明日元気になれ。―part2

毎日いろいろあるけれど、とりあえずご飯と酒がおいしけりゃ、
明日もなんとかなるんじゃないか?

夢見通りに佇んで。

2008-10-04 00:22:09 | 想い
今日、塾で、授業態度が悪い生徒を叱ることにした。
居残りさせて、堀先生も入れて4人の講師で囲んで。

ひのきにはやんちゃな子はいるが、
この子はどちらかというとそういうのではなくて、
正直、もう少しタチ悪い
同じ学校の子に聞くと、学校では大人しいらしいが、
塾では人がかわったようにはしゃぎ、偉そうにし、
自分勝手にふるまう。

「もっと勉強したい」と積極的になっている生徒もいるので、
授業の邪魔ばかりするこの子を、今のうちに厳しく躾けようという想いで、今日は残した。

4人の講師に囲まれ、最初にこの子が言ったのが、
「わかってるねん」
だった。
まだこちらは何も言ってないのに……。

完全に目が泳いでいて、あせっている。
泣くかな?と思った。
でも、泣きはしなかった。
ただ、「わかってるねん」と言うのを聞いて、
なんだかせつなくなってしまった。

たぶん、わかってるんだろうな……と思って。

わかってるんだけど、あんなふうにしかふるまえない。
自分をうまく表現できない。
すれた態度をとることでしか、人の注目を集められない。

前々から気付いてはいたけれど、「わかってるねん」という
言葉を聞いたら、なんだか不憫で仕方がなくなった。
大人ですら、自己表現が下手な人はたくさんいる。
ましてや14、15歳では、難しいんだろうな……。

ただ、その不器用さに同情して許してやることが教育ではない。
本気で向き合って、「あんたのこと考えてるよ!」と
わかってもらうことしかできないけど、
少しでも「自分のまま」で、素直に生きたほうが
自分自身も楽になれるし、人にも愛されるってことを
知ってほしいなぁと思った。

次からちゃんとやる、と約束させて帰らせた。

ふぅ。
子供と付き合うのは大変だ。
今の3年生は本当に問題児が多いから、毎回いろんなことが起きる。
落書き、カギぶっ壊し事件、いたずら(盗み)、うるさすぎ……。
いろいろあって大変

でも、まあ、その都度、話をしていくしかない。
反対に「やる気ありすぎ」の生徒もいて、
このやる気にどうやって応えていくかも一つの課題。
こういう課題は向き合っていて楽しいけどね。

今日は久しぶりに宮本輝の『夢見通りの人々』を読んだ。
新しく読む本がなくなったので(いつも鞄に本が入ってないと落ち着かない)
仕方なく、家にある本を再読することに。
選んだのがこれだった。

15年ぶりくらいに読んだけど、やっぱり初期の宮本輝っていいなぁ
特にこの夢見通り・・・は、ベスト3に入る好きな本。

人間の弱さやみずぼらしさ、ズルさ、不器用さなど、陰の部分を描いているのに、
なぜか宮本輝の小説に出てくる人々は、皆いとおしい。
この「いとおしさ」が作品の魅力でもある。

私は自分が文章を書くときでも、リズムを大切にする。
自分が「好きなリズム」というのがあって。
宮本輝の文章は、リズムが自分の理想通りだから、読んでいて心地良い。
難しい言葉を使わず、できるだけ簡単に、だけど、1行1行に熱がこもってる。
それを私は感じる。

久しぶりに読んで、昔読んだ時と同じ感想をもった。
「こんな小説を自分も書きたかった」

以前、夫にこの小説を貸したとき、夢中になって読みきった彼が言った言葉はこうだった。
「これは、俺が書きたかった小説や

自分と全く同じ感性に、思わず苦笑い。
「え?!そうなの?!」という驚きと、
「やっぱりな……」という納得の想いとで。

昔、お互いの書いた小説を交換したとき、
お互いが「これは自分が書いたものでは?」と疑った。
そういう感性って、言葉には表しにくいものだけど、
自分の書いた「小説」というものを通して、実感した。
感性が似てるってのは、こういうことなのか、と。

今、私は毎日、不器用な子供たちと触れ合って、
いろんな仕事をしている人を見て、
たくさんの想いと生きる様を書いているのだから、
そういうのをまた小説にできたらいいのになぁと、久しぶりに思った。

何か爆発的に自分の中から「書きたい」という想いがあふれてきたらいいのにと想うのだけど、心は静まり返っている。

少しだけ懐かしい気分で、あの頃の自分を振り返る。
いくらでも物語を生み出せた自分は、もういないのかな。

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2 コメント

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Unknown (ハラショー)
2008-10-07 14:53:16
宮本輝氏の小説、
私も好きです。

全て2回ずつ読破してます。

登場人物が総じて憎めないというか
なんというか・・・。

戦後の大阪のゴタゴタっとした感じや
哀しい描写、ストーリーも
全てがいろんな形で心に響きます。

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はじめまして! (かおり)
2008-10-07 19:17:14
こんばんは。
コメントありがとうございます。

私はあまり再読はしないタイプなのですが、
今回「夢見・・・」を再読してまた新たな感動があったので、今度は「優駿」を再読しようかと思っています。

戦後の大阪の・・・
いいですよね^^
私も大好きです。
「泥の河」や「流転の海」などがまさにそんな感じでしょうか。
あの世界にぐんぐん引き込まれます。
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