ローザンヌ国際バレエコンクールで高校2年生の菅井円加
さんが優勝しました。
素晴らしいですね。
日本経済が長く低迷する中、女子サッカーや、テニスの錦
織選手、そしてバレエの菅井さんと、スポーツや芸術、文化の
面では、日本人の活躍が目立ちます。本当にうれしいことです。
しかし、ひとつだけ、指摘しておきたいことがあります。
めでたいことなので、書くのをためらうのですが、ここは、書
かずばなるまいと思いました。
「与える」です。
菅井さんは、受賞後の記者会見で、今後の抱負を聞かれ、
「バレエで感動を与えたい」
「感動を与えるようなバレエをしたい」
と答えているのです。
このブログでたびたび指摘してきた「勇気を与える」というあ
の言い方です。
菅井さん本人は、決して、上から目線で言ったわけではない
と思います。
何気なくつかった言い回しだと思います。
でも、だからこそ、この「与える」という言い方が、こんなに広
がってしまったのかと、気になるのです。
菅井さんは「子供のころから、バレエをするのが楽しかった」
と話しています。
そうです。
それこそが、彼女がバレエをする原動力であり、ローザンヌ
で優勝をもたらした力です。
それが素直な気持ちなのです。
彼女は「バレエで人に感動を与えよう」と思ってバレエを始め
たのではないでしょう。
いまも、バレエを踊るとき、「バレエで人に感動を与えよう」と
思って踊っているわけではないでしょう。
豊かな才能、その才能を裏打ちする厳しい練習、そして、才
能と練習がもたらす菅井さんのバレエーー私たちは、それに
感動するのです。
踊りだす前に「人に感動を与えよう」と思って踊りだすバレリ
ーナって、いるでしょうか?
誤解されると困りますが、けなしているのではありません。
ローザンヌでの優勝は、快挙です。
心から、お祝します。
しかし、まだ高校生のバレリーナが、「感動を与えたい」という
のを聞くと、画竜点睛を欠くという感じが拭えないのです。
こんな言い方が定着しないように祈ります。