2013 J2 第34節 コンサドーレ札幌 1-0 V・ファーレン長崎 @スカパー
先週、いきなり悲劇的なニュースが飛び込んできた。上里が右膝前十字靱帯断裂、全治8か月。
前節の栃木戦はフル出場していたのだが、その後の練習で痛めたというわけではなく、いつぞやの怪我が悪化して今頃発覚ということのようだ。まさか、ここで手術してしまうと選手が足りなくなるので、河合の復帰まで隠していたということでもないだろう。
その河合も肋骨を痛めた上に、この日はイエローカード累積で出場停止。ボランチは俺らの10番宮澤だけになってしまったのだが、今年はいまひとつの出来で、なかなか信頼できない。ボランチを組む相手はルーキー離れしたルーキーの深井。これまた怪我からの復帰直後で、良く間に合ってくれたものの、不安は残る。
そんな中、北海道どころか全国的な注目を浴びているのがベトナムの英雄、レ・コン・ビン。遂に右サイドで先発出場。これまでは短時間の途中出場のみだったので、先発でどこまでやれるのか、ベトナムの英雄がどれほどのものなのか見せてもらいたいところ。
もうひとつのサプライズはGK曳地。前節4失点とはいえ、GKの責任とは思えないので先発交代にはちょっとびっくり。曳地にとっては、これがラストチャンスかもしれないぐらいの扱いだろう。
コイントスに勝って、キャプテン内村は風下を選択。厚別の風は強めだが、神経質になるほどの影響は無さそう。後半にフェホを入れてロングボール勝負を狙っていたのかもしれない。
先発のレコンビンは噂とは違い、フォアチェックを積極的に仕掛けている。連携も悪くなく、守備面での不安は無い。しかし、今日もシャツはイン。
序盤はお互いにサイドを起点として攻撃を組み立ててきた。札幌攻撃陣は、フェホというターゲットがいないせいで、グラウンダーでボールをつないでいく戦法。いっぽうの長崎は、DFラインの裏へ抜ける長い縦パスを狙う感じ。
最初にゴールを奪ったのは札幌。砂川→内村→前田→上原→レコンビンのダイビングヘッド!
砂川から内村へサイドのオープンスペースへ出した長いボールからの完璧な崩しだったが、前田の浮き球のパスを上原がシュートミスして終わりかと思った。ボールはゴールラインと水平に飛んで逆サイドへ。しかし、その先にはレコンビンが飛び込んできた。上原、ナイスパス(笑)
しかし、このゴールで喜び過ぎたレコンビンはユニを脱いでサポ前へ。あえなくイエローカード。
その後も、まえしゅんの流し目フェイントからのドリブル突破など、コンサドーレが主導権を奪って観客を沸かせるプレーが続いたが、なんと大事件発生。レコンビンが相手のユニフォームを手で引っ張って転ばせてしまったとの判定でイエローカード二枚目。これでレコンビンが退場。
得点機会阻止にもあたらず、このプレーにイエローカードは厳しいような気もするが、TLではイエロー相当なプレーとのコメント多し。
一人少なくなったコンサドーレは内村が右サイドに入って、4-4-1というか4-5-0の布陣へ。そのままなんとか1-0で前半終了。
少ないチャンスでカウンターを狙う攻撃陣はともかく、DF陣にミスが多く、裏を取られ過ぎで怖い。オフサイドをアピールして手を挙げる暇があったら必死で追いかけろ。アピールするのは、直接プレーに関与していない選手に任せろ。
後半開始時に、前田に替えて荒野。内村がワントップに戻って4-4-1。守備では2ラインのブロックを作り、ワントップのカウンターに賭けるという寸法。
当然ながら、長崎に攻め込まれるシーンが多くなる。札幌はカウンター一本狙い。後半開始直後は荒野が勢い良くボールを追っていったが、本当に序盤だけ。
それでも、攻撃では惜しいシーンを何度も作る。荒野、内村、砂川が絡んでカウンター。攻撃時には4-2-3ぐらいのシステムに見える。気にしていた風の影響はほとんど見えない。
後半半分を過ぎたあたりで、深井に替えてフェホを投入。これは前を増やしたいのではなく、深井の膝の問題だったかもしれない。4-4-1の布陣は変わらず、中盤は右から内村、荒野、宮澤、砂川の並び。
このフェホが高い、速い、顔が怖いの3拍子で、長崎が必要以上に警戒してしまった気がする。DFがさらに下がって、数的優位を生かし切れない。
そして、守備固めで砂川に替えて櫛引。櫛引をどこに使うのかと思ったら、右サイドバック。日高が一列前。3バックかとも思ったが、相手ボールの時にはしっかりとした4枚2列のブロックを作っていたので、明らかな4-4-1。
櫛引は攻撃にもからむし、悪くない。一方、日高のSHは下がり過ぎて櫛引とポジションかぶる場合が多く、微妙。
最後はとにかく相手ボールになるたび、相手パスが前線の選手へ通るたび、手に汗握る、スリリングというよりはスリラーな感じの試合だった。
しかし、守り切った。なんとか勝った。痺れた。
相手を圧倒して攻め勝つ試合も気持ちいが、こうやって必死で守り切った試合の緊張感からの解放感も捨てがたい。これはただのサッカー好きには味わえない、応援するチームがあってこそ感じることができる感覚だと思う。
ヒーローインタビューは曳地。「今まで足を引っ張ることが多かったけど、みんなに助けられて」とか、「ビンの退場は自分のミスキックから」とか、苦労人な立場と優しい性格がわかる内容だった。曳地の目もウルウル。解説の曽田も「うるっときた」。
終わってみれば、シュート数は札幌 8-4 長崎で相手の2倍。前半4-2なので、一人少ない後半も同じ4-2。長崎は追加失点を恐れたのか、一人少なくなった札幌を攻め立てるだけの迫力が無かった。そこがチームとしての未熟さなのかもしれない。少なくとも、J2一年生のチームに、そう簡単にJ1に行かれてはたまらない。
これでホームは8試合負けなし。うち、7試合は完封勝ち。厚別神話は続くよどこまでも。
そして、初先発、初得点、初退場を決めたレ・コン・ビンの英雄っぷりはすごかった。途中交代で初出場のときは初アシストも決めたし、本田以上に“持っている男”かもしれない。この試合は、本国ベトナムでも、伝説の試合になるんじゃないか。
厚別神話の継続、そして、英雄レコンビン伝説の新たなるはじまり。今日みたいな気持ちを前面に押し出して気迫で守る試合ができれば、結果はついてくるでしょう。是非ともプレーオフ圏内に滑り込んで欲しい。
(J1だとそれだけじゃ足りないのは何度も思い知ってるけどな!)