共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はバレエ《くるみ割り人形》の初演日〜当時最新鋭の楽器チェレスタを使った『金平糖の踊り』

2022年12月18日 12時34分56秒 | 音楽
今朝は冷たい雨がパラパラと降っていましたが、それも8時過ぎには上がりました。

ところて、昨年も書いたような気がしますが、今日12月18日は



チャイコフスキーのバレエ《くるみ割り人形》が初演された日です。1892年に初演されたこの作品は《白鳥の湖》《眠りの森の美女》と共にチャイコフスキーの3大バレエに数えられていて、クリスマス・イヴの日の話であることから、この時期になると各地で公演されることの多いものでもあります。

作曲に至った経緯等については昨年の今日の投稿を御覧いただきたいと思いますが、チャイコフスキーはこの作品の中で新しい試みをしています。それが、当時開発されたばかりの楽器であるチェレスタを導入したことです。

チェレスタはパリの楽器制作家オーギュスト・ミュステルが発明し、1886年に特許を得た鍵盤楽器のひとつです。全体は



このような小型のアップライトピアノのような形状をしていて、音域は4オクターブ程です。

この楽器の一番の特徴は、ピアノでいう弦があるところの本体内に



鉄琴が仕込まれていることです。演奏するとハンマーが鉄琴を叩いて、まるでオルゴールのような幻想的な音色がします。

それまでにも、たとえばモーツァルトの歌劇《魔笛》の中のパパゲーノのアリア『恋人が女房がいれば』で使われている鍵盤式のグロッケンシュピールや、『天使の声』と喩えられてサン=サーンスの《動物の謝肉祭》の中の『水族館』でも使われている珍しい楽器アルモニカ(またはグラス・アルモニカ)といった楽器がありました。しかし、それらは性能としても丈夫さとしてもあまりいいものとは言い難く音量も貧弱だったため、このチェレスタの開発は画期的だったのです。

チャイコフスキーは旅先のパリでこのチェレスタを見つけて、新作のバレエにこの楽器を使うことに決めました。チャイコフスキーはパリからチェレスタを取り寄せる際、楽譜出版社のユルゲンソンに送った手紙で

「他の作曲家、特にリムスキー・コルサコフとグラズノフには絶対に知られないように。」

という趣旨のことを書いて念押ししていることから、この新楽器の使用をロシアの他の作曲家たちに先を越されたくないという並々ならぬ思いがあったようです。

その後チェレスタは様々な音楽に使われるようになり、レスピーギやマーラー、ラヴェル、バルトーク、ショスタコーヴィチといったオーケストレーションに長けた作曲家が印象的に使用しています。最近ではジョン・ウィリアムズが映画『ハリー・ポッター』のテーマ音楽に使っていますから、かなりの方々がチェレスタの音色をご存知なのではないでしょうか。

そんなわけで、今日は《くるみ割り人形》の中から『金平糖の踊り』を御覧いただきたいと思います。チャイコフスキーが先鞭をつけることになった楽器の音色と共に、戦争の渦中で翻弄されているボリショイ・バレエのプリンシパル、エフゲーニャ・オブラスツォーワの華麗な舞をお楽しみください。



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