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古典に親しむ絵本/絵本『>海女の珠とり―海士 (お能の絵本シリーズ (第1巻)』

2010-01-30 00:05:30 | 絵本・児童文学
海女の珠とり―海士 (お能の絵本シリーズ (第1巻))
片山 清司
アートダイジェスト

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 能の「海士」を元にした絵本です。原曲は、身分の違いと、女性は成仏できないという、二つの差別が基本にある話です。右大臣藤原不比等(謚は淡海)と海女との関係、これは愛に基づくものなのか、打算に基づくものかは、定かではなく、観客の解釈にまかされます。ただ、母親の命をかけた愛情は、不比等との間に生まれた息子に対するものとして、心を打つものがあります。
 女性が成仏できないという思想は、当時は常識的な考えでした。本曲の中でも、供養を受けた海女の霊が、龍女となって登場します。これは、法華経の提婆逹多品の中に書かれた龍王の娘が仏道を修めた上で、成仏した話を受けています。ただし、経典の中でも、女性の身では成仏できず、男性に変化してから成仏を遂げています。変成男子の考え方です。

 絵本では、話が、子どもが読みやすいように、変奏曲となっています。

 藤原房前(ふささき)は、死を前にした不比等の枕元に呼ばれて、実母の話を初めて聴かされます。(原曲では、不比等の死というエピソードがありません)。その昔、藤原家の大事な宝の珠を龍王に盗まれたことがありました。不比等は、珠を取り戻すべく、讃岐の国志度の浦房前という場所に出かけていきます。そこで、海女と出会い、二人の間に生まれた子どもが房前でありました。

 房前は、母を探しに志度の浦に出かけていくのでした。そして、そこで房前も一人の海女に出会います。その海女は、かつて、命をかけて宝の珠を取り返した海女の話をするのでした。海女は、珠を取り返すために、龍王のいる海に潜ります。やっとのことで、珠を取り戻しますが、珠を護る八大竜王に追われます。覚悟を決めた海女は、持っていた剣で、乳房の下を切り開き、そこへ宝珠を埋め込んだのでした。龍王たちは、血を嫌います。海女の傷から大量に流れる血のために、龍王たちは追いかけることができなくなります。
 船の上に引き上げられた海女は、不比等に、自分達の息子を跡継ぎにすることを約束させて息絶えるのでした。

 こうした経緯を話した海女が、自分こそが房前の母親の霊であることを告げて、息子のあった故に、この地に留まる必要がなくなったと姿を消します。

 房前は、志度寺の僧侶を集めて、母親の供養をします。やがて、美しい母の姿が海の向こうから見えてきます。母親は、房前の供養によって、他の海で死んだ霊たちとともに成仏出来たと告げて、昇天していったのです。

 なお、日本画家の岡村桂三郎氏の絵は、抽象画のような所もあり、読み手の想像力を呼び起こすものです。


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