■師走を彩る終い弘法

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■「平成終りの師走」
●12月を旧暦で師走(しわす）という。その師走もあと数日となった。
平成最後の師走ともなれば、想いはまた格別である。

「人間にとって最高の幸福とは、一年の終わりにおける自己を、
　その一年の始めよりも、はるかに良くなったと感じることである」
ロシアの作家トルストイは人々に1年の思いを、そのように示唆して
いる。 要は、楽天的に前向きに過ごす事を勧めていると思いたい。

■「終い弘法の愉悦」
●実は師走の21日、タイの知人夫妻が来。日本の伝統美術に詳し
い彼らのリクエストで、京都東寺の「終い弘法」(縁日）に案内した。
東寺は、真言宗の総本山で、本尊は薬師如来である。
平安京鎮護のための官寺として旧く796年に建立され、嵯峨天皇
から空海（弘法大師）に下賜されたのち、真言密教の根本道場と
して栄えてきた名刹である。　

●東寺の五重の塔は、仏都京都のランドマークであり 木造の建造
物としては、日本一を誇る。
東寺開祖の空海が5月21日に誕生したことに因んで、毎月の21日
を「弘法さんの縁日」として境内に縁日の市がたつ。
特別に、年末師走の２１日は「終り弘法」といい、一年で一番大きな
縁日として1300店以上が出店する。
一服一錬の屋台の茶店から、伝統陶器や骨董の店、京着物古着
の店　伝統的な植木や銘木の店、京の伝統漬物の店など、珍しい
露店が、覇を競って軒を連ねる。

    
    
 

●最近では、テレビ東京の人気番組「開運、なんでも鑑定団」のヒット
で、骨董好きシニアと海外観光客のお宝探しが「終い弘法」にも及ぶ。
広大な境内は、早朝から、お宝探しの参詣人たちで賑わう。
（因みに日本のテレビ番組は、タイでも視聴可能で、なかでも「開運、
なんでも鑑定団」は、一番の人気番組との事）

●欧米観光客とおぼしき外国人は、小型計算機を手に 骨董店の店主
を相手に、品定めした陶器の価格交渉に余念がない。手慣れたものだ。
このような大きな骨董市では、値段交渉、いわゆる根切り交渉では、狙
い目の骨董品を希望値で手に入れることが、最高の醍醐味とされる。
目利きの外国人観光客は、既に何度か東寺の縁日を訪れているのか、
店主とも親しい常連の様子で、商談が成立の際には、それぞれ満面の
笑みを浮かべて握手を交わす。古都ならではの国際交流の風情である。
   
   
●知人のタイ人夫妻は、予てから興味をもつていた「能面」を探す。
2時間ほど探し歩いた末に、清水焼の作者藤原弥次作の能面を手に
いれたという。古いものだが、なかなかの美品である。しかも、桐箱入
りである。
何度かの値段交渉のすえ、わずか税込2800円だったという。凄腕の
ネゴシエーターぶりである。私から見れば、どう見ても2万円の逸品で
ある。　これが海外の観光客にも好まれる「終い弘法」の骨董探しの
真骨頂といえようか。良いお買いもので本当によかった。


■「平成に栄光あれ」
●師走の京都といえば、年一度の京都南座の十二月興行「顔見世大
歌舞伎」がある。南座は四条大橋東詰めにある京都唯一の大劇場で
ある。連日大入り満員を続ける。師走に京都を訪れる欧米外国人の観
劇で賑わう。
京都は、今年も北海道に次いで、インバウンドでも、都道府県 魅力度
第2位にランクされた。

●東洋の島国のせいか、日本には古来独特の伝統と、四季や自然に
纏わる独自の「しきたり」や、旧暦の慣習がある。
京都では、ここを訪れる海外観光客のために、市中の随所に観光案内
コーナーが設けられ、日本の自然観や旧暦や二十四節気や神と仏の
関係性などと恒例行事について、各外国語の解説書や説明書を用意し
て、外国人観光客の利便を図っている。
これがわずか5年ばかりで、京都に多くの海外観光客を招き入れる素晴
らしい成果をもたらした要因と考えられている。
　

●政府の予測では、オリンピックの2020年には、インバウンド（来日
海外観光客）数4000万人を目指すという。それはまさに 栄光の世界
ベスト5入りという事になる。
まもなく平成も終り、希望の新元号による期待の新時代が始まる。