いまジャーナリストとして

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消費税率引き上げの延期・・・アベノミクスの現状は?

2016年06月03日 13時48分28秒 | 日記

 安倍首相が、消費税率の引き上げを2年半延期すると決めました。
 民進党をはじめ、野党は一斉に反発しています。

 ただ、税金の引き上げに反対するというのは、なかなか、難しい。これま
で、税金の引き上げ、増税を前面に打ち出して選挙に勝った政権は、ひ
とつもありません。

 そもそも、消費税率の引き上げを決めたのは、民主党が政権をとってい
た時代の野田首相でした。
 当時、民主党と野党だった自民党が、財政再建が必要だということで合
意し、野田首相が消費税率の引き上げを決断したのです。

 ですから、いまの民進党にしてみれば、そのときの合意を実行しなけれ
ばならない、ということになります。
 しかし、民進党は、この国会で、日本経済が低迷しているとの立場から、
消費税率の引き上げを延期するよう求めました。

 これはまことに複雑な状況です。

 その民進党は、安倍首相が消費税率の引き上げを2年半延期したこと
を批判しているわけです。

 正直、これは、民進党が苦しい。
 次の参議院選挙で、民進党は、消費税率の引き上げを延期したことを
批判して選挙戦を戦うことになります。
 しかし、増税しないことを批判するというのは、まことに苦しく、票にはな
りません。
 それだけだと、民進党は、また、選挙に負けるでしょう。

 消費税率の引き上げの延期は、アベノミクスの失敗を意味するという点
を、民進党は、批判しています。
 それは、その通りだと思います。
 日本経済が、いまも好調であれば、消費税率の引き上げを延期する理
由はありません。
 日本経済の調子がおかしくなったから、消費税率を引き上げられない
のです。 
 その日本経済を、ともかくも、いっときの低迷から、ここまで引き上げた
のは、アベノミクスの功績でしょう。
 しかし、安倍政権が誕生したのが2012年12月で、アベノミクスもそれと
ともに始まりましたから、もう、3年半です。
 3年半のうちに、アベノミクスは、息切れしてきました。
 
 では、アベノミクスとは何だったのかというと、次の3点です。
 第一は、大胆な金融緩和です。
 第二は、財政政策です。
 第三が、規制緩和、構造改革です。

 このうち、第一の大胆な金融緩和は、日銀の黒田総裁が実行に移し、
みごとに成功しました。

 黒田総裁は、2013年の春、日銀総裁に就任するとすぐ、資金を市場
に大量に出し、お金が市場に豊富にあるという状態にしました。
 公定歩合がすでにゼロ%まで下がっていたので、だれもが、もうこれ以
上の金融緩和は出来ないと考えていたところへ、資金を大量に出すとい
う形で新たな金融緩和をしました。
 それが、市場にとっては、「サプライズ」だったのです。
 そのため、株式市場が、急上昇しました。
 さらにまた、金融緩和によって円相場が円安に進み、民主党政権の75
円というとんてもない円高から、120円という円安へ、一気に変わりまし
た。
 それによって、企業の利益が上がりました。

 そこまでは、アベノミクスは、明らかに成功していました。
 いや、そもそも、初めは、「アベノミクス」という言い方さえなかったので
す。
 しかし、黒田総裁の金融緩和が成功し、日本経済が息を吹き返すと、
そこで初めて、「アベノミクス」という言い方が出てきました。
 ですから、「アベノミクス」という言い方があること自体、アベノミクスが成
功したということを意味しています。

 ところが、第二の財政政策、第三の構造改革が、どうにもこうにも、機能
しません。
 第二の財政政策は、もともと、財政が大赤字なのですから、政策発動の
余地は少ないのです。
 本命は、むしろ、第三の構造改革です。

 ところが、この構造改革が、いまひとつ、中身がない。
 安倍政権は、まず、「女性の活躍できる社会」、そして次に、「1億総活
躍」ということをテーマに掲げ、それを第三の矢としています。

  しかし、いずれも、少々、あいまい過ぎます。
 女性の活躍できる社会とか、1億総活躍とか、それはまったくその通りな
のですが、しかし、それは、政策というより、スローガンというか、テーマみ
たいなものです。
  アベノミクスで一番欠けているのは、この第三の矢の具体策です。
 
 この3年半は、日銀が、大胆な金融政策によって、時間を稼いでくれた
ようなものです。
 
 安倍首相が、今回、増税を2年半、先延ばしにしたのは、いってみれば、
日銀が稼いでくれた時間を、もう少し伸ばしたい、ということです。

 民進党が、安倍首相を批判するなら、そこまで踏み込んで批判しないと、
批判がブーメランのように民進党に帰ってきて、自分で自分の首を絞め
ることになってしまいかねません。

 しかし、これは、実は、安倍首相とか、民進党とか、言っている場合では
なく、日本をどうするか、という、実はものすごく大きな問題です。
 せっかくの参議院選挙ですから、本当は、そこまで議論を深めてほしい
と思います。まあ、なかなか、無理でしょうが。






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