八ヶ岳に舞え、100万のオオムラサキ反町 昭子汐文社このアイテムの詳細を見る |
日本の国鳥は、トキかと思っていました。実際は、キジなんですね。最近は、毎年のように近くの河原に来て鳴いています。山の開発が進んで、ついに、河原に来て繁殖しようということになってしまったようです。トキも、昔は、全国どこでも見かけられた鳥だったそうです。この国は、生物の多様性を失いつつある国になったしまったようです。
国蝶は、オオムラサキなんですね。実物は見た事がありません。多摩動物園の昆虫園で、標本を見た事があるだけです。この蝶も、一昔前までは、日本中に見られたそうです。でも、よく手入れされたクヌギやナラ、エノキの林だけしか生きられないという。だから、荒れてしまった雑木林では、生息できない。そんな訳で、現在は、絶滅が心配される種となっている。
山梨県の八ヶ岳は、オオムラサキの全国一の生息地である。北杜市オオムラサキセンターは、飼育センターであり、そこで、毎年オオムラサキを育てている。いつかは、センターがある町全体が、オオムラサキが舞う里になることも目指している。
物語は、オオムラサキの生態をセンターでの生育の様子と、この蝶に思いを寄せる虫好きの少年コウタと妹のマキ、そして八ヶ岳にふもとに住むカナおばさんの事を描いた作品である。オオムラサキを見たかったが認知症になってしまったカナおばさんの母親への思いも、蝶に寄せる生きることの意味を問う気持ちと共に描かれている。
かつては、当たり前だった風景を失った今、その再生には大変な努力が必要となるのである。破壊の何と容易なことよ。
国蝶も、今、自然の中で生きづらくなっていることを知ってほしい。