神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[映画] ブラインドネス

2008-11-24 19:21:44 | 映画
ブラインドネス - goo 映画




世界中全員失明で、主人公だけが見えるって、トリフィドのパクリかよ。と思ったら、蝿の王かよ。一番怖いのは人間でした的な、どこかで見たストーリー。

伊勢谷友介と木村佳乃の演技は悪くないです。なんか、英語の中で唐突に日本語で、しかもフツーの日本語が出てくるのがおもしろかった。英語の台詞と明らかにトーンが違う。ラストで木村佳乃が「ホント!?」っていうシーンなんか、特に顕著。

日本映画のダイコンと、ハリウッド映画のダイコンが違うのがはっきりわかるという素晴らしい映画(笑)。

ところで、自分にとって、失明というのは一番のホラーなのです。全身麻痺で目だけ動かせるのと、全身健康で両目失明だったら、躊躇無く全身麻痺を選びます。

失明したら、映画もゲームも小説も全部ダメ。数少ないラジオドラマで我慢するなんて無理。仕事もできないし、これから全盲学校行って点字の勉強なんてまっぴらごめん。

それがこの映画ではどうだろう。見えなくなることの恐怖心はどれだけ描かれているのか。この展開ならば、はっきり言って、全盲じゃなくても、いわゆるパンデミックで十分じゃないのか?

“一番怖いのは人間”のアンチテーゼとしての“家族”も、これじゃ描ききれていなし、監督が出てきて意図を紹介しないと理解できない映画に思えます。

[SF] 時間封鎖

2008-11-24 18:35:46 | SF
『時間封鎖』 ロバート・チャールズ・ウィルスン (創元SF文庫)





下巻は表紙も帯もネタバレだろー!

2006年のヒューゴー賞長編部門受賞作。
ネビュラ賞の『探索者』と取り違えたんじゃないかと思うくらい、こちらの方が文学的。

原題の“Spin”は、地球が薄い暗黒膜で包まれるという現象。この膜の外では時間がとんでもなく速く流れるため、全天がめまぐるしく回転する。だから、“Spin”。

物語は、この“Spin”に様々な形で挑んでいく3人の男女を中心に描かれる。

“大きな家”の双子兄妹ジェイスンとダイアン、ハウスキーパーの息子タイラー。

タイラーは双子の親友、または義理の弟として育てられながらも、厳然とした差別扱いをされていた。それでも、天才的なジェイスンと、美しいダイアンを嫉むことなく、彼らを受け入れていた。

夜空から星が消えた日から、ジェイスンは“Spin”を解明し、覇権を握ろうとする。
ダイアンは宗教に逃避し、カルト教団へ傾倒していく。
そして、タイラーは……。

“Spin”というSFネタを除けば、まるで良質の私小説。特にタイラーのジェイスンへの気持ち、ダイアンへの気持ちが切なく、心に迫る。

章題に使われている「西暦4×109年」なんて、何かの叙述トリックかと思いきや、小説中では紛れも無い事実。この章でほのめかされる事象が、タイラーの回想として次々と明らかになっていく形式で物語は進む。あれ、なんだろうと思う引っ掛かりが、想像を超えた展開へと繋がっていくくだりは鳥肌ものである。

「大嘘は吐いても、小嘘は吐くな」と言ったのが誰か忘れたが、まさしくこの小説がそう。“Spin”という大嘘以外は、まったくといっても小嘘がない。これは荒唐無稽な物語を、地に足をつけた物語へと見せるために非常に重要なことなのだが、なかなかうまくいかないものだ。この小説は稀に見る小嘘の無い小説といえる。

結局、“Spin”の正体はジェイスンの口から簡単に説明されるだけで、全貌がつかめないのだが、なんと3部作として続くらしい。アメリカ人って、なんでこんなに3部作が好きなんだろう。日本でやったら、星雲賞にいつノミネートすればいいか困るだけじゃん。