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マーケティング研究 他社事例 653 「菅総理大臣が推進する成長戦略」 ~痛みを伴う雇用改革~

2020-10-07 08:38:07 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 653 「菅総理大臣が推進する成長戦略」 ~痛みを伴う雇用改革~


「安倍晋三政権の(アベノミクス)の継承と進化」

自民党の総裁選では菅氏は訴えました。

いまさらかもしれませんが、アベノミクスの柱は、デフレ解消のための「大胆な金融政策」(第1の矢)、公共投資などで需要を作る「機動的な財政政策」(第2の矢)、そして規制緩和など経済改革を中心とした「民間投資を喚起する成長戦略」(第3の矢)の3本の矢と称するものです。

確かに実質GDP(国内総生産)は、第二次安倍政権発足時(2012年末)の499兆円から2019年には533兆円に増え、株価も跳ね上がりました。

しかし、多くは第1と第2の矢によるもので、経済の抜本改革による第3の矢は、法人税引き下げなどわずかなものにすぎませんでした。

その原因は突き詰めれば、痛みを伴う雇用改革を避けたためと指摘される声もあがっています。

経済の地力を上げる為に「デジタル化で生産性革新を図る。新産業を創出し競争力を失った古い産業・企業と交代させる」といった策が指摘されてきましたが、大きくは動きませんでした。

技術革新や産業・企業の交代で適応できない人を生み、失業増大を恐れたためと言えます。

結果、2020年4~6月期時点で過剰雇用は約480万人に達しているというデータがあります。

新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態ですが企業側から見れば、これが新事業への投資を阻む課題ともなっています。

新政権が中期的な成長を図るには、雇用改革は避けられないはずです。

そこで参考に出来そうなのがデンマークです。

デンマークの国民一人当たりのGDPは約6万1000ドル(2018年)で日本(約3万9000ドル)の約1.6倍に達します。

その要因の一つとされているのが、年間約30%程度が転職すると言われている雇用の流動化です。

「産業が競争力を失えば、より強い分野に人が移動する」

この結果、高い生産性を維持・向上させているのです。

それを実現している鍵は同じ産業や職種内で同じ仕事をする人の賃金水準を合わせる「同一労働同一賃金」と、スキルアップや転職のための徹底した教育制度にあります。

賃金は、産業別・職種別労働組合と経営側が2~3年に一度、労使協約で決めます。

職種ごとに仕事の内容や報酬を明確に定める「ジョブ型」と呼ばれる雇用形態となっていることも大きく、大企業も中小企業も同じ賃金水準になっていて、ポストに空きがあり、個人の能力が需要に合えば移動しやすいと言えます。

当然、中小企業は競争力を強くしないと採算が合いませんが「不採算事業は固執せずに早めに撤退する」ために、企業の交代が起こると言います。

これを支えるのが教育です。

業界ごとに労使が代表を出して国諮問の職業教育委員会などを組織し、今後必要になる人材とスキルを議論して、教育プログラムを毎年作成し、これを地域の職業訓練校で実施しています。

費用は企業と自治体が負担し、個人は勤務時間帯でも受講できるという何ともありがたいシステムとなっています。

仮に失業した場合でも2年間、前職の90%程度の(賃金水準が全体の中程度の場合)を給付する失業保険があります。

日本は企業内組合で、賃金は個人の潜在能力なども勘案する職能型になっている企業が多く、退職金制度は長期に働くほど有利になっています。

教育も企業内で通じるスキル育成に重点があります。

この仕組みは、かつては有効に機能しましたが、企業への帰属意識を高め、長期的に能力を引き上げる行動にもつながって生産性向上にも寄与しました。

成長の時代には、業績向上とともに賃金が上がり、それがまた労働意欲を押しあげました。

しかし、グローバル競争や、製造業の成熟化とIT(情報技術)・ネット産業の勃興など産業の興廃の中でこれが通じなくなってきたのでした。

もちろん、労働市場も不十分で労使慣行も異なる日本にデンマークの仕組みをそのまま取り入れることは出来ません。

しかし、今年4月に日本でも導入された同一労働同一賃金は、企業内の正規と非正規の間のみの不均衡是正にとどまるなど改革余地はあります。

教育の手厚さにも大きな差があります。

新政権が、なおざりにできる課題ではないはずだと思われます。


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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 
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