昨日までの暖かく晴れた天気から一転して、今日は朝から空一面に雲の広がる空模様となりました。午後からは雨も降り始めて気温もあまり上がらず、実際の気温よりも寒い体感の一日でした。
ところで、今日3月15日はヨハン・ハルヴォルセンの誕生日です。

ヨハン・ハルヴォルセン(1864〜1935)は、ノルウェーの作曲家・指揮者です。
一般的な知名度はあまり高くありませんが、若年の頃から洗練されたヴァイオリニストとして活動し、ノルウェー楽壇の著名人となった人物です。ノルウェー語では『ヨハン・ハルヴォシェン』と呼ぶようですが、日本では『ヨハン・ハルヴォルセン』という呼称が定着しています。
クリスチャニア(現オスロ)とストックホルムで音楽教育を受けたハルヴォルセンは、1893年にノルウェー西岸の都市ベルゲンのベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターに就任した後、ドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団に入団しました。1893年にはノルウェーに帰国してベルゲン国立劇場のオーケストラの指揮者に就任し、1899年には新設されたクリスチャニア国立劇場のオーケストラの指揮者に任命され、1929年に引退するまで30年間にわたってその座にありました。
ハルヴォルセンは舞台音楽に加えて30曲のオペラ公演を指揮し、30曲以上の劇付随音楽を作曲しました。劇場を引退してからは作曲に専念し、3つの壮大な交響曲や2つのノルウェー狂詩曲を作曲しました。
ハルヴォルセンの作品は華麗な管弦楽法を特徴とする作風によって、エドヴァルド・グリーグ(1843〜1907)によって実現されたロマン主義的なノルウェー国民楽派の伝統を発展させたものです。実際ハルヴォルセンは、グリーグ本人や音楽との関わり合いの深い人物でもありました。
ハルヴォルセンはグリーグの姪と結婚し、またグリーグのいくつかのピアノ曲に管弦楽法を施しました。また、ハルヴォルセン編曲の《リカルド・ノルドローク追悼の葬送行進曲》は、グリーグの葬儀で演奏されました。
そんなハルヴォルセンの誕生日である今日は、ヴァイオリンとヴィオラのための《ヘンデルの主題によるパッサカリア ト短調》をご紹介しようと思います。
《ヘンデルの主題によるパッサカリア ト短調》は、ハルヴォルセンが33歳の1897年に作曲されました。オリジナルの編成はヴァイオリンとヴィオラの二重奏というシンプルな編成ですが、ヴァイオリンとチェロの二重奏で演奏されることもあります。
原曲は

『音楽の母』ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)作曲の《クラヴィーア組曲ト短調 HWV432》の最終楽章の

『パッサカリア』です。原曲もなかなか迫力ある展開を見せる見事な曲なのですが、

ハルヴォルセンの曲は弦楽器二台という実にシンプルな編成であるにも関わらず、原曲にも負けない迫力のあるかっこいい曲となっています。
この曲はヘンデルという有名人の名前を借り、ヘンデルのパッサカリアを作曲の動機として使ってはいますが、実際にヘンデルに倣っているのはごく一部で、内容的にはほぼハルヴォルセンの創作です。しかしその出来栄えは弦楽器に精通したハルヴォルセンの力量を余すところなく示した傑作となっていて、たった二台の弦楽器からこんなにも豊かな音楽が生まれるのか…と驚かされます。
そんなわけで、今日はヨハン・ハルヴォルセンの《ヘンデルの主題によるパッサカリア ト短調》をお聴きいただきたいと思います。イツァーク・パールマンのヴァイオリンとピンカス・ズーカーマンのヴィオラの演奏で、原作者ヘンデルもビックリのすさまじく難しいデュエット曲をお楽しみください。
次に、このハルヴォルセンのデュエットの元になったヘンデルの《クラヴィーア組曲ト短調 HWV432》の最終楽章『パッサカリア』をお聴きいただきたいと思います。ブラジル出身のチェンバロ奏者フェルナンド・コルデラの演奏で、先程のハルヴォルセンの音楽はこれが元になっている…ということを感じながら聴き比べてみていただきたいと思います。