田淵行男さんの写真集「安曇野」のアルプス展望写真の影響で、四月に1週間ばかり大糸線界隈を歩き、残雪のアルプスを堪能しようと考えている。
目当ては、信濃大町近辺からの常念岳・鹿島槍ヶ岳、仁科三湖周囲の低山からの鹿島槍ヶ岳、白馬周辺からの白馬三山だが、何と言っても鹿島槍ヶ岳。深田久弥さんが大好きだった山。
深田さんの言葉を借りると、
「北槍と南槍の両峰がキットとせりあがっていて、その二つをつなぐ、やや傾いだ吊尾根、その品のいい美しさは見飽きることがない。」
ということだが、安曇野のから鹿島槍の双耳峰は、深田さんが言う「やや傾いだ吊尾根」にはみえないので、やや精彩に欠けると思った。
深田さんは同じ百名山の記述で、
「魅力は何と言っても両槍とその間の吊尾根の美しさだが、ことにこの山を真横から見るより、斜めか、あるいは縦に眺めた方が、いくらか冗漫に思われる左右の稜線が縮まって、いっそう引き締まった美しさになる。」
と語る。安曇野から眺めた鹿島槍は、山を真横から(東側から)見ていることになり、やはりやや引き締まりに欠けるという見方に同感できる。
昨日、たまたま昨年放映されたNHKBSPの「山女日記3・孤高の女・鹿島槍ヶ岳」をみていたら、鹿島槍を
種池小屋や冷池小屋方面の縦走路、つまり鹿島槍を南側の縦方向から眺めた映像が頻繁に映し出されており、思わず「これだ!」と快哉をあげた。
そうなんだ、オイラが二十歳の頃初めて歩いて鹿島槍ヶ岳に向かったコース、すなわち扇沢から柏原新道をたどって種池山荘にのぼり、そこから爺ヶ岳から冷池小屋にかけての縦走路から臨む鹿島槍ヶ岳こそ、深田さんもオイラも鹿島槍の美を感じずにはいられないビューポイントであることを確信した。
そんなことで、安曇野からの鹿島槍もいいが、やはりまたあそこに行かねばならない、とまた課題が増えた。
扇沢~種池小屋(テント泊)
種池小屋~冷池小屋(テント泊)
冷池小屋から鹿島槍往復(テント泊)
冷池小屋~種池小屋(テント泊)
種池小屋~扇沢
とのんびりとした計画を立てれば、好天にも出会え、星空写真もいけそうなので、一眼と三脚を担いでいこう。なお、この稜線からのビューポイントは鹿島槍ヶ岳だけではない、稜線から西方向に「剣岳」それも、あの池の平や仙人池から望む「裏剣」のアルペン的容姿に出会うことができる。晴れたら、剣に沈む夕日にも出会えるだろう。
ただ、テント場は20~30張とそれほど広くはなさそうだ。混雑だけは御免なので、季節を選びたい。
この山を思うと、百名山冒頭にもある三好達治さんの歌がいつも口に出る。
昼の雲
舟のさまして動かざる
鹿島槍てふ
藍の山かな
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田淵行男「安曇野」所収 鹿島槍(左の三つコブは爺ヶ岳)
以下NHKBSP「山女日記3」から