気持ちが安定していないと活字を追うことなんてできません。
本どころか、映像も音楽も 夢の世界に誘ってくれるあのビーズでさえ脳が拒否する。
読みかけの本が部屋中に散乱する中で
久々に、しかも一気に読み終えたのがこれ。
南木佳士 著 山行記。
以前、山雑誌に掲載されてた時から気になっていたのですが
この春、それに書き下ろし作品を加えて一冊の本になったのを知りすぐに購入しました。
医師として難民医療チームに加わったり、芥川賞を受賞する作家でもある著者が、
その後、死まで考えるほど精神を病みながらも
ゆっくり時間をかけて自然と向き合い、山を歩くことで 「生」を実感していく運びに
自分も乗っかってみたくなって読みました。
知ってる山(ましてや実際に歩いた山)が出てくるだけで五感が反応し
分厚い靴底を通して伝わる土や石コロの感触や
山の中でしか味わえない風、匂い、音、
それから急登に喘ぎながら流れる汗までもが
なんだかひどく懐かしく思い出されて
私もうんと元気にさせてもらいました。
実際にはもう前みたいには歩けないかもしれないけれど
それでもやっぱりもう一度 むせるほどの木々に包まれて深呼吸がしたい・・。
読みたい作家さんがいっぱいでなかなか消化しきれないでいますが
南木氏のほかの作品もいつか絶対に手にしたいです。
皆、いろんなものにぶつかって 乗り越えて。
それが人生なんだ、って当たり前の事を再確認しました。
やっぱり 「辛いのは自分だけじゃない」 って思える他人の実例を知ることは大きい。
悲しみや苦しみは比較できるものじゃないし
それを知ったからといって自分の悲しみが消えてなくなるわけじゃない。
それでも
やっぱり人は支え合って助け合って生きていくんですよね。
一人じゃ絶対無理なんですよね。