この本さ、最初の30ページまでは確かに面白い、それでも確かにとか結構とか言う形容詞が付く面白さなんだけどね。でもかなりそれから単調になるんだよね。映画にしたらぐいぐい引き込まれるような話なんだろうけど、本としてだと、ちとたるい。
でも色々な事件や、人の気の引くようなことが書かれていて、半分ぐらいまでは読める。ゲイってなんだろうとか、不倫とか、多分現代の女性が知りたいと思うようなことが書かれている。もちろん、現代の男性も知りたいことかも知れないけど。登場人物も、現代の在り来たりの男性とか、ゲイとか、在り来たりでない男性とか、色々出てくる。
崇との恋なんて純愛もの読んでいる感じで、切なくなる。自由な性の中で上手く純愛をも表現するそのプロットの作成能力は凄いと思う。最もなんかプロット作らずに結構、連続的に書いている気もするけど。
何れにしても、そう言うところは良く考えられていて、読者の気を引くために作られているなって感心する。まるで、るり子が男性を常に引きつけておくように努力している感じだ。
まあこの小説だけに限らないんだけど、引きつける力は凄いんだけど、何かに欠けている。読んだ後、快い感覚と、酔いが自分を包んでくれるんだけど、何かが足りない。
本というのは、小説というのは楽しければ、面白ければ良いと思ったけど、最近は、感覚とか神経とか本能をただ単に楽しませてくれるだけでは、何か物足りないなと言う気がする。それはポルノ文学で十分。
その物足りない部分は何かというと、思想が足りない。いったい愛とは何なんだろうかとか、つまりどういうことなのかとか、戦争とはとか生きるとは、死とか、つまりこの世界を考えさせるような思想がない。セックスは沢山出てくるけど、愛とはなんなのか、そんなことは考えさせない。それじゃただのポルノと変わらんぞってな気さえする。
ちなみにポルノは、そう言う難しいことは書いてはいけないらしい。ポルノの書き方の本に書いてあった。
ドストエフスキーにはその思想がある、結局、宗教とはなんなのか、生きる事というのはなんなのか、そんなことが本の中に盛り込まれている。この部分がないと、本を読んでいても物足りなくなる。実存というのだろうか、僕を考えさせ、悩ませ、唸らせてくれる、そんな思想を本の中に盛り込まれていないと、つまらない。
最も考えたからってなんなのって言われると、それまでなんだけど、取りあえず考えるのが面白いのよ。
だから、この本の、全ての登場人物は、僕にとってはるり子と五十歩百歩でしかないと思えてしまう。
僕は小説の中に盛り込まなければ行けないと思うのは、その思想だ。多かれ少なかれ、この生きている世界に対する思想、これを盛り込まなければ行けないと思う。
まあ詰まる所、小説にも哲学がなきゃアカンね、ってことだな。
うーむデカいことを言ってしまった。
ってな感じだ