ゆっくりかえろう

散歩と料理

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2011-08-20 | フィクション

 俺はあれから一睡も出来ず 夜明けまであれこれ考え続けた。
 携帯電話が使えない

 と 突然勇ましい携帯の着信音が鳴って 着信ランプが青く明滅した。
 電話に出られるわけがない

 しばらく携帯は着信音を鳴らし やがて諦めたように静かになった。

 俺は恐る恐る電話に近づき 部屋にあった唯一のゴルフクラブ
 課長にもらったパターで 携帯電話をそーっと小突いた。
 
 何も起こらない 
 今度は電話をパターの背で苦労しながら開いた
 そして逃げ腰で電話を引き寄せた
 怖い 本当に怖い

 開きそこなって電話がずれて滑ると 本気で後ずさった
 まるで負け犬がカマキリと喧嘩をしているようだ
 
 こんな姿は誰にも見せられない
 電話は何事もなく静かに裏返り 文字盤を上にして開いた

 恐る恐る手にとって見ると 画面上の化け物は かなり遠くをさ迷っているのが見えた
 やっぱりいる 一キロくらい先にいる

 昨日の事はみんな現実だった
 化け物がこちらに気づいて一目散に走ってきた

 化け物が出てくるぞ!
 
 俺は慌てたが 窓から朝日が携帯の画面に差し込んだとたん
 化け物は何処か奥のほうに逃げて見えなくなった

 俺はほっとした

 ヤツは太陽の光に弱いらしい

 とりあえず昼間は携帯が使える
 早く機種変更をして 今ある住所録などのデータは
 そちらに移してしまおう

 それからこの電話の処分を考えればいい
 動物園に持っていくか?
 お寺や神社にお願いするか?
 いっそ教会へ持っていくか?

 そうだまず携帯電話会社に文句を言ってやろう

 
 こんな物騒なものは 警察に届けるのがいちばん安全なのかもしれない

 どちらにしても データ移し変えするのには 昼間太陽の下で
 やらなければならないだろう

 なんでこんな目に遭わなきゃならないんだ
 とんだ出費だ
 今月も 財政はピンチなのに・・・・・
 



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