クリムトと猫ベレニーチェ カパッティ西村書店このアイテムの詳細を見る |
クリムトといえば、教科書でお目にかかることぐらいで、世紀末の画家としか認識がありませんでした。
以前、ベートーベンの第九についての放送で、クリムトの壁画が紹介されていたのが、印象に残っていました。
彼は、生涯独身で58歳で亡くなっているのですね。猫を8匹も飼っていたそうです。彼は、文章で、自分の芸術観や理論を書くことを嫌っていたようです。本書は、彼の傍にいつもいた猫の視点から、猫が話すという設定で描かれた本です。
美術史の学習にもなりますし、クリムトという人の人柄がよく伝わってきます。貧しい人へのあたたかな行為、最初は時代に受け入れられなかったのが、やがて、弟子たちが新しい時代を作って彼から離れていく時の寂寥感が、心の響いてきました。挿絵も、クリムトの画風の精神を良く表現されています。クリムトが、好んで作画に用いた金色も、絵本に用いられています。挿絵は、クリムトの精神を取り入れていても独自のものです。ページを広げる度に、絵画集を観ているような感じがしました。
終わりの方には、クリムトの作品の写真が載っているので、絵本の中の文章と挿絵と比べてみるのは楽しいものです。クリムト先生の、自分でデザインした服を着ている写真を観ていると、絵本に描かれていた人柄を感じ取ることが出来ました。絵画によって、病気や嫉妬や狂気と闘い、そうした怪物たちを打ち負かす正義の騎士だと信じていたというクリムトの生き方には、共感させられました。
絵本を通して、美術の世界に触れることが出来るんだと実感した作品でした。