森の奥深くに入ると
鹿が死んでいる
と思ったらそれは
小さな女の死骸だった
小さな吸殻を指に挟み
汚い化粧で顔を汚している
見つめられたら困る
しわを隠すために
分厚く塗り重ねている
着ていた服は
風に溶けてしまったか
鹿の皮に変わってしまったのだろう
もう
身に着けられる服もなくなってしまうほど
盗みをやりすぎたのだ
女の生れの果てというものは
一切をなくして
真裸よりもむごい
ないものというものになってしまうと
そういうものなのだ
あわれという感情も
起こらない
傍らにある
名も知らぬ緑の木の藪だけが
死骸を隠そうとしてくれている
水になって溶けてしまうまで
馬鹿を守ってやろうとするのだろう