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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (160) 長尾家 73

2024年08月05日 09時26分07秒 | 甲越軍記
 山田源五郎は愛妻を主の黒田和泉守に奪われて怒り心頭となった。
そして妻の父である武藤平左衛門と伯父宮川隼人に恨みをはらさんと訴えた
武藤も宮川も源五郎の話を聞いて憤り、密かに相談していたが「この頃、景虎勢の中に高梨源三郎の旗が見える、幸い高梨の家臣の妻我孫兵衛、吉原大炊、伊藤七左衛門らは親戚である、彼らと通じて景虎の力を借りて、この恨みを晴らそうではないか」と決した
そして早速に親戚の三将に宛てて「急ぎ当城に攻め寄せれば、我らは裏切りの兵を挙げるので、これを高梨源三「郎様によしなに取次願いたい」と言い送った
そして「成功の暁には本知安堵を賜りたい」と伝え、誓詞血判書と共に武藤兵左衛門の娘二人を人質として差し出した。
これを聞き、高梨は大いに喜び、使者に引き出物を送り、本知安堵まちがいなく承るとの返答をして、時日を約してその日を待った。

かくして山田、武藤、宮川の内通を得て高梨勢千余騎は刻限に合わせて城際へ押し寄せた
城方も既に守りを固めて待ち受けているので、容易に柵、門を破ること叶わない、無二無三に攻め寄せるところを黒田の勇将富田左馬之助は総門に上がり、矢を速射すれば、寄せ手の兵はたちまち八、九人射られて倒れる
また城将、黒田和泉守は鉄砲組に命じて弾丸討たせれば、これまた寄せ手の多くを撃ち抜いて倒す
高梨の兵卒、これに恐れて引き下がるところ、高梨源三郎は「敵を前にして下がるとは見苦しきかな、命を惜しむなかかれかかれ」と叱咤する
これに励まされて、寄せ手の兵は再び城門めがけてかけ寄せた、すると黒田和泉守は城門をさっと開くと、山も崩れるほどの勢いで高梨勢の中にどっと攻めかかり、勇を振るって四方八方に暴れまわる

高梨の郎従、牧山玄蕃は大将と見て馬を走らせて和泉守に突きかかる、そこに和泉守の臣、駒木弾正が玄蕃に打ちかかり上段下段に刃を交わせば、弾正喚きながらの打ち太刀に玄蕃の槍は叩き落されて、弾正がために討死する
玄蕃の弟、牧山三平は兄の仇とばかりに激しく弾正に打ちかかり、激しい死闘の末、大太刀にて弾正の額を真っ向からたたき割った。

高梨勢は一気に勝敗を決しようと死人を乗り越えて攻め寄せれば、城方黒田和泉も大剛の大将であれば、これまた真正面から敵勢を引き受けて斬って回る
いずれが勝やら負けやら知る由もなく、只互いに打ちあい、斬り合い、首を取り、取られ四方八方すべてが決戦場と化している

色部修理勢は間道を回り、新山城の後より攻め寄せれば、搦め手の大将、森肥前守、矢種を惜しまず戦う
ややもすれば城方少なければ、城中の遊軍も搦め手に集まるところ、その後方で約束通り、山田、宮川、武藤らの手勢が一斉に内応して鬨を挙げて味方の陣へ切りかかった
城兵は思いがけぬ裏切りに驚いて右往左往となる
二の丸の守将、富田左馬之助は大いに怒り、さては山田らが反逆であるか、さればこそ大将には心得を申しておいたがなるべくしてなってしまったと悔やむ
もはやせんも無し、ただ裏切り者を討ち取るだけであると山田らの勢に向かった
大将黒田和泉は城外にて奮戦していたが、城内からの裏切りの声を聞き「裏切りは誰か」と問えば、山田らの仕業と聞き大いに怒り、「山田の小童めが女房を奪われたと内応するとは許せん」と喚いて、急ぎ城中へ戻るところ、高梨勢は「今ぞ付け入れ」と勇気倍増して後を追う
黒田は「うるさき奴腹め」と、また城外に戻って追い払い、また城へと戻る
すでに八度もこれを繰り返すうちに疲れもたまり、また城内の兵らは城外の敵、城内の内通者にすっかり戦意を消失してしまった。


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