三人のセクトの仲間と順に会い、京子がそのうちの二人とも関係があったことが分かった。上村に言わせると、高校の後輩が“僕の彼女です”と三枝のアパートに連れてきた京子を、彼らが泊まったその夜に三枝が自分のものにしてしまったことから、すべては始まったという。
京子は、異変に気付いた恋人に、翌朝小さな鋭い声で詰問され、なじられた。泥酔し眠りこけていた彼と、彼がそばにいることを巧みに利用した三枝の行為の理不尽さを京子は強調したが、彼は聞く耳を持たなかった。「すごく大事にしていたのに。ずっと守ってあげようと思ってたのに」と彼が涙を流すのを見て、京子は別れることになると覚悟を決めたという。
上村は、「気持の行き場がなくなったんちゃうかなあ、京子」と同情を示しながらも、彼の部屋を訪れた京子と抱き合ったことには悔いを表さなかった。
「求められたわけちゃうし、求めたわけでもないんやけど、なんやお互いふっと吸い寄せられるような時ってあるやろう」と照れ臭そうに目を伏せただけだった。
「京子はだらしない女やない。…そう思うけどなあ」
上村が言い訳とも慰めともつかない言葉を口にした時、桑原君の中で京子への愛しさが募った。“彼女はいつも、男に愛されたくて一生懸命なだけや!”と言いたかったが、口にはしなかった。そして、改めて決心した。
「僕、京子と同棲してみようかな、思うてるんやけど」と上村に決意を伝えると、上村は「京子にとってはええことやない?」としたり顔を見せた後、「ちょっと言いにくいことやけど、知っておいた方がええんちゃう?ってことがあるんやけど…」と声を潜めた。
「なんやの、それ?聞かせて」
平静を装い促すと、
「京子が身体を張って黒ヘルのリクルーターをやってるんやないか、いう噂があるんやけど、耳に入ってへん?」
「いいや。聞いたことないなあ」
「三枝さんが手出した女の子、意外と黒ヘルに入ってるやろ?それ知ってる?」
「それも聞いたことないなあ」
「今は3~4人しかいてへんけどな。その子たちのことがしたことも全部、京子一人に集約されてるのかもしれへんのやけどな」
「自分にとってまずい状況になると、逃げる奴多いからなあ。残ってる人間がしたことになるわなあ。卑怯やけどしゃあないなあ。……もうええ!わかった!気にせんとくわ。ありがとう。後から耳に入るより、君から先に聞かせてもらってよかったわ」
桑原君は、上村に感謝して別れた。
が、京子の元へと向かいながら、三枝を初めとするセクトの仲間に対する怒りが込み上げてくるのを抑えることはできなかった。
明日(7月25日)、つづきを更新します。
つづきをお楽しみに~~。 Kakky(柿本)
第一章“親父への旅”を最初から読んでみたい方は、コチラへ。
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第二章“とっちゃんの宵山” を最初から読んでみたい方は、コチラへ。
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第三章“石ころと流れ星” を最初から読んでみたい方は、コチラへ。
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