トッペイのみんなちがってみんないい

透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

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ベネディクト16世に見る法王とは

2009-03-02 12:08:08 | 歴史
 今年は、ガリレオが自ら望遠鏡を制作して月の地形や木星の衛星など天体の観測を始めてから400年目になる。また、進化論を首唱したダーウィンの生誕200年の年になる。こうした科学の成果も、カトリック教会にとっては当初は認めることができないことであった。ガリレオは、天動説故に宗教裁判にかけられた。宗教上の教義も、やはり、歴史的な影響を強く受けているものだが、教義は不偏なものとして理解されてきた。しかし、歴史における様々な学問上の発見は、教義の矛盾をあぶりだした。キリスト教原理主義のように、あくまでも「伝統的」教義に固執するのか、それとも、時代にふさわしい教義を展開するのかは、宗教団体にとっては重要な問題点となっている。カトリック教会は、先日、初めてガリレオに対するミサを行い、ダーウィンの「種の起源」は問題がないととのコメントが出されている。

 しかし、歴史上犯した間違いも忘れてはならない。ナチス政権下、カトリック教会は戦争を止めることもできなかったし、ユダヤ人のホロコーストにも黙認と言われても仕方のない対応ととってしまった。しかし、伝統に固執する聖ピウス10世会(SSPⅩ)では、ナチスドイツのホロコーストを否定する司教がいる。イギリス人の
リチャード・ウィリアムソン氏らは、その言動によりカトリック教会を破門されていたが、現ローマ法王ベネディクト16世により破門を解除された。強制収容所解放64周年記念日のわずか数日前という時期のことである。ウィリアム司教は、スウェーデンのテレビ局で、ユダヤ人の大量虐殺に使われたガス室は存在しないと主張している。氏によれば、犠牲になったユダヤ人の数も、通説の600万人ではなく30万人以下だと主張している。

 ドイツで最大部数を誇るビルト紙の社説。「法王は重大な間違いを犯した。何よりも、法王がドイツ人だということが問題だ」「ベネディクト16世は、世界におけるドイツのイメージを著しく損ねている。600万人のユダヤ人を殺害したことを否定する発言をした人間は、ドイツでは訴追される」。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相も、法王の行動に対する批判を行い、バチカンに大してナチスドイツのホロコーストが否定できない事実であることを明らかにするように要求した。
 ベネディクト16世は法王就任以来、イスラム教徒や女性、ネイティブ・インディアン、ポーランド人、同性愛者、科学者について、不用意な問題発言を繰り返している。

 破門を解かれたウイリアム司教は、2月初めまで、アルゼンチンのブエノスアイレスの郊外にあるラレヤの神学校校長を務めていた。アルゼンチン内務省は、2月19日に声明を発表し、国際的非難を浴びているウィリアム氏に対し、10日以内に国外に退去しないと追放措置を取ると警告した。内務省声明は、ウィリアムソン司教の見解は、反ユダヤ主義でアルゼンチン社会の規範を犯すものだと言及している。なお、アルゼンチンはイスラエル本国を除いて、世界で最も多くのユダヤ人が住んでいる。

 ローマ法王庁の、ウイリアムソン司教に対する撤回命令に対しては、司教は証拠の再検討に時間がかかると回答している。

 カトリック教会内にも、解放の神学を説く南米の聖職者や、平和運動にかかわる聖職者がいる半面、ナチズムに寛容な勢力が存在するのも現実なのだろう。当然、信者の中にも、日本の2チャンネルの中のネット右翼的言動をとる者もいるのだろう。カトリック信者の作家曽野綾子氏の言動も看過できないものである。

寝る前に 「ルワンダでの裁判」

2009-03-02 01:52:02 | 日記
 アフリカの地図を見るたびに、国境線が人為的に引かれていることを意識してしまいます。帝国主義の時代の列強による植民地支配の名残です。その地域に住む部族や文化をまったく無視した線引きが、現在も続いている内戦の歴史的な原因の一つとなっています。アフリカにおける貧困、エイズ問題等も決してアフリカだけの問題ではなく、先進国を含む他の世界と強く結び付いています。
 死の商人にとっては、究極の儲けは戦争が実際に行われている地域への武器の売買です。直接ないし間接的に売られた武器が、子供兵士の手にもわたり、アフリカで多くの血が流されています。ソマリアの自衛隊派遣という危険な動きにも連動しています。死の商人たちは、大国の政治の世界ともつながっているといわれています。人間とは、何と恐ろしいことを平気ですることができるのかと、性悪説の立場への誘惑にかられます。でも、信じなくてはいけないのですね。

 先日の後藤謙二氏の『ルワンダの祈り』は、こうしたアフリカの事情を、ルワンダという国を通して教えてくれる書物でした。多くのツチ族の男性の命が奪われ、今、生き残った女性たちの頑張りで国の再建を目指しています。虐殺を行った多数派のフツ族に対しては、国の再建のために、個人の憎しみを超えて(実際は難しいことですが)寛容の精神で共に国造りをしています。もちろん、虐殺行為を行ったフツ族の人間に対しては裁判が行われています。しかし、先の事情から、刑法から死刑の規定が消されました。

 1994年の集団殺害の責任者を裁く裁判が、ルワンダ国際刑法廷(ICTR、本部タンザニア・アルーシャ)によって行われています。海外ニュースによると、2月27日に、従軍牧師のエマヌエル・ルクルド被告(50)に対して、性的暴行や神学校に保護を求めてきたツチ族の住民を殺害した容疑で、禁固25年の判決が言い渡されたそうです。キリストに仕える身でありながら、そうした非人道的の罪を犯した民族的虐殺行為の狂気を考えざるを得ませんでした。宗教もそうした狂気の前には無力であったというのは、悲しむべきことです。

ルワンダの祈り―内戦を生きのびた家族の物語
後藤 健二
汐文社

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