
スビャトゴナは
ヨーロッパの古い国で
鼠のような顔をした小さな女に生まれ
欠けた茶碗や皿を売りながら
貧乏暮らしで人に馬鹿にされて生き
自分の罪を支払いながら
勉強していくはずだった
だが
そんな人生は絶対にいやだと言って
生まれる前にごねまくった
もっと美人になりたい
もっとできる女になりたい
幸せになりたい
そこで
手こずった馬鹿どもは
スビャトゴナのいうことを聞いてやることにした
レストランの女将になるはずだった
スザンナから顔を盗み
鼠のような顔を隠してやった
日本人に生まれるはずだった
ミヤコから人生を盗み
日本人の普通の家庭に生まれさせてやった
何もできなかったら困るからと
バックから男の霊が肉体を動かし
やらねばならないことを
全部代わりにやってやった
スビャトゴナはミヤコになって
自分はそれほど美人ではないけれど
かなりできるいい女だと思っていた
友達がいなかったので
適当な奴を殺して
その友達を奪った
みんな偽物のミヤコを
少し変だなとは感じながらも
自分の友達だと信じ込んで付き合った
馬鹿なスビャトゴナはそうやって
完璧に他人になりすました
いいやつだと自分を信じ込んでいたスビャトゴナは
盗んだもので嫌なことをした
すると
馬鹿なことをするなと黒猫が言った
スビャトゴナは自分を嫌なものにされるのが嫌だったので
黒猫におまえなんか馬鹿だと言った
すると黒猫は死んだ
その日から一切が馬鹿になった
ミヤコに化けたスビャトゴナは
自分の周りにあった本当の愛が
あの黒猫だけだったことを
黒猫がいなくなってから初めて知った
親も友達も
すべて偽物だった
遠いヨーロッパの国から
猫はスビャトゴナを探してきてくれていたのだ
かわいそうなスビャトゴナ
もうだれも愛してくれない
古いヨーロッパの国に帰ることもできない
馬鹿な盗みで自分のものにした
嘘ばかりの人生なんて
いいことなんか何もないことを知るために
ずっと生きなければならない