ・ブラボー』は1973年の
今頃の季節にフジテレビのゴールデン
洋画劇場で初めて観た。
一発でこの作品のファンになった。
それから、何度も事あるごとに思い
立った時に観ている。
この作品のように、役柄のキャラクタ
が冴えている映画作品はいつの時代に
観ても面白い。
別ジャンルではクリント・イースト
ウッドの『戦略大作戦』が各役者の
キャラが最高だ。全員主役なんじゃない?
という程に。そういう映画は面白い。
わざと無理してこんな昔の職業の格好
をする保安官に惚れこんだアンジー・
ディキンソン。定番マドンナ役。
現在89歳でこれ。
ハリウッド女優おそるべし。