神なる冬

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ミステリー・ワンダー・ランドのセンス・オブ・ワンダー[25] インカの前に

2016-05-06 14:35:16 | ペルー

バスが着いたのは住宅地の中で高く白い塀に囲まれた場所、ラルコ博物館。塀の内部は花が咲き乱れる植物園のよう。ここはなんと私立の博物館なのだ。普通はツアーといえば国立博物館のような場所になるのだろうが、なぜかこっちが有名らしい。

ここではSさんが大演説。

インカばかりが有名になってしまったが、インカに繋がる歴史も学んで欲しい。観光客はインカ目当てにクスコに行く。クスコのガイドはインカのことを話すが、学術的に見ておかしなことばかり。

ペルーの文明はチチカカ湖畔から始まった。4つ部族がチチカカ湖畔で文明を起こし、そこからペルー全土に広がり、最終的にインカがこの地域を統一した。当初、信仰されていたのは、虹や雲といった水にまつわる自然のものだった。コンドル、ピューマ、ヘビの3つを信仰していたなどというのは後から考えられた偽りの情報だ。

インカの石組みも不思議なものではなく、岩の結晶の方向を把握して、水と火を使って亀裂を入れ、楔を使って割ったものだ。実際に再現もできていて、科学的に解明されている。いたずらに不思議さを煽ってはいけない。

インカなんて南米文明の最後の1ページ。インカよりも、ここに文明を築いたプレインカ文明の歴史を知るべき。ここにはそれらがたくさん置いてあるので、ぜひ、感じて、学んで欲しい。と。

言っていることはその通りで、多少アジテーション気味ではあるが非常に感銘を受けた。ただ、4部族がティワナク、モチェぐらいがレギュラーで、ワリ、インカ、ナスカが入れ違いに入っていたり、入っていなかったりするのはご愛嬌。

この辺のプレインカ時代の歴史を系統的に網羅した書物があれば読みたいのだけれど、どこかに無いだろうか。ウェブで調べても、断片的で矛盾する記載しか見当たらないし。

特に興味深かったのは「ピューマではない」という説。クスコでは、天空を司るコンドル、大地を司るピューマ、地底を司るヘビと教わった。しかし、ここで見る土偶のデザインでは、ネコ科の動物とみられる像に様々な模様がある。ピューマであれば模様が無いはずだが、豹のように斑点があったり、まるで三毛猫のような斑模様もある。

曰く、あれはピューマではなく、猫だ。それでは猫とは何か。プーノのガイドに教わっただろう。チチカカ湖はピューマの形をしている。それは逆だ。当初はチチカカ湖の形をしているネコ科の動物を水の化身として信仰していた。それがインカの時代にピューマに固定され、大地を司ると間違って伝えられたのだと。

同様に、コンドルは鳥であり、風である。ヘビはカエルなども含む動物で、湿った大地を示す。なるほど、展示物のモチーフにコンドルはほとんど無く、鳥と言えばカモだったり、フクロウだったり。ヘビもあるが、カエルもやたらと多い。

これはちょっとゾクゾクするミステリーかもしれない。

そんな話をしていると、時間も無くなったので後は駆け足で。

おもしろかったのはキープの話。キープは縄の結び目として表現される記述言語。インカ時代はキープの読み書きを学ぶための学校があったらしい。Sさん曰く、スペイン征服後にキープが読めるという現地人もいたが、言っていることがバラバラだったので読める人は誰も残っていなかったのだろうとのこと。

一通り主展示室を見ると、中庭に降りて別室へ。中に何があるかは言わないけれど、行けばわかるとのこと。入ってみると確かに、これは説明できない。あー、いわゆる「秘宝館」ですね。性に関するモチーフの土器や彫像がたくさん。もしかして有名なのはこのせいか。写真は動物のものだが、これの人間版がこれでもかというくらい大量に展示されている。もちろん無修正。

やっぱり、古代では子作りは死の危険が伴い、かつ神秘的な事象であり、子孫繁栄を願う気持ちは信仰と結びつき、こういう像が数多く残されたということなのか。あるいは、昔からふざけた奴が多かったのか。

オリャンタイタンボの売店で見たアレも、伝統的な工芸品だったのかもしれない。いや、さすがにそれは無いか。



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