週末イリノイの借家で過ごした私は月曜 仕事を終え次第
山口さんが住んでおられた老人ホームに向かった。
写真の事をお願いしたものの
係りの方の返事が曖昧だった事から
わざわざ写真だけを別にしてくれそうにないような気がしたからだ。
”ゴミになる前にとりに行かなくては、、、”
そればかりで心は一杯だった。
5時を過ぎていたからだろう
彼女のオフィスは閉まっていた。
手ぶらで帰る気持ちになれなかった私は
山口さんがおられたフロアーに向かった。
ナースステーションにいた一人のナースに事情を話すと
山口さんの持ち物は今も彼がいた部屋にあると言い
私を連れ部屋に行きテーブルの上にあったその写真を手渡してくれた。
山口さんがこの老人ホームで暮らし始めたのは10年ほど前の事だったらしい
温厚な彼は沢山のナースやエイドさんたちに好かれていたとも聞き
穏やかな日々を過ごされた老人ホームでの10年間を感じ嬉しかった。
ナースにお礼を言って
額に入った山口さんの写真を手にし
出口に向かって歩いていこうとした時
突然 まるで鉛でも持ったかのような重さを手に感じハッとした。
”なんて事をしてしまったんだ。”
大きな責任を感じた私は山口さんの写真を持ち帰る事を後悔までした。
かと言って ゴミになって捨てられるのは嫌だ。
”私は亡くなった家族のお祈りも毎日しません。
そんな私ですが、それでもかまいませんか。”
写真を飾り
そんな頼りない言葉を山口さんにかけた。