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■人生の転機

2024-06-17 | ●中西語録

■■■■■■■■■■■■人生の転機■■■■■■■■■■■

中西英樹
タイ王国チェンライ市在住(ロングスティヤー)

■[チェンライ滞在15年]
人生の転機
🔵認知症が進んできた母を伴ってチェンライに着いたのは2009年の
1月だった。2009年(平成21年)というと8月に総選挙があり、官僚
主導の政治打破を掲げた民主党が過半数(241議席)を大きく上回る
308議席を得て圧勝した。
自民党は,公示前の300議席から119議席に激減する結党以来の歴史的
大敗を喫し, 戦後初めてとなる,野党第1党が単独過半数を獲得しての
政権交代が実現、9月には鳩山内閣が発足している。

世界同時不況で,トヨタ自動車は純損益が,2兆円以上悪化して約4369
億円の赤字に転落し, ソニーは1万6千人の人員整理をおこなっている。

🔵日本経済はデフレで GDPは35年ぶりに二桁減少、利用客が少なく
て銀座には客待ちのタクシーの長い列ができた、とある
海外では, オバマ大統領が「核なき世界」を訴えて ノーベル平和賞を
受賞し, マイケル・ジャクソンが死去、さらにイスラエルがガザ地区
に侵攻し、停戦までの約2週間でパレスチナ側に1300人の死者が出て
いる。
イチローの9年連続200安打, 松井はワールドシリーズMVPといっ
た出来事もこの年のこと。チェンライで新生活に慣れることに 心が
奪われていたせいか、内外のニュースについてあまり記憶がない。
今,年表を見て、そんなことがあったなあ、と思う程度。

ただ,ドル円レートは90円ほどで今とは比べモノにならないくらいの
円高。ドルとリンクしているタイバーツは安く,家財道具や車の購入、
ビザ取得のための預金が必要だった我々にとっては よかったと言え
る。慣れない異国の生活に戸惑うことも多く,瞬く間に日々が過ぎて
いくという年だった。
今振り返ってみると内外の大事件とは関係なく, ささやかに個人的な
人生の転機が訪れていたのだろう。


 
何故か居つく,
🔵今年は2024年, 2009年にチェンライに移り住んだから,本年でタイ
在住15年となる。母は日本で「3ヵ月でお亡くなりになります」とい
う医師のご託宣を受けていた。ご飯を食べようとしないから, 点滴と
なり,点滴では十分な栄養が取れないからそれで寿命が尽きるとの事。
このまま入院していたら死んでしまうと病院から家に連れ帰った。

帰宅すると箸で卵焼きなどを食べているので一安心。日本の病院や施
設では認知症の母は尊厳ある人間ではなく一病人としてしか見てもら
えない。これは日本の介護、医療体制からすれば仕方のないことだと
わかってはいた。
🔵それで日本では,十分なケアは期待できない、と思い詰めて薄い縁
すがってチェンライに移り住んだ
3ヵ月の命と言われていたし,
もってもせいぜい3年と思っていたが、チェンライの気候が良かった
のか, 女中さんの親身な介護がよかったのか, 10年ほど 母は生きなが
らえて2018年に天寿を全うした。

つい先日亡くなったような気がするが6年も前になってしまう。介護
ロングステイとして暮らしていたのだし, 一段落ついたら帰国しても
よかったのであるが, そのままチェンライに居ついている。居ついて
いるばかりでなく、2023年には家を建て,ここが終の棲家になるので
はと考えている。


自分らしく生きる.
🔵海外に移住してよかったと思うことはありますか? という質問が
あった。よかったと思うことがあるから異国に住み続けている。人に
よって自分の専門が生かせる仕事が見つかった。パツ金のカミさんと
一緒になれた,人間関係のほとんどが異国にある, などいろいろな理由
があるだろう。

自分の場合、自分が自分のままで過ごせる、が主な理由だろう。ウズ
ベクにカレッジの講師として赴任した途端に 30年以上飲み続けてきた
胃潰瘍の薬がいらなくなった。 チェンライに来てからは更に 人づきあ
いのストレスが無くなった。付き合いたい人とだけ付き合えばよく,自
分とは合わない人と付き合う必要はない。対人関係ストレスはゼロだ。
もちろん日本は安全で、便利で,清潔で、和食に限らず食物は美味しく、
人々は礼儀を弁えていて、医療は充実していて,と数えきれないほどの
利点はある。

 
                                 ( ●チェンライの古寺、撮影,中西)

外国人が賞賛してやまない日本の美点を紹介するユーチューブを視聴す
ると、望郷の念が湧き上がらないこともない。でもこの素晴らしい国に
いつでも帰ることができる。今は今の生活を楽しもう。今日もコートに
行って6ゲーム先取のダブルスを2つ。シャワーを浴びてパソコンへ、
音楽も時事解説もスポーツ番組も思いのまま、昼食を自分で作り、眠く
なれば昼寝、「春立つや新年古き米五升」ではないが,庭にはバナナが五
本以上 実をつけているし,ビールとラオカオも充分ある。自堕落な自分を
責める人もいない。
飢えず凍えず満ち足りた日々を異国で過ごせる事に 感謝,心からそう思う。

■[周りに合わせて暮らす]
緊張の毎日
帰国中は忙しいのでブログはしばらく休みます。それで誰も困らない
のだが、ずっと続けていることだし生活のリズムの基本でもあるので
ブログアップは続けてきた。出発前に原稿を書き溜めて予約投稿して
おけばラクだよな、と考えて予備原稿を増やしておいた。通常はデス
クトップの大画面のPCで原稿を書く。
書いた原稿をラップトップのPCにペーストしたつもりだったが、東京
に来ていくつかの原稿が消えていることに気が付いた。 確かこんな内
容だったよな、と思い出し原稿を書いたり、昔、アップした原稿を再
登場させてその場を凌いだ。
東京の兄の家にはカレンダーが一つしかなかった。通常、週の始まり
は日曜で土曜に終わる。なぜかというと『日曜日』は“イエス・キリス
トが復活した日”でその日は仕事をお休みして儀式を行う、『安息日』
になるからという。ユダヤ教では『土曜日』が『安息日』で『日曜日』
を週の始まりとしている。日本は米国式の週の始まりは日曜のカレン
ダーが多い。ところが欧州ではISO基準に従って週の始まりは月曜とな
っている。

今年4月に兄が帰国した時、どこを探してもカレンダーを販売している
ところがなく、やっと見つけたカレンダーは欧州式だった。このカレン
ダーのせいでブログのアップ日の曜日を間違えたり、原稿アップ予約に
混乱を生じた。まあ帰国中は忙しかったので、病院の予約や友人との会
食を忘れたり、約束時間に遅れたりするよりはよかった。日本では約束
時間を守る、は人間として当たり前のこととされる。遅刻常習犯という
言葉があるように遅刻は犯罪を構成すると心の中で思っている人もいる。
それだけに帰国中は緊張して過ごした。


■■周りに合わせて暮らす
 ■「ルーズな文化、タイトな文化
🔵カリフォルニア大学の経営学教授, エリケ・シェーデさんに言わせると、
日本はタイトな文化、シリコンバレーはルーズな文化だという
タイトな文化では正しい方法が大事にされ,ルーズな文化では予測不可能な
ことに寛容だという。文化は複雑な概念だから,情緒的に解釈されやすいが、
専門家チームが世界33か国の国民に対してアンケートを行い,各国民の行動
規範を調べた。人々の行動を文化とみなしたのである。

 具体的には
「レストランでイヤフォンを付けていてもいいか」、
「エレベータ内で飲食をしてもよいか」、
「授業中に大笑いしてもいいか」、
「路上で歌を歌ってもいいか」
といった質問に構わない、あるいはそれはちょっと、という反応を集積す
ることによって、タイトな、あるいはルーズな文化を推定する。

カリフォルニアの人々はそんなの構わないじゃん、日本は暗黙のルールが
あるよ、と否定的な答えが多くなる。シリコンバレーでは激しい競争があ
るが、豊富かつユニークなアイデアの中から、世界的ベンチャー企業が生
まれる。エレベータの中に投資家がいると気づいたらベンチャーはエレベ
ータ・ピッチ(30秒で自分のアイデアを売り込むこと)を始める。即座に
出資が決まることもある。日本では会議と稟議で出資に数年はかかる。
 
 
🔵タイトな文化では社会にルールがあり、人は何をするべきかを心得てい
る。東京ではごみを5種に分別して出しているが、これができる国は他には
ない。地震、台風などの自然災害が起こった時でもどう振舞うべきかを 皆
心得ている。

ハリケーン・カトリーナが米国南部を襲った後、街では略奪・暴行が頻発し
た。ルーズな社会では極端に走ることが多いという。ルーズな社会、米国で
は950ドル以下の万引きは犯罪とならないので、従業員の生命と 会社の存在
を守るため、万引き多発店の閉鎖を進めているスーパーもある。


■「朱に交われば
🔵日本はすごいと言ったビデオの中に,日本で暮らしたら子供が(いい方へ)
変わったというものがある。実は子供ばかりでなく、大人の外人でも日本に
きて1週間もすると電車の中で大声を出さなくなる、電話をしながら お辞儀
をする人も出てくる。要するに周りを見てそれに合わせようとするからだ。

自分も日本では時間を守り、エスカレータでは左側に立ち、ごみ捨て日を気
にしていた。でもチェンライに戻って1週間も経つと「ああ,それがどうした、
何でもいいじゃん」とルーズな自分になっていることに気づく。
時間も相手は気にしないのだからと遅刻も平気。朱に交われば赤くなる。

シェーデ教授のいうように文化はトレードオフ(こちらを立てればあちらが
立たず)の関係にあって上下優劣があるわけではない。文化などと大上段に
構えることなく、まあ周りに合わせておけばいいか、の気持ちだ。

チェンライにいるのだからのんびりと過ごしたい。

 

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