共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はロン・カーターの誕生日〜バッハ《無伴奏チェロ組曲》より

2024年05月04日 15時55分51秒 | 音楽
今日、またしても日中は夏日になりました。予報されていたこととはいいながら、やはり5月にこの暑さは堪えます…。

ところで、今日5月4日はロン・カーターの誕生日です。



ロン・カーター(1937年5月4日〜 )は、アメリカ合衆国出身の黒人ジャズ・ベース奏者、作曲家です。

ニューヨーク市立大学シティカレッジの元教授でもあり、現在86歳でご顕在です。因みに身長がものすごく高くて大谷翔平とほぼ同じ193cmもありますが、上の写真のコントラバスとの対比で、その大きさが分かっていただけるでしょうか。

ロン・カーターは1959年に、チコ・ハミルトン(1921〜2013)のグループでプロ・デビューしました。また、ポール・チェンバース(1935〜1969)やレイ・ブラウン(1926〜2002)、サム・ジョーンズ(1924〜1981)などの名だたるベーシストとの交流の中で自己を確立し、様々なジャズグループに参加しました。

その柔軟で奔放なプレー・スタイルが、当時モード・ジャズの表現を模索していたマイルス・デイヴィス(1926〜1991)の目にとまり、ポール・チェンバースに代わるベーシストとして抜擢されました。他のメンバーが繰り出すサウンドに絶妙な相性を見せたロン・カーターは、1960年代のマイルス・ミュージックの屋台骨を支える役割を果たしました。

ジャズ界の趨勢がモード・ジャズからエレクトリック・ジャズ/ジャズ・ロックに移行しつつあった1960年代末、ロン・カーターはマイルスのグループを離れて以降、主に著名ミュージシャンのセッションのサイドマンとして無数のレコーディングに参加しました。1970年代には、1976年からのハービー・ハンコック、フレディ・ハバード、トニー・ウィリアムスらによるV.S.O.P.クインテットや、ハンク・ジョーンズによるグレイト・ジャズ・トリオなどのバンドにも名を連ねています。

一方で、ロン・カーターはピッコロ・ベースという新楽器を開発し、ソロ楽器としてのベースの可能性を追求しました。ピッコロ・ベースはコントラバスより小さくチェロより大きい楽器で、コントラバスの4本の弦のうちE弦(最低音の弦)を廃して、最高音であるG弦の上にさらに4度上のC弦を配したものであり、チェロ同様に椅子に座って演奏するものです。

そんなロン・カーターの誕生日にご紹介するのは、バッハの《無伴奏チェロ組曲》からの一曲です。

ロン・カーターは若い頃からバッハなどに傾倒し、初めはチェロを習い、後にコントラバスへと転向しました。ロン・カーターは弓を使用したベース演奏もできたため、クラシックのコントラバス奏者を目指して1日8時間に及ぶ猛練習をするも、当時は人種差別の壁があって白人オーケストラへの入団は拒否されてしまいました。

現代の感覚から見ると信じがたいことですが、かつては黒人がクラシック音楽に携わることはタブーとまで言われていた時代がありました。モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の名ピアニスト、ジョン・ルイス(1920〜2001)もバッハに深く傾倒していましたが、黒人であるというだけで演奏することを禁じられたのです。

そこでジョン・ルイスは自身のインスピレーションに則ったアレンジを施した《平均律クラヴィーア曲集第1番》のアルバムを発表するに至りました。今では名盤とされているこのアルバムも、元々は白人による黒人差別から生み出されたものなのです。

ロン・カーターもバッハへの思いは絶ち難いものだったようで、1985年に



『ロン・カーター・プレイズ・バッハ』というアルバムをリリースしました。このアルバムではバッハの《無伴奏チェロ組曲》やリュートのための作品をベース一本で、しかも全てピチカート(弓を使わずに指で弦を弾く奏法)のみで演奏したものです。

このアルバムの評価については、かなり意見が割れます。クラシックとして聴くとちょっと荒っぽいのですが、ジャズアルバムとして聴けば絶妙なスウィング感を感じることができるアルバムです。

かつて、前出のジョン・ルイスが何故ジャズ・ミュージシャンなのにバッハを手掛けたのかと聞かれたインタビューで

「クラシックの作曲家の中でスウィングしているのはバッハだけだからだ。」

と答えたという逸話があります。そうしたスウィング感をロン・カーターも演奏者として肌身で感じていたからこそ、ジョン・ルイスとは違ったアプローチでこうしたアルバムを発表したのでしょう。

そんなわけで、今日はロン・カーターのベースソロによるバッハの《無伴奏チェロ組曲》より第5番の終曲ジーグをお聴きいただきたいと思います。ジャズベーシスト、ロン・カーターならではの、心地よいスウィング感をお楽しみください。



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