トッペイのみんなちがってみんないい

透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

リアルな世界へ その1

2008-06-07 02:03:06 | 社会
 サークルの行き帰りに、中央線の踏切を越えていく。高架橋の工事がずっと続いている。交通渋滞の解消もその目的だが、自殺予防の意味もあるようだ。中央線は、長い区間にわたって、平地の上を線路が続く。そのため、飛び込み自殺が多い。

 高校の時、帰りの電車が人身事故で遅れた。なかなか出発しない電車の中で友人と立ちながら窓の外を見ていた。その時、向い側の止まっていた電車の下から、遺体を係の者が引き出すのを見てしまった。女性の下半身だった。上半身は無かった。人がいとも簡単に命を失い、物体と化すのを見てしまった。それを知らない乗客は、苛立って電車の出発を待っていた。

 朝、通勤時間帯にテレビの画面に、人身事故のため列車不通のテロップが流れる。またかと思って、それで終わり。電車の利用者は時間を心配し、後の人間は日常生活に戻っていく。現実感が無くなっている。毎日のように凶悪事件がニュースで流される。見る方の反応が段々と鈍くなってくる。またもや起こったのかと普通に思えてくる不気味さ。社会も段々と、リアル感を喪失していく。犯罪も、カミュが「異邦人」で描いたような動機の無いものが存在しても、不自然でないように感じてくる。バーチャルな世界に生きているような感覚。いつから、人々はこんな感覚を持つようになったのだろうか。

 以前に、いとうせいこう「ノーライフキング」を読んだ。映画も見た。そこでは、ゲームの世界が子供たちのリアルな世界を蝕んでゆく様子を描いている。子供達の間に広がる呪いの噂。現実の世界とバーチャルな世界との葛藤。その中のエピソードとして、根拠のないうわさが地域に広がってしまう事により、閉店を余儀なくされる同級生の家が描かれている。大人もまた噂をする。リアルさに裏打ちされない噂を。そのために転校していく同級生。まだ、携帯電話が普及していない時代の話だが、今日の社会を予言したような内容だった。テーマは、リアルな世界の回復だったのだろう。

 我々に今必要なのは、リアルな世界の再構築。命の重さの再認識。

 後藤和智『「若者論を疑え!』(宝島新書)では、若者だけでなく、モンスター・ペアレントやダメ教員と色々な人を名指しで謗る(そしる)ことで、得をしているのは権力や資本だと明快に論じている。こうしたバッシングが起こる要因に、「足りないところ、劣ったところ、気に入らないところを見つけるとあげつらう」傾向があるとして、 Nobody is perfect! (人間は誰もが完璧ではない!)と主張している。人が憎しみ合う事で、人に対する敬意が剥奪され、そのことにより、権力は人を従わせ、資本はこき使いやすくなるという。我々は、特別に悪いわけでもなく、良いわけでもない。ここでも、イメージではなく、事実を重ねて、言葉を尽くして、人間同士の関係を再構築していく必要性がある。「バベル」の世界からの解放は、リアルな世界の認識からなのだろうか。


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3 コメント

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リアルな世界にある虚構 (忠太)
2008-06-07 03:55:20
自殺予防に、学生のためこう語ってくれた先生がいる。

一人不心得者が列車に飛び込んでこうむる被害は、個人で賠償できないほどの金額だ、と。

子供心にそんな大金は用意できないよと、恐れ戦いた。

飛び込み自殺でも、下を歩いている人にぶち当たれば、ことは自分ひとりの問題にとどまらない・・・

遺族が損害賠償責任を負うのだと思うと居たたまれなくなる。

リアルな世界というのは、そういう風になんでもかんでも金に換算して、ことの是非を決する傾向がある。

そういう点、バーチャルな世界は救われている・・・、と思う。バーチャルの世界では、表現がすべてなのだもの。

トッペイさんとは正反対の視点だけれど、しかし、結論は同じだ。

僕も「イメージでなく、事実を重ねて、言葉を尽くして、人間関係を再構築していく必要性がある」と感じる。

インターネットのほうがリアルの世界より、それが実現可能と考えている分、僕は、バーチャルな世界に親近性があるということだろうか。
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土台 (トッペイ)
2008-06-07 18:28:20
 忠太さんは、リアルな世界にしっかりと足場を持っておられるので、バーチャルな世界にも希望を見出すことができるのだと思っています。
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リアルな世界に足場を持っている? (忠太)
2008-06-08 02:29:14

足場があるならば、それはそれでいいのですけど・・・

お互いがんばりましょうね。
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