世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

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最後の日々

2018-05-21 04:16:48 | 黄昏美術館


アンジェロ・モルベッリ


おそらく養老院の風景だろう。

苦い人生を終えようとしている老人たちが集っている。聖職者の説教でも聞いているのか。それとも何らかの講義か。だが心ここにない表情をしているものが多い。あからさまにうち伏している者もいる。

まるで砂漠の夜のようだ。女性がひとりもいないのはどうしたわけなのか。男の老人ばかりの世界というものが、いかに虚無的であるかを思い知らされる図である。

男は女性がいれば何かをしようとするのだ。老人でもそのうれしさはある。だがその甘やかな目的が何もない。生きるための目的が何もない。人生の最後の日々に見なければならない風景がこれであれば、人生は非情だとしか言えないだろう。

何をしてこうなったのか。あらゆる愛に背かれるほど、痛いことをしてしまったのだ。そして自分からは、ほとんどだれも愛そうとしなかったのだ。

甘いものを欲しがるばかりで、男が男として痛いことは何もしなかったら、世界はこうならざるを得ないのかもしれない。

女が誰もいない、老いた男だけの世界である。





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