私が少し大きくなると
家の中を
あちらこちら歩き回ります
小さな子供は、あちらこちらに
興味を示すので
親にとって片時も目を離すことはできません
しかし、両親は、私が家中の引き出しを開けても
引き出しからいろんなものを引っ張り出しても
何も云いませんでした
私はいつからか大きなカメラを
遊び道具にしていました
カメラは大名刺判、シートフィルムの
プラウベル・マキナでレンズ・シャッターの
ジーッという一秒のシャッター音が好きでした
父親はこのカメラで遊んでいる私を見ても
「イケナイ…」とは云いませんでした
このプラウベル・マキナの三脚だけは
いじってはいけないと強く云われていました
… … …
この三脚は折りたたみ式の
珍しい構造でレバーを押すと、スプリング仕掛けで
「バチバチ…」と折りたたんだ脚がつぎつぎに
伸びていく危ない構造でした
… … …
小さな子供にはいくら何でも
カメラの名前はわかりません
後年、カメラのカタログで知りました。