昨日は塾で生徒とケンカした。
叱るとか、注意するとかでなく、もう単なるケンカ。
相手はちょっと問題のある中3の男の子で、
授業態度もあまりよくはないし、成績もうちの塾でワースト3に入る。
きっかけはささいなことで、
7時56分から8時06分まで10分間休憩と言ったのに、
7分になってやっと戻ってきて、「遅いよー」と言ったら、
「10分って言ったやろ!まだ7分やんけ!」と怒り出したのだ。
「10分休憩」を「10分まで休憩」と聞き間違えたのかな、と思った。
それならそれで別にいい。
「いや、6分までって言ったよ。もういいから、早く座り」
と普通に促したが、いつまでも前の時計の前から動かず、
「10分ちゃうの? 10分やろ?」と繰り返して、明らかに授業の妨害をしている。
そうされると、ほんまは知ってたんちゃうん?という疑問もわいてくるし、
もうどっちでもいいけど、早く座れ!という気持ちにもなる。
周りの子も「せんせーは6分までって言ったで」と言って、みんな座って待っている。
「えー、10分ちゃうの?」とほんまにしつこいので(私はイラチだ)、
「いいからもう早く座りーや!あんたのせいでまた1分過ぎたやん!」
と言うと、急にすねだした。
この子は人に攻撃されることに異常なほどの反抗心を見せる。
それは前々から、他の講師とのやりとりを見ていても知っていて、
自分が間違っていようが、誰かに何かを「注意される」ということ自体に
異常なまでの「拒絶」を見せ、反撃してくる。
座ったものの、そこから私と言い合いが始まった。
「なんやねん、1分くらいで!」
「別に1分のことを言ってるんじゃないねん。あんたがいつまでも座らへんからやろ!」
「10分までと思ったんやろが!」
「だから、それは別にいいって言ったやろ!その後にしつこいねん」
「そういう言い方がいややねん」
「あたしも、あんたのそういう言い方がいややねん!」
「キモい」
「あんたのほうがキモいんじゃ!」
・・・・
と、まるで小学生のケンカである。
フォローの先生、おろおろ。
生徒は半分ニヤニヤ、半分ハラハラの顔で私たちを見つめている。
いつまでも埒があかないような気がしたので、
「わかった。もういいから、授業しよ」
と促すと、
「なんや、そんなふうに突然切って終わりですか!」
としつこい。
「じゃあ、どうしたいねん?!どうしたらいいの?私が何か間違ってたか?」
と言うと、
「言い方が嫌やってん!」と言う。
それを聞いて、一瞬にして、私のほうが冷静になった。
「わかった。ごめん。言い方悪かったな。もう授業していい?」
私が言って、授業を始めると、まだしつこくぶつぶつ言っている。
「しつこいねん!」
思わず、また怒鳴ってしまう……。
でも、一瞬戻った冷静さがまだ続いていて、息を吸い込んで優しく言った。
「遅れたのはあんたが悪いけど、私は言い方が悪かったな。ごめんな。気をつけるね。だから、機嫌直して授業やろな」
そして、なんでもないように授業を始めた。
目の端でその子をとらえたら、なぜかしゅんとしていた。
もう授業を放棄して真面目にやらないんじゃないかと思って覚悟していたんだけど、なぜか黙々と問題を解いて、こちらの質問にもちゃんと答えた。
反抗的な姿はなかった。
あれ?
帰りに、いつものように普通に、
「今日のプリントいる?家でやる?」と聞くと(最近、家で復習したいからプリント欲しいと言ってくるので)、
「あ、うん。もらう」と、普通にもらって帰っていった。
なんか、拍子抜け。
ほんまにただの子供のケンカか……?
また大人げないことしてもーたな……と思いつつも、
これでよかったんだという気持ちにもなる。
この子は、ワケあってお母さんと一緒に暮らしていない。
そのためか、情緒がものすごく不安定だ。
すぐにすねる、怒る、怒鳴る、人の話が聞けない、弱いものイジメをする、集中力がない……。
勉強に関しても、頭が悪いわけじゃないと思うのだが、落ち着いて基礎を固めていくということができない。
それは、小学校の基本的なことができていないからだ。
(たし算、ひき算、かけ算、わり算、分数、漢字等)
人からの攻撃を攻撃で防御しようとするあの姿は前から印象的で、
むかつくというよりは、なんだか痛々しく思っていた。
どうしてちょっとしたことで、「自分が否定された」と過剰反応を示すんだろうかと。
いつもこうやって、そのたびにいろんな人とやりあう。
学校でも先生に怒られることばかりなんだろうな……。
機嫌よくしゃべってるときは、かわいいし、面白い子なのに。
「言い方が嫌やねん」
というのを聞いて、この子には「善か悪か」じゃないんだ、と思った。
いつも他の講師にでも注意されるとこう言う。
「何?今の言い方?」とか。
人から非難される、怒られる、
その行為自体が気に食わないのだなぁ。
そう理解した瞬間、私も冷静になった。
自分が悪かったことを理解させる必要はないんだろう、と。
たぶん、知ってるから。
私が優しく言ってあげれば、それでよかったんだろうな。
キレやすいし、口が悪いからな、私は。
それで謝った。
そしたら、意外にも大人しくなった。
私があんなに怒っていたのに、急に優しくなって謝ってきて、
どう向き合えばいいのかわからなくなったのか、
それとも謝ったことに満足したのか、
それはよくわからない。
だけど、後に引きずらず帰って行ったのが意外だった。
ただ、もう怒ってもいなかったが、ご機嫌ではなく、
しゅんとして、へこんでいた。
それも意外だった。
自分で自分をうまくコントロールできない子供たちに出会うたびに、
なんだか淋しい気持ちになる。
悪い子じゃないのになぁ、と。
そして、こんなキレやすい講師に当たって、お気の毒。
一緒に組んでいる英語の先生がとってもいい人なので、まあ、いいか。
自己中心の生徒って多いのだが、
私は絶対に自己ちゅーを認めない。
なぜなら、私が自己ちゅーだからだ
「あの先生、自己ちゅー過ぎやろ……」
と生徒に認めさせれば、授業はとってもやりやすい(笑)。
生徒に好かれようという気もさらさらない。
ただ、自分が楽しく授業ができて、
みんなが機嫌よく授業受けて、ちょっとだけ賢くなってくれたら、
それで私は満足なのだ。
10求めてくる生徒に10返す自信はあるけど、
1しか求めてこない生徒に、善意で10を与えるような講師ではない。
だから、本当はこういう人間は、ものを教えちゃいけないのかもしれないな。
とりあえず、ケンカはもうやめなあかんね……
もういい大人なんやからさ……
何年やっても相変わらず。
ふぅ、また親に謝りにいかなあかんかと思ったよ……