連休だというのに、節約のため旅行にも行けない。
そのうえ、夫は連休も半分は仕事
がっかりして腐っていたら、夫が1日だけ好きなところに遊びに連れて行ってくれるという。
うれしい~
というわけで、19日(土)は奈良へ行ってきた。
私は大学4年間、奈良に通っていたのだけど、
あまりに大学生活が面白くなかったので、奈良そのものを好きでなくなってしまっていた。
でも、そんな私の心を少しほぐしてくれたのが、ライター友達のアンデルさん。
奈良が大好きという彼女が、今年6月にも誘ってくれ、一緒に楽しい1日を過ごした。
私も彼女もお寺が大好き。
6月は、位置的には奈良に近い京都府内にある、浄瑠璃寺へ。
ここは私の好きなお寺ベスト3に入るところで、どうしても彼女を連れて行きたかったのだ。
その後は、ならまちを歩いたり、奈良ホテルのカフェバーで紅茶を飲んだり、
アンティーク雑貨屋さんを見たり、美味しいお料理とお酒を楽しんだりと、
とても楽しい1日を過ごした。
この時、彼女に紹介してもらった「月吠」というお店。
ここで食べた「カジキマグロの自家製燻製」がどうしても忘れられず、
今回、夫を連れて行ってあげようと思ったのだった。
今回の奈良行きの目的はもう一つ。
西大寺の善財童子さまを拝観すること。
小学5年の時、初めて読んだ灰谷健次郎氏の『兎の眼』という小説。
大人になった今でも読み返し、そのたびに感動で涙があふれる本だが、
その中に、この西大寺の善財童子像のことが出てくるシーンがある。
主人公である小谷先生。
まだ大学を出たての若い女の先生で、初めて受け持った小1の学級にてこずる毎日。
ゴミ処理所から通う子供たちが何人かいるこの学校では、いろいろな問題が起きるのだ。
中でも、ハエを飼っている鉄三という少年に振り回される小谷先生。
毎日生徒のことばかり考えているうちに、結婚したばかりの夫とまで心が離れていく。
疲れ果てた小谷先生が、ふと足を運んだのが、西大寺だった。
そこで、善財童子さまの像を見る。
あいかわらず善財童子は美しい眼をしていた。
ひとの眼というより、兎の眼だった。
それはいのりをこめたように、ものを思うかのように、
静かな光をたたえてやさしかった。
―灰谷健次郎『兎の眼』より―
いつか、私もこの像を見たい。善財童子さまにお会いしたい……
そう思って月日は流れ、奈良嫌いになり、足を運ぶことはなかった。
でも、少し奈良の印象がよくなった今、「そうだ、行ってみよう」と思いついた。
長年の想いを果たしに……。
大学の頃、毎日通過していた大和西大寺で降り、3分も歩けばすぐに西大寺が見えてくる。
一歩中へ入るだけで、街の喧騒から離れる。
土塀が時の流れを物語り、空気がしっとりとしてくる。
あ、ここ好きだな、と思った。
とても良い“気”が充満しているのがわかった。
四王堂、本堂、愛染堂の共通券を購入し、まずは四王堂へ。
早く本堂の善財童子さまを見たかったのだが、中へ入るとそんな気持ちはおさまってしまった。
間近で見られる十一面観音立像や、四天王像の下で踏まれる邪鬼。
これまでもいろいろ仏像を見てきたけれど、なぜか心惹かれた。
十一面観音は変わっていて、長谷寺式とのこと。
錫杖と華瓶を持っているのだが、華瓶の中の蓮が咲いていた。(普通はつぼみ)
四天王像はほとんどが焼け落ち、再興したものだが、邪鬼だけは焼け残り、当時のままとのこと。
非常に肉感のある、リアルな邪鬼だった。
見ていると、胸の奥がぞわぞわする。
十分に堪能し、お参りした後、本堂へ。
ようやくお会いできた……
善財童子さまは、本当に美しい眼をしていらっしゃった。
眼だけがまるで生きているようで、角度によっては悲しみを湛えているようにも、
また、祈りを捧げているようにも、誰かを想っているようにも見えた。
とても可愛らしく、想っていたより小さかった。
仏像を見ると、いつもそれを作った人へ想いを馳せてしまう。
いくつものドラマが自分の中で流れていく。
とても穏やかで静かな時間を過ごした。
やはり、お寺というのはこうであってほしい。
「和んだね……」「癒されたね……」と、夫と二人、西大寺を後にした。
その後、せっかくなので久しぶりに東大寺へ。
西の西大寺、東の東大寺、両方をまわろうということになったのだ。
東大寺は相変わらずの人ごみにゲンナリ……
しかし、南大門と金剛力士像にはいつも圧倒される。
すごいよなぁ……。
大仏も含め、とにかくでかい。
政治と仏教の結びつきや、権力の誇示をこんなに感じる寺はない。
とにかく人が多かったので、さっと一回りしてならまちへ。
夫が「春鹿へ行きたい」というので、連れて行った。
春鹿は、奈良の酒蔵さん。
前に来た時も試飲させてもらったのだけど、その時はちょっと対応が微妙だった。
でも、今回はすごく感じのいい女性が対応してくれて、
楽しい試飲のときを過ごすことができた。
400円でお猪口を買うと、そこに5種類のお酒を注いでくれる。
おまけでもう1種類いただき、日本酒を堪能した。
その後は、猿沢池へ。
大学時代、よくこの池のベンチで、五重塔と亀を見ながら、ぼんやりと過ごしていた。
大学卒業したらどうしようかなぁ……
作家になれなかったら、尼になるしかないか……
そんなことを考えながら
その後、夕方になったので、「月吠」へ。
6月に来た時、ここで出されたお料理がとても口に合った。
どうしても食べたかったカジキマグロの自家製燻製もメニューにあった!
↑これ。
やっぱりうま~い
燻製って言っても、硬くてスモーキーな感じじゃなくて、
お刺身にほんのりチップの香りをつけているようなもの。
あかん。やられる。
夫も大絶賛。「うまい~
」
↑鮪、鰆、帆立の西京焼き盛り合わせ。
どれも美味しかったけど、やっぱり鰆が一番西京焼きには合うように思う。
↑本日一番のヒット作。
ホッケの燻製。
いやはや・・・
燻製にするなんて邪道じゃないかと思っていたら、とんでもない!
味わいが深く、甘みとスモーキーな香りとが混じり合って、ただ恍惚となるのみ!
これに、日本酒。
もう、くう~っとね
ほんま、たまりませんわ。
↑あとは、酒のアテにお惣菜の盛り合わせを頼んだり。(隣の人の食べているのを見て、「あれください」と言ってしまった)
↑鶏むね肉の黒ゴマを絡めて揚げたもの。
これも香ばしくて美味しかった!
そして、これだ!
奈良漬3種盛り。
胡瓜、西瓜、瓜。
4年ものや10年ものの古漬けで、これが旨いんだ。
私は奈良漬って食べられなかったんだけど、前回ここでこれを食べて、「これなら食べられる!」と思った。
いやいや……、やっぱり旨いものは「好み」を超える。
お酒も二人で3合飲んで、おなかいっぱい。
とても幸せな気持ちでお店を出た。
このお店を教えてくれたアンデルさんに感謝!
それにしても、久しぶりのデート、楽しかったな