神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] REDLINE

2010-10-26 23:51:58 | SF
『REDLINE』 牧野修 (ハヤカワ文庫 JA)




アメコミ風のキャラデザインに、主人公の声がキムタクという、誰が見るんだそんなのというアニメ『REDLINE』のノベライズ。とはいえ、著者はあの牧野修なので、いったいどこまでがアニメに忠実なものやら。

要はチキチキマシーン猛レース。無重力推進機構が実現した未来で、車輪で走るということにこだわる酔狂な奴らが最速を目指してかっ飛ぶ。しかも、ルールは車輪で走ることのみ。燃料もエンジンも武装ですらなんでもあり。

しかも、今回のレースの舞台は、こんなアホなレースに反対するロボット帝国の国内で、ロボワールドは威信にかけてもレースを妨害するために軍事攻撃をかけてきた。

敵が地雷に戦闘機に戦闘バイクに果ては“究極兵器”を投入する中、なんでもありのカオスなグレートレースは、愛と友情のクライマックスへとひた走る。

いやぁ、もうさすが牧野修。かわいげの全くないキャラデザに負けないくらいにキャラクターたちを動かし、さらにカオスな世界へと読者を引き込む。SF的な考察だの考証だのはすべてほっぽり出し、最後は生身で抱き合って飛べ!

そういえば、牧野修のデビュー作『王の眠る丘』もレース小説だったよ……。



[SF] ガンパレード・マーチ 逆襲の刻

2010-10-26 23:45:18 | SF
『ガンパレード・マーチ 逆襲の刻』 榊涼介 (電撃文庫)




気がつけば、PSソフト『高機動幻想ガンパレードマーチ』発売10周年は過ぎ去ってしまったが、これを機に、なのかどうか、PSP向けにゲームアーカイブスでの配信が始まり、往年の謎追いプレイヤーや、新規参入の萌えプレイヤーが増加中……というほどでもないか。

近隣の観測範囲では、新規参入組の反応は今ひとつといった感じ。当時は「世界の謎掲示板」を読んでるだけで一日つぶれたりしたもんですが。しかも、職場のデバッグルームでw

やっぱり、リアルタイム性というのが足りないんでしょうか。第5世界も時空の彼方へ飛び去って、情報が通じなくなってるからね。

そんな中でもまだまだ続く、榊版小説ガンパレ。ついに青森戦まで進んできた。

幻獣の青森侵攻といえば、ガンパレードオーケストラ白の章の舞台なわけだが、残念ながら石田小隊は登場せず。石田と同一存在っぽい一ノ瀬千翼長(「なに?」って言ってるw)とか、145センチの相馬くんと柔道少女のえっちゃんとかは登場するので、別ループの話になっているようだ。

これに負ければどころか、あと少し戦闘が続けば、経済の動脈である青函トンネルを抑えられた日本は破滅するという背水の陣である以上、あの能天気なヒロイン天国小隊を出すわけにはいかなかったということか。ということは、榊版小説ガンオケはあのまま放置状態にされるのか。それもまた残念だが……。

今回の目玉のひとつは、東京動乱に始まり、青森血戦の裏で進む政治劇。善行をはじめとする5121小隊の面々が日本の政治中枢に近づくにつれ、ただの舞台設定にすぎなかった大原首相をはじめとする政治家の面々の動向も物語の表面に浮かび上がってくる。

そして、榊版小説の大きな特徴である幻獣共生派ならぬ、幻獣和平派とのぎりぎりの外交。そして、来須の巨大幻獣への降下作戦発動(笑)

5121小隊の面々は壊れゆく精神として描かれているものの、スーパーマン的活躍は相変わらずなので、戦闘の悲惨さを伝える役目はおなじみ合田小隊やら、新キャラ有村伍長へと託される。

さらに、戦場の恐怖と緊張を和らげるために、意図的に展開されるラブコメ現象。極限状態での吊り橋効果によって生まれる今回のカップル、山川&姫野を襲う悲劇。いやいや、もっと死んでもおかしくないだろうとは思うんだが、九州からの生き残り組はしぶといのはある意味当たり前か。

カラスにネズミにモモンガに……最後の総力戦に、どこかでペンギンも戦っていたに違いない。

ガンパレ10周年記念にと取っておいての6冊一気読み。いやあ、もう、堪能しました。

次は順番通りであれば、ガンオケ緑の章の通り、幻獣の本土再上陸になるか。敵は朝鮮の王あたり?
そして、舞の「黒い月を消す」発言はガンオケ青の章へつながるのか。
さらには、茜作戦やら銀環作戦やらは発動するのか。
10年の刻を超えて、まだまだ終われないガンパレードマーチである。