共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はシェーンベルクの誕生日〜初期の傑作《浄められた夜》

2022年09月13日 17時30分45秒 | 音楽
今日も日中は厳しい日差しが降り注ぐ、暑い一日となりました。小学校の子どもたちも暑さにあてられてグッタリしながら、こまめな水分補給に徹していました。

ところで、今日9月13日はシェーンベルクの誕生日です。



アーノルド・シェーンベルク(1874〜1951)は19世紀から20世紀にかけて時代の先端を行く音楽家であったと同時に2つの大きな戦争を生き抜いた人物でもあり、その経験は彼の晩年の作品に強い影響を与えています。

シェーンベルクはオーストリアのウィーンに、3人兄弟の長男として生まれました。両親ともに音楽の経験はありませんでしたが、シェーンベルクは8歳でヴァイオリン、その後独学でチェロを学び始めます。

15歳のときに父親が他界したのを機に生活のために銀行で働き、それと同時に作曲も学びました。その後21歳になると合唱指揮者を任されるようになり、これを機に本格的に音楽活動を行うようになりました。

いわゆる無調音楽で知られるシェーンベルクですが、初期の頃はまだブラームスやヴァーグナーなど後期ロマン派の影響を強く受けた作品を作曲していました。また、シェーンベルクが27歳で作曲した《グレの歌》は後期ロマン派の集大成とも称される一方、新しい時代の転換点を迎える象徴的な音楽とも考えられています。

20世紀に入ると、シェーンベルクは新たな音楽への探求を深めます。その第一歩が『無調音楽』の試みです。

それまでのロマン派の音楽は、メロディーの美しさをひたすら追求する音楽でした。しかしシェーンベルクは、「調」という音楽の構造自体の変革を求めるようになります。

1908年に作曲された《弦楽四重奏曲第2番》は、無調音楽への挑戦の第一歩と言われています。その後に発表された《3つのピアノ曲》や《5つの管弦楽のための小品》、1911年に発表した《6つの小さなピアノ曲》では、はっきりとした無調音楽が展開されています。

また、この時期を代表する作品に1912年に発表された《月に憑かれたピエロ》がありますが、この作品はラヴェルやストラヴィンスキーといった作曲家たちに強い影響を与えました。無調音楽の発表当初は聴衆から酷評を受けてウィーンから追放されたシェーンベルクでしたが、演奏の機会が徐々に増えると共に無調音楽の試みも少しずつ聴衆に受け入れられるようになりました。

やがて、自身が確立した無調音楽が聴衆に受け入れられるようになってきたことを感じたシェーンベルクは、新たな音楽の確立を模索し始めます。そこで考え出されたのが『十二音技法』です。

『十二音技法』とは非常に複雑な音楽理論なのですが、ものすごく噛み砕いて言うならば「ドから次のドまでの黒鍵を含めた12の音を均等に扱う」という作曲技法です。詳しく説明するととんでもないことになってしまうので、ここでは割愛させていただきます(汗)。

シェーンベルクが十二音技法を本格的に取り入れた作品としては1920年代に作曲した《5つのピアノ曲》作品23があり、この作品以降、十二音技法を駆使した作品を積極的に発表することになりました。この十二音技法はシェーンベルクの弟子であるアントン・ヴェーベルン(1883〜1945)年やアルバン・ベルク(1885〜1935)らによって更に発展し、現代音楽の礎とも言える技法の一つとして確立されました。

1933年頃になると、シェーンベルクはナチスから逃れるためにフランスにしばらく滞在した後にアメリカへ亡命しました。アメリカで市民権を得たシェーンベルクは南カリフォルニア大学やカリフォルニア大学ロサンゼルス校などで教鞭をとって音楽活動を続けましたが、その教え子には



先日ご紹介した、《4分33秒》で知られる作曲家ジョン・ケージ(1912〜1992)もいました。

そんな数あるシェーンベルクの作品の中から、今日は初期を代表する室内楽《浄められた夜(浄夜)》をご紹介しようと思います。

《浄められた夜》または《浄夜》作品4はシェーンベルクが1899年にウィーンで作曲した弦楽六重奏曲で、彼の初期作品の中では《グレの歌》と並んで最も有名かつ最も重要な作品の一つです。発表後に弦楽合奏用に編曲や改訂が繰り返され、初期のシェーンベルクの代表作となりました。

この曲は、月下の男女の語らいが題材となっているドイツの詩人リヒャルト・デーメル(1863〜1920)の同名の詩『浄夜』に基づいていて、室内楽のための『音詩』という極めて特異なジャンルを開拓したことでも有名です。1902年3月18日にウィーンで初演が行われた際には、シェーンベルクがつむぎ出す当時としては斬新な半音階を多用した響きや調性があちこちに浮遊するパッセージ、更にはあけすけに性を主題とするデーメルの作品を出典に作曲する姿勢をめぐって波紋を呼びました。

そんなわけでシェーンベルクの誕生日である今日は、初期を代表する作品である《浄められた夜》の弦楽六重奏曲初演版をお聴きいただきたいと思います。無調音楽を編み出す前の、シェーンベルクの非常にロマンティックな世界観をお楽しみください。




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