【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

T3年生イケナイアルバイト。

2008年08月18日 15時59分20秒 | イケナイアルバイト (仮題) 
  

(乙女の涙)


昔ぃ、カウンターだけの小さな喫茶店ぉやっていた頃、近所のトアル女学生が蒸し暑い夏場になると、
一杯のアイスコーヒーで、客が居ようが居まいが関係なく、ネバッテいました。ホトンド毎日。
朝から晩まで日中(ヒナカ)通してカウンターの一番奥の席に居座ってた。

(ホンマは季節に関係なく、店に入り浸っていた。)



「マスタァ お家でナンかぁ聴くのぉ?」

ット、カウンターの向こう側から、無教養な自分にはマッタク何が何やら訳のわからん参考書を、
広げた帳面(ノート)の上に放るように投げ出し訊いてきた。
言い方はいつもの上目づかいで、大人を嘗め切ったような為口調でした。

「ナッなんかッテなんがや 」
「歌ぁ 」
「聴かへんわ 」
「聞かへんわッテ、モット言い方があるのと違うぅ、お客さんやでぇウチぃ 」

ッデ当時、客に出す珈琲はサイフォンで淹れてましたので、点てるときに茹だったコーヒー豆を攪拌するのに使用する
手製の孟宗竹で作った竹ヘラで、カウンター上の真っ赤なプラスチィック筆箱を軽く叩きながら言ってやりました。

「どこぞの客がコナイなトコ(カウンター)で勉強するんやッ。 ァホか、ッチ!」 っと。
「なぁんもぉぅ邪魔してないさかいにぃえぇやん 」

「ッチ 」

「ココぉ涼しいぃやろぉ、はかどるんよぉ 」
「ナニがや?」
「お勉強ぉ 」
「ナン遍もゆうけどな、家でせんかい家で 」 (勉強をデッセ。)
「ヤッパシぃ家出した方がえぇんかなぁ、ウチィ。 」
「ェッ お前はドァホカっ!」
「アホッって今さらなんと違うんよ、判っとらんわぁオッチャンわぁ!」 

「ォッおオッおっちゃんッテかッ! ぉッ前ぇなぁ・・・・還さんかいッ!」

夕方近くで腹が空いてるやろと、サンドイッチ用の食パンにアイスクリームを挟んだヤツ出してやってた。
頭にキテその皿を引きあげてやろぅと、カウンターの上に手を伸ばすと逃げよった。
ナンも飲まへんかったら食べにくいだろぅから、お冷のコップに牛乳を注いでやったのを手に持ち、
スペシャル思い遣りアイスサンドイッチパン、口に銜え持って、座っていた椅子を後ろに倒し逃げた。

「アホッ!道具(勉強)もって帰らんか 」
「ソナイなもんいらんわッ 」 ット聴こえました。タブン。

小さな躯で入口の扉を押しながら、タブンネ。
口に銜えてましたからねもの言いはハッキリとは。

此の娘ッコ。 今で言う登校拒否症状だろうかぁ。
コイツが中学三年の時、通っている学校には内緒で時々ウットコの店でアルバイトしていました。
パット見ドッカ暗そうな感じだったが、知ってみるとアンガイ素直で明るかった。
バイト仕事の飲み込みも早く、忙しいときの手際がスコブル宜しかった。


コイツとの関わりは或る日の晩、客が引け店じまいする時刻に
空き巣や泥棒なんかよりもよっぽど巧く、コッソリと静かに店に入ってきました。

「スミマセンぅ、よろしいですかぁ 」
「エッ、もぅ看板消えてますやろ、終いですがな 」

人が店に入ってくる足音も、入口の扉が開くときの、錆びた蝶番が軋む歯の浮くような音もしなかった。
自分この時、下見て最後の洗い物していたので、突然暗いカウンターの向こう側から声がし驚いた。

此の時の娘の表情、緊張感丸出しだったのが、店内の照明を全部落とし、
洗い場真上のダウンライト光だけの薄暗さの中でも窺えた。

「ぁのぉぅマスターさんぅ、お願いがあるんですぅ 」
「・・・・・・サンは要らへんがな、なんやねん?」
「働かせてほしいんですけどぅ 」
「働かせろって、何処で?」
「此処ですぅ 」
「誰がや? 」
「ウチですぅ 」

「ウッウチって、ァッアンタかいな?」

夜更けに娘っコ独りでやで、此処ら辺りじゃぁアンマシ宜しからぬ噂しかせぇへんような、
ウラビレタ小さな茶店に入って着て、見知らぬ大人を捉まえてなぁ、働かせろッテかぁ?
コイツの温いドタマぁ(頭)、どないな料簡してるんやッ! ダボがッ!ぁ。

ット、第一印象はスコブル最悪の部類やったなぁ。ホンマニ。

「アンタ歳ぃナンぼやねん?ッテか学年は何年や?」
「中三ですぅ 」
「中ボウやったらバイト禁止やろが、ウットコは子供は雇わんし家のモンが心配してるがな イナンか(帰れ) 」
「誰も心配なんかせぇへんわッ!」

突然な感じの強い口調やったので、オッチャン、チョット驚きましたがな。

「ナニ言うてるんや帰れ、ダボがッ!」

自分、休めていた手を再び動かし、今度はワザと食器が割れそうな音たて洗い始めました。

「サッサト出てけッ!」

なぁんも言わんと、ジッと俯いたまま突っ立てましたわ。

まぁ、興味は湧いてきてました。
夜中に未成年の者が、然も子供みたいな娘ッコですからね。
自分の悪い癖で、何にでも頭を突っ込まないと気がすまない性格。
ホンマニわいもアホやった、要らんことする性分は騒ぎ事招きな禍の元ですなぁ。

「帰らんのやったら、ソナイなとこにボォ~っとしとらんと、ナンゾ注文せんかッ、ボケ!」
「ぇッ?」
「オッチャン忙しいさかいにな、チョット待っとれや、話だけ訊いたげるさかいな 」
「ぅ、ぅん 」
「ナンヤ返事の仕方も判らんのか 」
「ハッはい 」
「其処の公衆(電話)ツコウてえぇから家に連絡しぃ、此処に居るゆうて 」
「誰もおりしません 」
「ナンヤ誰も居らんってか?」

「おかぁさん、〇〇に働きにいってます 」

川向うの繁華街にある、水商売の店の屋号でした。

落としていた店内の灯りを再び点けた。 未成年者を暗い中で置きながら会話しているのを、
近所の口差がない者らに観られ、此れ以上宜しくない噂を立てられるのも厭だった。
表歩道据え置きの、店の屋号が記してる珈琲会社提供の電飾看板を店内に引き入れ、
他の客がまだ営業してると勘違いして来店しても、閉店だと断りを言い易いように扉の前に置いた。

ッデ、後片付けが終わってから飲もうと淹れてた珈琲が、冷めてしまっていたので、
店の燐寸でアルコールランプに火を点し、サイフォンの下のフラスコを温め直しだす。
其れから流し台下の扉を開き、サントリー白の徳用大瓶の首を掴み持ち上げた。
カウンターの外に出て、コイツの隣の席に止まり、目の前に荒い音を発て置いてやった。

「ナニ飲むんや?」
「要りません 」
「ナンも遠慮せんでえぇがな、なんや?」
「ホンマニ要りません 」
「ホンマか?ホンマニ要らんのやなッ!珈琲屋に働きたいゆうて嫌はないやろぉ 」
「キライッ!やないんです、お腹がぁ 」
「腹がどないしたんや? 躯が弱かったら働かれへんぞ 」
「スミマセンぅ、ナンか考えると痛くなるときがなるんですぅ 」
「ホォぅ、神経かぁ?」

「ハイッ!」
「ぉッ! えぇ返事やがな、オッチャン笑うで 」

ッデ、笑ってやったらこの仔ぉ釣られて、えぇ笑顔で笑ってました。

「胃の神経には牛乳がイッチャんや(タブンネ、知りませんけどタブン)、飲むか 」
「頂きますぅ 」
「できるやんかぁ 」(返事がね)
「はいッ 」

「ハイはもぉぅえぇ、イチイチ煩いネン。 ぅんでえぇで 」
「ハッぃ、ぁッ! ぅん 」

ニタリってなぁ、大人びた感じで笑ってた。

「其処のお冷のコップに、中(カウンター)の冷蔵庫の真ん中の扉や、自分で淹れてきんか 」
「ぅん 」

ホウロウびきのチョット大きめのマグカップに、温めた珈琲をマグ゜の半分位まで注ぎ、
サントリー白を縁から少し盛り上がるまで、溢れて零れないように用心し、ナミナミと注ぎたした。
盛り上がりに唇を近づけ勢いよく啜ると、ジュルっと音が奔った。



煙草の煙を顔に吹きつけてやったら、煙たがる素振りもしなかった。
吸いかけの煙草の箱を、目の前のカウンターに放り投げ言いました。

「一服しぃ、遠慮したらアカンで 」

店の燐寸を手渡そうとしたら、首を振った。

「ウチぃ吸ったことないですぅ 」
「ほぉか、そらぁえぇコッチャ 」
「ぅん 」
「返事はッ!」
「はいッ!」

もぉぅ訳わからんわッ!ってな顔してました。

「ナンで中ボウが学校に嘘ぉ吐いて、アルバイトせなならんのや?」
「ウチとこ貧しいんです 」

「マッママッ貧しいぃッテか? 今どき聞かん言い草やなぁ 」
「ハイ 」

 幾分か顔を伏せ、上目づかいやった。

「アンタの親御さんボク、よぉ知ってるんやけどなぁ 」
(ボクってね、一応ワイかて正しい大人の振りすることもあったんデッセ。ハイ)

「ぇっ!そぉなんですか、ナンで知ってますのぉ?」
「お父ぉさん、振り込んでくれへんのかぁ?」
「フリコンデぇ・・・・・?」
「生活費ぃやがな 」
「そんなことぉないけどぉ・・・・・」

今やったら個人情報の露洩で訴えられかねませんやろなぁ。
けど、訊いたのはマッタクの出鱈目の当てズッポウで、カマ掛けでした。
それまでに客として数回、母親と一緒にモーニング食べに店に顔を覗かせてましたからね、
その時の会話の内容で、近くの借家で母親と二人暮らしなのは把握してました。

「ホナなんでやねん?」
「ウチぃ、お金が欲しいんです 」
「金ぇッテかぁ?」
「ハイ 」
「ナンで中学生が銭いるんや?」
「ソナイなこと、絶対言はんとアキマセンのぅ・・・・・ 」
「絶対チャウけどな、銭ぃ要るんやぁったらぁ・・・・」

娘ッコ、チョット顎上向けて堪えてました。 涙目やった。
安造りのカウンターシャンデリア裸豆電球に照らされ、眼球が濡れ輝きしてました。

コン時、オッチャンは心が未だ優しかった頃やったからなぁ。
キッチリ騙されましたわぁ、乙女の涙に。 キッチリなぁ。

当時、全国的に珈琲専門店が大流行りしていました。
だけど、街中でケッコウ視かけていた珈琲専門店人気も、廃れかけてた。
メニューが珈琲だけでの勝負では、近々店の屋台が傾き閉店廃業に追い込まれる。

ホンナラ普通の喫茶メニューでも増やすかぁ、ッテ。

ッデ、出す商品(メニュー)が増えれば、それだけで今まで以上に手間が掛かる。
手間が掛かるのならば、今まで見たいに独りじゃぁマッタク賄えない。
じゃぁ従業員の一人も仕方がないけど増やさな、ァカンかぁ・・・

ット、マルデ悪循環の極み見たいな、お見本状況ヤッタ。


乙女の涙に負けたので、仕方がないから雇いましたがな。 ッチ、ッタクゥ!
学校に見つかれば、親戚の店の手伝いをやってると言い逃れる。
誰かに此処で働いてるとバレタ時点で、即バイトも中止してやめる。

「一つ約束してくれな 」
「ナンですかぁ?」
「学校はサボるな 」
「・・・・・・ぅん 」
「サボるんやったら無い話ぃやで 」
「ホナ、いつバイトできますのん?」
「晩飯ぃ食ってこい、それからやな 」
「中学生ぉ夜、労働させるんですかぁ!」

「ロぉッろぉどうッテなぁお前なぁ、ドアホッ!」

「ァホッってウチぃ 」
「今日みたいに夜中にウロウロしさらして補導されるよか、ヨッポドえぇがな、ボケッ!」
「ボケッッテぇ 」
「厭ならもぅえぇ、サッサトいねや(帰れ)」
「判りました、よろしくお願いしますぅ 」

「判ったんやったらえぇがな、明日から頼むさかいにな、エェカ?」
「ハイ 」
「未だ従業員チャウさかいにな、ぅん、でえぇがな 」

「ぅん 」

まぁ、明日になって夕方になってもコイツは来ないもんやと、踏んでました。
だけど予想は外れ、誰に教えてもらったのか、上手に薄化粧までしてやって着ましたがな。


「えぇか、ワシらの挨拶はな、おはようございますっや。 晩でも顔見たらおはようございますっや、判ったな 」

「ぅん、判った。マスターさん、おはようございますぅ 」
「サンは付けんでもえぇがな 」
「ぅん 」
「客にな、ぅんッテゆうな 」
「ぅん 」
「ワイにもや 」
「ハイ 」

「よろしぃ 」



  

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