共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

ざわつく心にモーツァルト〜晩年の傑作《アヴェ・ヴェルム・コルプス》

2024年08月10日 19時35分25秒 | 音楽
昨日19時57分頃、神奈川県西部を中心とした最大震度5弱の地震が発生しました。



震源の深さは約10km、地震の規模を表すマグニチュードは5.3と推定されています。

地図を見るだに、正に厚木市の直下が震源だったようでした。私は自宅にいたのですが、真下からドン!と突き上げるような感覚があったと思いきや我が家が激しく揺さぶられ、立ててあった譜面台が倒れました。

時間にすれば1分もなかったと思うのですが、揺れている最中はかなり長い時間に感じていました。2011年の東日本大震災の時のような遠いところの地震の揺れではないということはすぐに分かりましたが、その後の発表でまさかの我が在所が震源だったということに驚かされました。

友人知人と互いに安否を確認しあっていたのですが、その時に

「こういう時に心を落ち着かせる音楽ってなんだろうか?」

という話になりました。その話をしている時には思いつかなかったのですが、電話を切ったあとでふと頭の中に流れてきた音楽がありました。

それが



モーツァルト作曲の合唱曲《アヴェ・ヴェルム・コルプス》でした。

《アヴェ・ヴェルム・コルプス (Ave verum corpus)》 はカトリックで用いられる聖体賛美歌で、トリエント公会議で確立された対抗宗教改革の一環として典礼に取り入れられ、主に聖体祭のミサで用いられました。このラテン語の歌詞にはウィリアム・バードやガブリエル・フォーレといった作曲家たちが曲をつけていますが、断トツに有名なのはモーツァルトの作品です。

この曲はモーツァルトが、妻コンスタンツェの療養を世話した合唱指揮者アントン・シュトルのために作曲したものです。簡素な編成で、わずか46小節、演奏時間にして3分程度の小品なのですが、絶妙な転調による静謐な雰囲気からモーツァルト晩年の傑作とされている作品で、世界中で愛唱されています。

弦楽合奏とオルガンの伴奏にのって、合唱が祈りの歌詞を静かに歌い出します。途中に強奏で爆発することも一切なく、静謐な響きの中で厳粛に終わっていきます。

そんなわけで、今日はモーツァルトの《アヴェ・ヴェルム・コルプス》をお聴きいただきたいと思います。システィーナ礼拝堂合唱団の歌唱で、天才モーツァルトが晩年にたどり着いたひとつの境地としての愛すべき傑作をお楽しみください。


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