【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

夢想崩れ。(イケナイアルバイト)

2008年08月29日 00時28分24秒 | イケナイアルバイト (仮題) 
T3年生イケナイアルバイト。 (5) (最初の1話目)




(夢は夢。)

「おとおさんッ!おとおさんッ!おとぉおさんぅ。」

「ぁ、どないしたんやぁ、何処に居(オ)ったんやぁ 」
「ぉとおぉさん、おとおぉおさんぅッ! 」
「ナンや、どないしたんや、お前ぇどこにおったんやぁ? 」

胸の奥の何処かで、何かが透明に為りかけていました。
意識もしないで求めた暗さは、自分を隠すまで待ってはくれませんでした。

図らずも陥ってしまった暗闇は、其の透きとおる黒色で自分を優しく包み込んで、
忘れることなどしたくもなく、ただ想い願うだけの透明なものを奪おうと。

だから忘れることも叶わなかった。



(墜ちたら)

最初。自分がどうなったのか分からなかった。
アイツがお百度参りの橋から身を投げそうだと。
ッデ、駆け寄って引き留めようとしたら、自分が墜ちてしまった。

墜ちるまでの僅かな時間、チョット心が時メイていた。

(ナンや、簡単なんや)

心で想っていました。



(水の中から)

重たい水の冷たさは、自分の躯全部で感じていました。
水の冷たさで知った、醒めていなかった酒の酔い、如何しようもなく心地好いものでした。
水の中で視えるはずのないものにナニかを呼び掛けると、
自分の動かす口からは泡(アブク)が連なって出ていました。
声にならない声でした。

息は苦しくはありませんでした。 だから此の侭、深間な処までと希望していました。



(悪いのはウチ)

ウチは、自分が落ちるとばっかし思うていました。

掴んでた欄干から手を放すと、ナンだか眼の前の時間が真っ黒でユックリしてた。
ウチは放した手で空中の何かを掴もうとしていたと思います。
モシあの時にその何かを掴んでいたら、キットこぉぅ思っていたと思います。

あぁ、ヤット終わるんだぁ。やっとぉ。

そしたら、スカートの腰の辺りを抱っこされるみたいにされ、引き戻されました。
頬ッペタを叩かれたのは後まで憶えていたけど、どんな風にマスタァが落ちて行ったのかは分かりません。
暗かったし、ウチはあの時、どう言えばいいのかぁ?

心が何処かに在るような感じヤッタんです。

ザブン!ッテ 水の音がしたから橋の下を覗いたら、暗くて何も見えませんでした。
なんがあったのかと辺りを見たら、マスタァが居りませんでした。
タブンですけどわたしは頬の痛みから、マスタァはウチを叩いてそのまま落ちたんやと思います。
近道したあそこの橋の上まで、マスタァの後からついていってたけど、
暗かったけどマスタァ、脚がふらついてたのは知ってた。

あの人ぉなんだかぁ、悪酔いしているみたいヤッタんです。

今でも時々ウチは、あのままウチが落ちていれば良かったんだと、想うことがあります。
そんなとき、マスタァが落ちて死ななくて良かったとも、想います。
人って、アンガイ簡単に死ねるんやわぁッテ思います。

簡単に死ねるんだと解ると、簡単すぎて怖いです。
だから死に方を恐ろしくて、あれ以来アンマシ考えへんようになりました。

ッテ。 アイツ随分後で、ワイに言いよった。



(酔夢から醒めた)

突然、顎を何か力強い物で摑まえられるように支えられると、グングン上へと持ち揚げられ、首が水面にと浮かび上がった。
すると、「おとぉさんッ!」 っと叫ぶアイツの声と、湧き立つ水飛沫の中、知らない男の怒鳴る声が。

「アホッ!サッサトアッチへいかんか、コイツぉもってゆくさかい 」

耳奥に詰まった水のせいで、何処か遠くの彼方から聴こえてきているようだった。
自分、無意識に顎に掛った男の掌を外そうとしていた。

「ァホッ!動くなっ、泳ぎ難くぅなるわ、ダボっ!」

怒鳴られたので、顎を引っ張られる力に任せジッとした。
冷たさを感じなくなった水が時々顔の上を覆いながら、何処かにと引っ張られていました。

「おとおさんッ!おとおさんッ! おとぉぅさんッ! 」
「アッチへ行けゆうとろおもん、いかんかッ!お前も死にたいんかボケッ! 」

水が顔の上を流れ過ぎ、その度に水の中で眼を開けると水越しに、銀色に星が瞬く夜空が観えていた。
星の輝きを眺めながら、何処かにと身を任せていたら気づいた。
未だに心に透明なものが残っていることに。

そしたらまた堕ちました。
今度は吐き気催すような、最悪な気分の暗闇の中にでした。



(知らない男かも)

「ァンタらなんやねん?ドナイするつもりヤッタんやッ!」

怒鳴り声な物言いぃを、激しく揺れる車の後部座席で横になって聞かされた。

「止めてくれ 」
「喋るなっ!ドアホッ!」
「ぉとおさん、気がついたん!」

「なんや、ドナイなっとんや 」

「心中崩れや、お前ら 」
「違います、ウチが落ちたさかい助けようとしてくれたんです 」
「・・・・・・・ホンナラそいでえぇがな、ッタクゥ!」
「止めてくれッ!」

突然、軋むような急ブレーキ音がし、躯が前に飛んで前席の背もたれに当たると、
狭い後部座席との間の隙間に、挟み込まれるような感じで嵌った。

「ダボがッ!ナニ偉そうにゆうとんや、死に損ないがッ!」
「ボケッ 此処で吐いてもえぇんかッ!」

此の時ワリと元気な声が出たので自分、驚きました。

「ナニぃ?」
「ゲロやッ 」


後部扉が勢いよく開き、両足首を掴まれ力強く引っ張られた。
ドライブシャフトの山で頭を打ち、ドアの敷居部分でも後頭部を打った。

背中から地面に落ちた。 直ぐに気合を込めた短い声が飛ぶと横っ腹を蹴られた。
アイツの、「ナニしますのっ!」 っと叫ぶような悲鳴言葉が聞こえた。
全身に鈍い激痛が奔り、息つきがし難くなった。

「おとおさんにナニするんよっ!」 抗議の声。
「煩いッ!黙らんかいッ!」
「ナンで蹴るんですかッ!」
「蹴ったほうがよぉけ戻すんや、ダボッ!」

男が忌々しげに言ったのは、ホンマやった。
飲んだ川の水と今夜飲んだ酒、此れでもかと喉首筋を引き攣るようにさせ、ギョウサンゲロった。
道に腹ばいで側溝に首を突っ込むようにし、呻き痙攣しながらゲロ吐いてたワイの背中。
アイツ優しさで撫でてました。自分もぉぅ泣きそうやった。

「お前ら、ホンマニ親子か?」

男の訊き方、如何にも仕方がないわいな、ッテな感じの声でした。

「おとぉさんですッ!」
「お前と、オトンっの歳が合わんやろも 」
「おとおさんなんやってッ!」

「ホンナラそいで、えぇがな 」

男がワイの傍にしゃがむと、言ってきた。

「アンタ見たことあるわ。」

返事の代わりに、男の靴先にゲロってやった。
男、慌てて後ろに飛び退ると、足を後ろに引き想いッくそ蹴ってこようとした。

「止めてっ!」 アイツが男の脚に抱きつくように縋った。

アイツの着ている服、ズブ濡れやった。
濡れて肌に密着しているのが、通りすがる車のヘッドライトに照らされていた。

「抱きつくな、ボケっ!濡れとって気色悪いわ 」
「蹴らんといてくれるん?」
「分かった、もぉぅ蹴らんがな離せや。 」


「済まんけどな、戻ってくれんか 」
「ナニゆうとんや、医者に行くんが先やろも」
「おとぉおさん、病院いこぉ 」
「えぇねん、悪いけど戻ってくれや 」
「気分はドナイやねん?」
「吐いたらダイブよおなったさかい、医者はもぅえぇねん 」

「ッチ!死に損ないが偉そぉに、えぇわ戻ったるがな 」


(疑惑)

「アンタ、ナンであないな所に居ったんや?」
「ナンヤ、助けてやったワイになにゆうんや。」

「痴漢か、アンタ?」

微妙にハンドルが振れ、車体が微かに揺れた。

「チカンなん?オッチャン。」
「ァホ!チャうわいっ!」
「ホナ、ナンであないな時間に独りで神社の森に居ったんや 」 

「ナンもないがな、お前ら助けてもろぉてナニゆうねん 」

「オッチャン、ナンであないなトコに居ったんぅ?」
「アンタ、覗き魔やろ。」

「お前らぁ 」




流れ任せな夜の為せる出来事は、時々です。

想わぬ悪さを仕出かします。




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