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ゆきゆきて、神軍

2014-07-13 11:17:03 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
凄い映画を観てしまった。
観たからには、見なかったことにはもう出来ない。

今村昌平企画、原一男監督の奥崎謙三を追ったドキュメンタリー。1987年公開。
キャッチコピーは、「知らぬ存ぜぬは許しません」

奥崎は、ニューギニアの独立工兵第36連隊の帰還兵である。
部隊は飢えとマラリアで、千数百名の兵士のうち帰還できたのはわずか30数名だった。

かっての部隊の残留隊で、隊長による部下2名の射殺事件が起きる。
表向きは脱走兵として処刑されたことになっているが、これは戦争が終わって
1か月ほど経ってからのことなのだ。
奥崎は遺族と一緒に、当時おなじ部隊だった人たちを訪ねて、真相究明に乗り出す。

敗戦を迎えるまでのニューギニアでの数か月は、想像を絶する飢えがあった。
戦争をしていることさえ忘れるほどの飢餓。
その中で人間として赦されない行為が行われていたという事実を、
奥崎は生き残った人たちから聞き出そうとする。

子どもや孫と暮らしている元隊員を訪ね、家族が居ようが情け容赦なく話すことを強要する。
それが、たまたま生き残った人間の使命だと問い詰める奥崎の姿は、
執念という言葉を超えて狂気さえ感じる。

元隊員たちは、抵抗しながら、なじりながら、懊悩しながら、話し始める。
事実を明らかにすることが人類の財産となり、これからの戦争の抑止力になると、奥崎は言う。

奥崎の行為は過剰であり、その思考や宗教は納得できないものもある。
それでも奥崎の狂気がなかったら、「事実」が白日の下に曝されることが
なかったのではないだろうか。

人間の理性も慈愛も尊厳も、自分が人間であるという自覚さえ、戦争はかなぐり奪って
しまうものだということを、この映画は語っているように思う。
主義主張など吹っ飛んでしまうほどの現実が、そこにはあった。

見たくないものや酷たらしいものに目を背けるのではなく、事実の一片だけでも
見て欲しいです。賛否両論があるとは思いますが、戦争を知らない政治家の方々、
是非観てください。 (敬称略)



(画像はお借りしました)
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