明日元気になれ。―part2

毎日いろいろあるけれど、とりあえずご飯と酒がおいしけりゃ、
明日もなんとかなるんじゃないか?

突然消えた行きつけのお店

2010-12-13 12:06:02 | 美味しいもの
私が好きなお店の一つに、福島の「福の家」がある。
ちょっと無骨で職人肌の大将が作る割烹レベルの料理が、居酒屋価格で食べられる。
お店も気取りすぎず、かといって居酒屋風でもない、ちょうど中間の雰囲気が使いやすく、何度も通った。
日本酒も厳選されたものが5、6種類。
それもたっぷり1合で600円程度という良心的な価格も嬉しい。

そして、何より好きなのがここの女将さんで。
シュッとした美人なのに威勢がよく、気さくで、割とガンガンものを言う。
年に2、3回しか行かないが、すっかり顔馴染みになり、カウンターに座るとよく話しかけてくれた。

土曜日の夕方、仕事に行った夫から電話。
「なんかおいしいもの食べたい!」
「じゃあ、福の家行く?」
「うん!予約しといて!

ということで、急遽、外食が決まり、予約の電話を・・・

すると、

「現在使われておりません」

えっ!

もう一度かけたが、やっぱり同じ。
ネットで検索をかけて、もう一度調べたが、同じ電話番号だ。

結局つながらなかったのだが、心配だったので夫と「とりあえず行ってみよう」ということになった。
店に着くと、シャッターが下り、暖簾や電灯もなく・・・
明らかに閉店した様だった

とにかくショックでショックで・・・

自分のお気に入りの店がなくなったということもそうだけど、
ご夫婦でやっているお店が突然なくなるって・・・何かあったんだろうかと、心配で

10月半ばに酒のイベントで大月酒店に行った時、福の家さんからのお料理が酒の肴として出されていて、
「きっとここの酒屋さんからお酒を卸してるんやね」と夫と話していたことを思い出した。
だから、少なくとも10月までは普通に営業していたと思うのだ・・・

どうしたのかなぁ。
大月さんに聞いてみようかなぁ。
もし、どなたかご存知の方がいらっしゃれば、教えてください

そんなわけで、この日は行く店がなくなった。
忘年会シーズンの土曜の夜ということもあり、福島もかなりにぎわっていた。

福の家さんの斜め前に某焼鳥屋がある。
ここはミシュランの1つ星になったというお店で、焼鳥屋の熾烈な闘いがある福島において№1との噂。

予約ないと無理だろうと思いながらも、時間が8時前ということもあり、
入れ替わりでうまく入れるんじゃ・・・と、夫がドアを開けて聞いてみた。
すると、空いているとのこと。

え?そんな簡単に?

入ると、狭い店に3組分のスペースが残っていた。
それを見て、なんとなーく嫌な予感がよぎる。
「福の家」さん、やっぱり経営が苦しくなったんだろうか・・・

久しぶりに福島の駅に降りて、ここまで歩いてくる道のりでの店の数!
どんどん新しい店ができていた。
「福の家」の横も店が新しくなっていたし、正面はちょうど建築中。

ミシュランに載ったというこの店で、12月のこのシーズンにこの客数。
たぶん福島はもう店が飽和状態なんだろう・・・
そのうえ、デフレ時代。
いくら良心的な価格といっても、割烹の店構えのお店には入りにくかったのかもしれない。

数年前に、「福島はおいしい店が多い!」「キタの穴場!」「今、福島がアツイ!」と
本当においしいお店がいくつも評判になり、私もこの辺りには5、6軒、好きなお店があるのだが、
とにかくこんなにたくさん店数はなかった。

「とびきり安くて、ほどほどに旨い店」というのが世の中多すぎる。
今の時代にこういう店に打ち勝つのは、なかなか難しいんだろうなぁ。

ますます福の家さんのことが心配になりながらも、とりあえず焼鳥をいただく。
しかし・・・
メニューの値段を見てびっくり!
普通の焼鳥の1串が、250円~300円!

こんな高いの!

夫も同じことを思ったようで、二人とも注文が進まない。
せせり、三角、ねぎま、ささみのお造りなどを注文したが、なんとなく気持ちが重い。
焼鳥って、普段気軽に食べられるものというイメージがあって、それが1串120円~200円くらいなんだよなぁ。

とはいえ、いい素材を使って、すごく丁寧に焼いてくれているのは、食べた瞬間にわかった。
すごくおいしい。

たぶん、素材や技術から言えば、妥当な価格なんだろうなと思った。
それはお店がプライドをもってやっていることだし、
この価格でも評判の店で、ミシュランにまで載ってしまうのだから、たぶん正しい。

でも、私個人がリピートするかといえば、しない。
人に勧めるかといえば、積極的にはしない。

それは、なんというか、カテゴリーの問題が1つ。
先ほども書いたように、焼鳥は私にとって安く済ませたいときに食べるものだから。

それともう一つはコスパの問題。
通常の焼鳥の1.5~2倍の価格であるなら、1.5倍~2倍のおいしさがほしい。
それなら納得する。
でも、そこまではいかなかった。

私も夫も、yaoyaさんで食べさせてもらった焼鳥のおいしさを思い出していた。
口に入れた瞬間、これが焼鳥かと疑うほどの旨さ。
目を閉じ、しっかり味わって、幸せになっていくあの感じ。
衝撃的な旨さで、しばらく忘れることができなかった。

この値段だと、やっぱりそういうものを期待してしまう・・・

お酒はいろいろ良いものを置いていて、種類も多かった。
房嶋屋の純米吟醸をもらって飲む。
夫は王禄のにごり。
ワインもいろいろあるようだった。

私と夫は「失敗したな、この店」と思うと、早々に引き上げて2軒目を目指す。
この時も暗黙の了解で、ほとんど注文もせず、1時間そこそこで店を出た。
たいして食べてないのに、6000円近い金額を払い、なんとなく落ち込む二人・・・

おいしいんだけどね。ほんま
いつももっと高い料理も食べてるけどね。
でも、そういうことじゃないんだよなぁ。
なんか、店の雰囲気も、楽しくなかったんだよ・・・

気を取り直して、夫が前から行きたかったという、堂島にある「酒肴人」へ。
お料理屋さんでも居酒屋でもなく、BARだという。

確かに照明は落としてあって、広めのカウンターがあり、中にはお酒の瓶がズラリと。
店は結構広く、ダイニングバーみたいな感じ?
ちょっと高級感もあり、好きな雰囲気。
入るだけでテンションが上がる

日本酒がいろいろあるということだったので、「日本酒を・・・」と言うと、
ここの親方(親方と呼ばれている)が「どんな味がいいか、銘柄じゃなく好みをおっしゃってください」と。

えーっと、じゃあ、純米で、やや辛口で、飲み口はすっきりと、でも米の旨味はしっかりと残っているお酒。

そんなふうに言うと、「ちょうどいいのがあります」とお酒を注いでくれる。
・・・ほんまにちょうどいい!
米鶴やったかな?ラベルが限定っぽかった。

そして、付き出しの小鉢みたいなのがトレイにいっぱい並んだのを持ってきてくれて、好きなのを選ばせてくれた。
あー、こういうのも好き
お豆とひじきを炊いたのをもらった。

メニューを見ると、「BARです」というだけあって、「お料理」ではなく「酒の肴」!
やばい・・・
こういうのつまみながら、ひたすら好きな日本酒やウイスキーを飲むのが私の一番好きなスタイル。

夫がお造り食べたいというので、盛り合わせを注文。
旨口のお酒にお造りか・・・とちょっと不安に思っていたら、



全部、味付き!!

左から、つばす、鯖、ぶり、サーモン、鰆。
辛味大根を添えてあったり、柚子で和えていたり、炙ってすだちを搾ったり・・・

なるほどなぁ。
ちゃんと旨口の酒に合うように考えられている。

お造りの味自体は、まあ普通においしかった。
(とびきり旨いというわけではない)

とりあえず、メニューが飽きない!(笑)
注文するわけでなもないのに、何度もメニューを見てしまう。
「これ、どんな味やろ?」
「なんかおいしそうやな」
そういう食欲と想像力をかき立てるようなメニューなのだ。

親方も怖そうだけど、しゃべったら優しかった。
それに、他のスタッフの男性がすごく親切で、愛想がよくて、気持ちよく過ごすことができた。

おかげで高い焼鳥のことも忘れられ・・・
「また来ます」と告げて店を出たが、たぶん本当にまた行くと思う。
料理メニューは多いが、ガッツリ食事をするよりも、2軒目にBAR使いするのが良さそう。
だって、高いもん・・・
日本酒は値段がなかったが、たぶん120mlで1000円くらいしてるが、
BAR価格やと思えば納得できる。

1串250円の焼鳥でびびるのに、なんやろね、これって。
やっぱりお店って総合だから。相性もあるし。
安ければいい、おいしいものが食べられたらいい、というわけでもないんやなぁ。
お金払って店を出た時に
「あれでこの値段か・・・なんか損した気分」と思うか、
「高かったけど、満足!」と思うか。
雰囲気とか、空気とか、そういうのも大事やと思う。

しかし、楽しかったのだけど、やっぱり心のどこかで福の家さんのことがひっかかっていた。
なんか淋しいなぁ・・・
女将さん、元気でいてくれるといいのだけど

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (元 福の家 店主です)
2011-09-06 00:57:48
突然の閉店で申し訳ありませんでした、あれから9ケ月が過ぎ、今までネット検索も一切しておりませんでしたが本日ふと「もお良い頃だろお」といたずらに検索をしてみてこのブログをみつけました。ちなみに私も妻も至って健康に過ごしております。閉店に際しては常連のお客様をはじめ対外的に報告をしておらず個人的に仲の良かったもの5人位にしか伝えておりませんでした。閉店理由としましては売上不振ではなく自分の理想とする料理を作る為の環境が、あの規模の店では整えられないこと、福島という周りの環境の陳腐化に耐えがたきものがあること等々、話し出すと限がないのですが早い話、本当に自分の理想とする店を造るべく一度リセットさせて頂いた次第なのです。ストイックなまでに理想を追い求める求道者的職人としての自分と現実問題としての飲食店経営というものを両立させなければなりません、それがあの店では不可能だと早い段階で気づいておりました。ですのでご心配をおかけしましたことお詫び申しあげますと共にご心配なさらないで下さい。今はただ充電中です、世の中の動きも慎重に見極めていかなければなりません。ただ何時とは言えませんがまた違った形で復活させて頂きます。どうかお元気でお過ごしください。
返信する
ありがとうございました (かおり)
2011-09-06 13:35:51
>元福の家ご主人様

まずは、ご丁寧なコメントをありがとうございます。
また、勝手な憶測を書いてしまい、不愉快な想いをさせてしまっていたら申し訳ありません。

シマオでよく予約させてもらっていました。
女将さんに聞いていただければ、憶えてもらっているかもしれません。

本当に好きなお店だったので、とにかく心配で淋しくて残念で・・・
お元気でいらっしゃるとのこと、また経営不振などではないということで(失礼しました)、ひとまず安心いたしました。
お知らせいただき、本当にありがとうございます。

「自分の理想とする料理を作れる環境」を求めてリセットされたとのこと。
なんとなくですが、わかるような気がいたしました。。。
いつも職人気質で丁寧なお料理を作られる方だと思っておりましたので・・・。

理想の環境が整い、またお料理を頂ける日が来ることを楽しみにしております。
奥様とお二人、どうぞお元気でお過ごし下さいますように。
返信する
はじめまして (@み)
2011-10-19 13:14:47
突然の書き込みすみません。
偶然たどり着きました。

実は私も福の家さんが大のお気に入りで遠方にもかかわらずわざわざ足を運ぶほどでした。
女将さんも年に数回しか顔を出さない私のことをしっかり覚えていてくださっていつもカウンターで気持ちよく過ごしておりました。

なので突然の閉店でがっかりしたのと共に心配しておりました。

ここで店主様のコメントを見て安心しましたし、また理想とされるお店を再開されました折には是非お伺いしたいと思います。
再開の情報があればまたお知らせください。


酒肴人も凄く良さそうなお店ですね!
一度行ってみます!

貴重な情報ありがとうございました。

返信する
よかったです (かおり)
2011-10-19 18:07:27
はじめまして。
やっぱりファンは多いですよね。
いつかどこかで再開していただけるとうれしいのですが……
とても素敵なお店でしたよね。

思わぬ情報提供ができてよかったです。
何か情報が入ればきっとここで書き込みますので、
また思い出した時には覗いてみてください。
返信する