世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

2016-10-09 04:32:23 | 詩集・絹の鎖

森の奥深くに入ると
鹿が死んでいる
と思ったらそれは
小さな女の死骸だった

小さな吸殻を指に挟み
汚い化粧で顔を汚している
見つめられたら困る
しわを隠すために
分厚く塗り重ねている

着ていた服は
風に溶けてしまったか
鹿の皮に変わってしまったのだろう
もう
身に着けられる服もなくなってしまうほど
盗みをやりすぎたのだ

女の生れの果てというものは
一切をなくして
真裸よりもむごい
ないものというものになってしまうと
そういうものなのだ
あわれという感情も
起こらない

傍らにある
名も知らぬ緑の木の藪だけが
死骸を隠そうとしてくれている
水になって溶けてしまうまで
馬鹿を守ってやろうとするのだろう




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