人生は 五 七 五

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(by mother teresa)

中村文則 「銃」 をざっと読んだ、、うぅ かなり重い感想

2008-09-06 02:10:27 | Weblog
この小説って衝撃的

何か凄く見えるけど、何もない空間の中に放り込まれた感じがするんだな。真っ暗で何も見えないのに、でも周囲が良く見えている感じ。心理的ホラー、和風ホラーな感じ。

何でこの人の本読もうかなと思ったかなと言うと、ドストエフスキーを読んでいるし、影響受けているとどっかに書いてあったから何だよね。まあ、ドストエフスキーって、暗いようだけど、実はそんなに暗くなくて、凄く光が見えているんだよね。暗い部分もあるけど、明るい部分が常に見えていて、暗いのか明るいのかこんがらがる感じ。

でも、この人の文は暗い、明るさが見えてこない、ずっしり暗い。何か早死にするのではと言う感じなぐらい暗い。もしかして日本の個性なのかなとか思う。->此処でいきなり日本の個性なんて出てきても困るよな。

「罪と罰」のいきなり他殺だか自殺だかで銃が出てくる様な気がしたんだけど、この銃も、そんなところから影響を受けたのかもだけど、それだとあまりにも皮相的だな。

ドストエフスキーはキリスト教に支えられているから、常に明るいのかなと思うけど、日本人の場合、支えられているものが良く分からないから、暗いと暗いままになってしまうのかも。

まあ、そんなことはどうでも良いんだけど、この人の作品もね、最期のほうに明るくて読者をほっとさせるのね、それまで凄く危険で危ない、自分を表現しているんだけど、何かに吹っ切れて、光が見えたなとか思うのね。

でも実は、光なんか見えてなくて、実は勘違いなんだなと言う感じで、まだ暗闇に更に入っていく感じなのね。最後のどんでん返し、此処も上手い。

この手に汗を握る緊張感は、凄いなと思う。赤川次郎のhumorと真逆で、凄いと思う。赤川次郎は明るく、手に汗を握らせる所が凄くて、この人は暗いまま手に汗を握らせる所が凄い。モラトリアムのどろどろした部分を、表現しているのかなって思うのね。まあ、自分はそんなにどろどろせずに、もうちっと明るく、モラトリアムしていたけど。この人は、どうも暗くて陰鬱なモラトリアムだったみたいだな。

大江健三郎のデビュー作、死者の奢りって在るけど、凄く似ている。暗いところと、ストーリーがあるのかどうか良く分からないんだけど、その世界観が不気味なために先を読まざる終えなくさせる所なんか、そっくり。

村上の再来なんて、言う人もいるけど、僕は、大江の再来の方が良いかなって思う。村上春樹は全く違うよ。

中村文則にも大江健三郎にも感じられないんだけど、ドストエフスキーに有る思想が感じられないんだよね。彼から影響受けたから、さぞかし思想があるかなと少し期待していたんだけど、感じられない。ドストエフスキーが面白いのは、その中に思想があって、社会への批判とか、人間への問い、道徳観があったから、面白いんで、それがなかったら、ただの気違い文学でしかない。永遠の夫なんてどう見たって気違い文学で面白くなかった。

まあ、はてしない物語から影響受けた作家とか結構いるみたいだけど、Ende のファンタジー的な面白い所だけ影響を受けて、エンデが伝えようとしている、人生への問い、人生への答え、成長とは、みたいなものはあんまり影響受けていないような感じで、悲しいんだけど、名作の何処から影響受けたかって、かなりその人の精神が問われるよね。

日本にはキリストがいないから、思想を形成するのは微妙に難しいみたいだけど、夏目漱石とか、森鴎外が頑張ってそれでも何かしら作り出したのだから、そこからの延長で、何かしら明治から今に繋がる、思想、精神を表現できるのではないかと思うんだけどね。

それとも思想語りたかったらキリスト教になるしかないのか、、、

中村文則の文章は、どことなく西洋的な感じがするのは、やはりそちらの文学から影響を受けてどっぷり浸かっていたからなのかな、、、

西洋的と言えば、多和田葉子だな、まるでドイツ語読んでいるのかと思わせるような、文章だよ。自分が何語読んでいるのか分からなくなる、ってのはちと大袈裟だけどね。

まあでも、人のこととやかく言っている場合じゃないな。

ってな感じだな