自閉症者が語る人間関係と性グニラ ガーランド東京書籍このアイテムの詳細を見る |
障害者とセクシャリティの問題も、人間として大切なものであるが、現場をはじめ、セクシャリティだけを、障害者の生活から切り離して臆している向きがある。
七生養護学校事件での、実践的な「こころとからだ」の授業に対する、保守主義に凝り固まった一部の都議会議員とと教育委員会の不当な介入と攻撃は、全国的に、教育現場の性教育の実践の動きを後退させてしまった。
2006年12月に国連総会で採択された障害者の権利条約には、次のような条文がある。
「私生活、家庭及び家族の尊重」
・障害を持つ人々は自由に、自己の責任において子どもの数及び出産の間隔を決める平等の権利を有する。また、この権利を行使するために必要な情報、教育、方法などへのアクセスも確保されなければならない。
・性も含めた豊かな人間関係の形成は、一人ひとりの人間としての尊厳を大切にするゆとりのある生活の中でしか達成できません。
さて、本書の著者であるグニラ・ガーランドは、自らも自閉症者であり、今まで、あまり取り上げて来なかった自閉症スペクトラム障害とセクシャリティの問題を、本国スウェーデンでの自閉症者からの聞き取りをもとに、探究している。他国の制度にも触れている。
自閉症者のセクシャリティも、個人により異なり、周囲の支援も、その違いを良く把握してから、本人の意向も尊重して理解する必要がある。
また、性的に問題があると思われるケースでも、実際は、原因が性に関するものではないことの指摘も重要である。
要は、支援者は、当事者に関する情報をしっかりと把握し、出来るだけ、当事者の気持ちや声を尊重することである。
セクシャリティだけを取りだすのではなく、自閉症スペクトラム障害者の生活の中の行動を関連して位置づけることが要求される。
本書では、実際に役立つようなケーススタディが載っている。しかし、まだ、この問題は、端緒についたばかりで、実際に現場で働く支援者には、普段からセクシャリティの話題をすることすら少ないようで、今後の課題をなっている。
大切な事は、自閉症スペクトラム障害は、アスペルガー障害も含めて、極めて個人的な違いがみられるので、全てを対象とするマニュアルは存在しないということである。
今後の、自閉症者へのサポートと、当事者の学習面などに有意義な内容を含んだ本書である。