トッペイのみんなちがってみんないい

透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

「ジョゼと虎と魚たち」

2008-06-14 00:41:22 | 映画
 「ジョゼと虎と魚たち」は、とても変わったそして切ない作品です。障害者と健常者の愛を題材にしています。おいらは、最初に映画の方をDVDで見ました。原作の小説は一昨日買って、読み終わったばかりです。

 原作は、田辺聖子さんの同名の短編小説です。
 ジョゼは、本当は山村クミ子なんですが、市役所からやってくる巡回婦人文庫で借りたフランソワーズ・サガンの小説の中のヒロインの名が気に入って、自分でそう呼んでいるんです。彼女は、一応「脳性まひ」という事で、ずっと下肢がマヒしています。母親は、彼女が赤ん坊の時に家を出ています。父親は、連れ子のある女性と結婚しますが、彼女は継母に煩わしがられて施設に入れられます。17の時に父方の祖母に引き取られますが、祖母は世間にジョゼを見せたくなく、散歩はいつも夜だけ、祖母が車椅子を押して出かけます。ある晩、祖母が散歩中にちょっと離れたすきに、誰かが車椅子を坂に押し出して逃げてしまいます。坂を滑る車椅子を体で受け止めてひっくり返った青年、大学生の恒夫との出会いでした。それを縁に、生活保護を受けているジョゼのぼろ屋に出入りするようになりました。祖母の作ってくれる質素な食事も恒夫には魅力でした。美味しかったし、金欠の時は大いに助かりました。ジョゼの世界は、幼い時の父親との思い出と、活字やテレビを通しての知識がごっちゃになったものでした。ジョゼは素直な性格ではありません。恒夫には高飛車な態度を取ります。興奮すると呼吸困難になります。
 恒夫は、決してジョゼの一家にかまけてたわけでもなく、大学生活を楽しんでいました。就職がなかなか決まらなくて、しばらくの間、ジョゼを訪れることはありませんでした。近郊の市役所に就職が決まって訪れると、引っ越していたんです。何でも祖母が死んで、ジョゼが一人でその先のアパートで暮らしているという事です。そして、前よりやつれたジョゼとの再会。そこで帰れ、帰るなのやり取りがあって、2人は結ばれるんです。そして、同棲するようになる。ジョゼは、好きな男が出来たら動物園で虎が見たかった。怖いけど、好きな男がそばにいれば大丈夫だと思っていた。恒夫は、車椅子を押して虎を見に行く。次に行きたかったのは、九州の島にある海底水族館。結婚もしていないのに、新婚旅行を気取った恒夫はレンタカーで水族館に向かいます。相変わらずのジョゼのわがままぶり。水族館を見てから、ホテルのベッドで寝ている二人。「(アタイたちは死んでいる。「死んだモン」になってる) 死んだモン、というのは屍体のことである。 魚のような恒夫とジョゼの姿に、ジョゼは深い満足のためいきを洩らす。恒夫はいつジョゼから去るか分からないが、傍にいる限りは幸福で、それでいいとジョゼは思う。」

 映画は、犬堂一心監督。恒夫には、妻夫木聡。ジョゼは池脇千鶴。
恒夫は雀荘でバイトをしている。そこで話題になっているのは、夜明けに出没する乳母車を押す怪しい老婆の事。乳母車の中は、金かヤクか。
 バイトの帰りに、坂を走りおりる乳母車に遭遇。中には包丁を振り回すジョゼがいた。料理はジョゼが作る。流し台で料理するために、台の上で作業する。終わると、台からどしんと飛び降りる。見ていて、びっくりする。
 恒夫は、いい加減な性格だ。大学には心惹かれる香苗がいる。ジョゼの家がバリアフリーの工事をする時に、福祉に興味のある香苗が見学にやってくる。押し入れに中で、二人の会話を聞いていたジョゼは、激しく怒る。祖母は、恒夫に二度と来ないように言う。
 祖母の死後、同棲する二人。水族館に行くが休館。その後、モーテルに入るが、そこで見たのは回り灯篭のような魚の回遊の照明。
 結婚まで考えられない恒夫との破局と別離。恒夫は、香苗と寄りを戻すが、いつまでもジョゼの事が忘れられない。香苗と歩いている時に、突然号泣する恒夫。
 一方ジョゼは、電動車椅子に乗って街を駆けていく。
 


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2 コメント

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Unknown (忠太)
2008-06-14 03:24:14
虎は、健康な肉体のシンボル。魚は、ジョゼの心なのでしょうね。水槽の中にいるような自分を重ね合わせている気がします。

「死んでいる」という感覚の中でしか、ジョゼは恒夫と出会えない・・・

それを”満足”という形で納得している姿に強い精神性を感じます。
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するどい分析ですね (トッペイ)
2008-06-15 11:50:58
 忠太さんの、読み解く力には、成程と感心してしまいます。
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